毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

いつ雲に名前がついたか?~雲のでき方が解明される以前、人々は"オーラ"の泡が雲になると考えていた。

雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者 雲で気象を読むのは、じつは非常に近代的な考えかたである。雲は、不定形でつかみどころがなく、移り変わるものの代名詞だったのだ。 1802年ハワードは論文を発表 ルークハワードの論文、「雲の変異」の神髄は…

現実はバーチャルな世界だと気づく時~書評 「現実脱出論」 坂口 恭平氏

現実脱出論 (講談社現代新書) 坂口氏は「独立国家のつくりかた」の著者。 目に映っている現実は、決して唯一無二の世界じゃない! 現実とは 広場のようなものだ。その広場は、ある規則に従って余分な情報をカットし、大多数で遊べるようにデータが軽量化され…

「原理主義」は科学にも存在する~ダーウィニズムを廻る議論からわかる事

スルメを見てイカがわかるか! (角川oneテーマ21) 本書は養老氏と茂木氏の対談、2003年の発刊。 第3章「原理主義を越えて」でダーウインの進化論について養老氏が語る。「集団化した原理主義がもっとも恐ろしい」。原理主義とは宗教的事象で教条主義の意味で…

我々は相手を推測しなくてはいられない生き物~将棋1000年の歴史から

将棋の歴史 (平凡社新書) 将棋は5世紀のインドで「軍事上の図上演習を盤上に模したゲーム」チャトランガが起源。著者はチャトランガがインド~東南アジア、そして「海のシルクロード」を経て11世紀末までには日本に伝わっていたと考える。 現在の将棋のルー…

「世間」はとてつもなく広い、と考える事~習慣的思考から抜け出すために

「世間」とは何か (講談社現代新書) 古来から、日本人の生き方を支配してきた「世間」という枠組。兼好、西鶴、漱石らが描こうとしたその本質とは。西洋の「社会」と「個人」を追究してきた歴史家の視点から問い直す。1995年刊 世間とは 世間とは個人個人を…

地球上の多種多様な生物が教えてくれること~弱者と強者の戦略

弱者の戦略 (新潮選書) 2014年6月発刊 生物の世界の法則では、ナンバー1しか生きられない ゾウリムシとヒメゾウリムシという二種類のゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼う実験を行った。すると、水やエサが豊富にあるにもかかわらず、最終的に1種類だけが生…

地球上の多種多様な生物が教えてくれること~弱者と強者の戦略

弱者の戦略 (新潮選書) 2014年6月発刊 生物の世界の法則では、ナンバー1しか生きられない ゾウリムシとヒメゾウリムシという二種類のゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼う実験を行った。すると、水やエサが豊富にあるにもかかわらず、最終的に1種類だけが生…

日本のエネルギー使用量はピークアウトしている~原油と天然ガスで需要と供給のバランスに変化

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書 991) 日本の1次エネルギーの使用量は減少していた! 合計:石油換算百万トン、それ以外は% 石油 ガス 石炭 原子力 水力 再生エネルギ 合計 2010 40.2 17.0 24.7 13.2 3.9 1.0 501 2013 44.1…

資本主義は生命を誕生させる事はできない~均一化に向かって加速するだけ

超訳 種の起源 ~生物はどのように進化してきたのか (tanQブックス) 中高生からチャレンジできるよう「親しみやすい文体で読みやすく訳し直しかつ重要箇所のみセレクト、イラストも適宜追加 ダーウインはカワラバトは木の枝に巣を作らない。この共通点をもつ…

我々は環境を自ら変えられる~人間関係は偶然の積み重ね

弱いつながり 検索ワードを探す旅 2014年8月刊行 弱い絆 人生は偶然でできています。それを象徴するのが子供です。・・・そしてもし娘がいまの娘ではなく、まったく違った人間だったら、いまのぼくの生活はまったく違ったものになっていたことでしょう。人生…

