毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

エントロピー最大をビジュアルで観た事がありますか?~書評「データの見えざる手」

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 日立製作所中央研究所で2006年に開発されたウエアラブルセンサ「ビジネス顕微鏡」による人間行動の研究が、いま、人間・組織・社会の理解を根本から変えようとしている。2014年9月刊…

我々は「好きな事に没頭する自由」を持っている、しかし覚悟が必要~1941年発刊「自由からの逃走」より

自由からの逃走 新版 ドイツ生まれの社会心理学者エーリッヒ・フロムによって1941年に発表された。フロムはヒトラーの全体主義に世界が震撼するその最中に、この作品を世に送り出した。 自己表現する事、それが世界につながる事 自由獲得の400年 中世末期以…

世の中に隠れた真実は無いか?そしてそれは変えられないか?~ピーター・ティール氏「ゼロ・トゥ・ワン」―君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか ピーター・ティールは米国の起業家「僕たちが新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる。」2014年9月刊 資本主義と競争は対極 資本主義は資本の蓄積を前提に成り立つのに、完全競争下ではすべての収益が消…

どうして我々は活断層の側に「あえて」住んでいるか?~それにはメリットがあるから、

日本人はどんな大地震を経験してきたのか (平凡社新書) 2014年11月に発生した長野県北部地震は神城断層のずれによる内陸型地震だった。改めて地震と日本の社会の関係を考えてみた。 寒川氏は地震考古学を研究、「地震といかに付き合っていくか。これは、日本…

リバタリアニズム主義と「商い」の共通点~「自由はどこまで可能か」、法哲学の立場から

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書) ロン・ポール氏の本からリバタリアニズムという主義を知り、本書を手に取る。 森村氏は法哲学の研究家、本書は2001年刊。 リバタリアニズム(libertarianism)とは リバタリアニズムは、個人的…

奈良の大仏はどうして高さ16メートル?~書評「大仏はなぜこれほど巨大なのか?」武澤秀一氏

大仏はなぜこれほど巨大なのか (平凡社新書) 大仏からインドのストゥーパ、ローマ神殿まで、世界の宗教建築はさまざまに存在するが、その不思議をシンプルに突き詰めてゆけば洋の東西を問わず発見できる「真実」がある。 武澤氏は建築家、2014年刊 世界最大…

米国が中央銀行の無かった時代の方が長かった~中央銀行制度は資本主義に不可欠か?

ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ ロン・ポール :テキサス州選出連邦下院議員(共和党所属)。リバータリアニズム政治思想の旗手。2012年の大統領選挙では共和党予備選に出馬、指名獲得には至らなかったものの、インターネット上を中心にその主張が多くの…

6600年前の大絶滅、何が生死を分けたか?~遺伝子が悪いのか、運が悪いのか?

大絶滅―遺伝子が悪いのか運が悪いのか? 生命誕生から35億年。進化した500億種の生物のうち現在生息するのは約4000万種。99.9%の生物種が絶滅。進化史において生死を決定したのは必然か偶然か。 ラウプ氏は三葉虫が2億4500万年前に大量絶滅した事を研究し、本…

街路樹No.1はイチョウ、2億年前に誕生し、50万年前には絶滅寸前だった~書評「イチョウ 奇跡の2億年史」

イチョウ 奇跡の2億年史: 生き残った最古の樹木の物語 この愛すべき樹木がたどったあまりに数奇な運命!2億年近く生き延びたあとに絶滅寸前になったイチョウは、人間の手で東アジアから息を吹き返した。 イチョウは2億年前に誕生し、1億5千万年前にピークを…

太陽は数百年単位の停滞期か?、結果は5年後に判る~宮原氏の「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか」(書評)

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来(DOJIN選書) 2014年以降おこる事~黒点の数は減るサイクルへ 2014年を過ぎると、黒点数は数年をかけてゆっくり減っていくと考えられます。問題は、どれくらいの時間をか…

目は口ほどに物を言う、レンブラントの絵から分かる事~1966年の空間認識論「かくれた次元」

かくれた次元 ホール氏は米国の文化人類学者。原書は1966年の刊行。 動物の縄張りなどの研究などから対人間の空間認識につなげていく。 ルネッサンスは線型遠近法 ルネッサンスの画家は、遠くの対象の視覚的構成を調べるのに見る人一定においたが、レンブラ…

「自分だけは嬉しい」という何かをやっているか?~クリエーター夏目漱石の処女作「我輩ハ猫デアル」に見る覚悟