脳以外の身体がサイボーグになる時~それは瞑想状態

デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書) 2014年スーパーコンピューターを駆使してチューリングテストをパスしたと報道 デジタルの定義 デジタルとは情報を扱う際の表現方法のひとつで、連続的な数量に基づき数値化されていないアナログに対して、離散的…

脳以外の身体がサイボーグになる時~それは瞑想状態

デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書) 2014年スーパーコンピューターを駆使してチューリングテストをパスしたと報道 デジタルの定義 デジタルとは情報を扱う際の表現方法のひとつで、連続的な数量に基づき数値化されていないアナログに対して、離散的…

資本主義は新しい物を生み出さない、それは海賊が担う?~この文脈でLine乗っ取りを考えると・・

海賊と資本主義 国家の周縁から絶えず世界を刷新してきたものたち 海賊集団が登場するのは、いつも激動の時代である。 彼らは領域を規格化しようとする国家権力に対し、真っ向から対抗する価値観を掲げ、資本主義の影響力がもっとも薄い辺鄙な場所、いわばグ…

知性とは「食うか食われるか」、我々は既に次の段階の知性を獲得している~古生物学者の洞察から学ぶ事

失われた化石記録―光合成の謎を解く シリーズ「生命の歴史」〈2〉 (講談社現代新書) J・ウィリアム・ショップ氏は古生物学教授。35億年前の地層からシアノバクテリアの化石を発見したと発表。本書は1998年刊。 35億年前のシアノバクテリアと考えられた写真。…

地球史という視点から観た、ゴーギャンと生命の定義~世界は外から見ないと分からない

我関わる、ゆえに我あり ―地球システム論と文明 (集英社新書) 松井氏は惑星(宇宙)物理学者。 地球進化の歴史は火の球地球からの「冷却」と物質圏の「分化」 地球は生まれた時、どろどろに溶けている状態でした。初め熱く、だんだん冷えていく、これがエネル…

フィルター・バブルという言葉を知っていますか?~私とあなたの検索結果が違う意味

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義 イーライ・パリサー: 1980年生まれ。アメリカ最大のリベラル系市民政治団体の1つ、「ムーブオン」(MoveOn.org)の元エグゼクティブ・ディレクターで、現在は理事会長。本書は2012年刊。 イーラ…

デパートはいつ生まれたか? そしてそれは何を産んだか?~消費による資本主義の拡大

デパートを発明した夫婦 (講談社現代新書)本書は1991年の発刊 h5> フランスのボン・マルシェ百貨店 世界最初の百貨店と言われている。現在の店舗は1869年完成、その後1887年パリのオペラ座をモデルに改装され現在に至る。1984年、LVMHグループが百貨店を買収…

現代の資本主義が探しているもの、それは新しい記号

「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書) 資本主義とは何か? 資本主義は、つねに新しいものをめぐって競争しつつ拡張し、発展してゆく経済だ。こうした競争や、拡張のプロセスの中で、経済は環境の変化や、「与件」の変化に対応してゆくの…

どうして磁石は北を指すか?~地球はだんだん冷えている

地球-ダイナミックな惑星 (サイエンス・パレット) 地球物理学的な過程や生物間の類まれな結びつきなくしては、私たちが知りうる現実の世界が偶然の結果として生み出されることはなかった。 地下生命のバイオマスは地球の20%!と書いている 地球の中心核 鉄で…

どうして欧州で二度の大戦が起きたか?~19世紀以降の軍事理論の変遷

軍事学入門 (ちくま文庫) 19世紀以降の歴史を参照しながら、「開戦法規」や「作戦計画」、「動員とは何か」、「勝敗の決まり方」など素朴な疑問に答える。 悲惨な第一次世界大戦 1914年に勃発した第一次世界対戦は、このマス・アーミー(大衆軍)同士が激突…

他人との差異を示す「記号」としての商品、そして消費社会~45年前のボードリヤールの古典から学ぶ

消費社会の神話と構造 普及版 原書は1970年の出版、消費社会についての古典。 家庭電化製品や衣料、車といった各種の商品は、その使用価値だけで用いられるのではなく、社会的権威や幸福感といった他人との差異を示す「記号」として現われる。ここに消費社会…

そのとき、愉しみとしての読書が生まれた~500年前のヴェネチィアが生み出したもの

そのとき、本が生まれた2013年4月の刊行 16世紀のヴェネツア 出版事業が成立するには3つの条件が揃っていなければならない。すなわち知識層の集中、豊富な資本、そして高い商業力である。・・・パドヴァ大学から近いことで知識資本が形成され、農業から転向…

身体論の持つ意味とは?~分子生物学が物理と生命の垣根を取り払った現代において

身体論 東洋的心身論と現代 (講談社学術文庫)“心”と“身体”―デカルト以来の近代西洋哲学が幾度となく究明を試みたその問題は、東洋思想の照明を受けつつ、今日最もヴィヴィッドな課題として我々の前にあらわれている。 近代ヨーロッパのアプローチ 近代ヨーロ…

近代文学としての小説の役割~柄谷行人氏のアプローチから

近代文学の終り―柄谷行人の現在 本書の第一部、近代文学の終わりより、 近代文学はネーションの基盤 感性的な娯楽のための読み物であった「小説」が、哲学や宗教とは異なるが、より認識的 であり真に道徳的であるような可能性が見出されるということでもあり…

超自然的行為者は心理的錯覚である、進化心理学のアプローチ ~ ヒトは「神」と呼ぶ

ヒトはなぜ神を信じるのか―信仰する本能 なぜ人生に運命を感じるのか、なぜ死んでも心は残ると思うのか、なぜ自然現象に意味を見出してしまうのか、進化心理学が解き明かす神と宗教の起源。 本書は「神」を進化心理学のアプローチで「心理的錯覚」と捉える。…

スーパーームーンの晩に改めてみたい、「かぐや」の画像~月から観た「地球の出」

世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス) じつは世界ではいま、アメリカ、中国、ロシアなどを中心に、月の探査・開発をめぐって激しい競争が水面下で始まっています。30~40年後には、月面基地が完成するともみられているのです。 表紙は「かぐや」による…

プラモデルを最後に作ったのはいつですか?~プラモデルの歴史はざっくり50年

日本プラモデル興亡史―子供たちの昭和史 (文春文庫) 著者の故井田博氏は模型店を経営1941年日本初のプラモデル専門誌『モデルアート』を創刊した。 1958年日本初のプラモデルが発売 マルサンは戦後まもなく設立、ブリキ玩具を主に米国に輸出していた。1958年…

人間に攻撃性のあるウィルス、それは世界は強者の論理だけではない事の証明~ウィルスとの共生

破壊する創造者―ウイルスがヒトを進化させた ミクロの微粒子が現代ダーウィニズムを書き換える。生命観を一変させる衝撃の書。 動物とウィルスの相利共生と攻撃的共生 ヘルペスウィルスの中にも、サルの種を越えて感染すると毒性が強くなるものがあるようで…

コンピュータとの競争、勝利の方程式があった!~コンピュータを味方にするという事

機械との競争 「これからがデジタル革命の後半戦。飛躍的に能力を拡大していくコンピュータに人間はますます仕事を奪われる」 産業革命が証明する、機械との競争 産業革命の初期までは立派に雇用されていた者の職が、20世紀初めにはほぼ消滅するという事態が…

我々の意識はあくまで「写像」にすぎない、それでは「本体」は何か?~脳神経科学のアプローチより

脳は空より広いか―「私」という現象を考える 著者のエーデルマン博士は1972年「免疫抗体の化学的構造に関する研究」でノーベル賞を受賞。 「私」が感じるこの「感じ」。「私」と「感じ」はいかにして脳から生まれるのか?世界中の科学者、哲学者が苦悩する難…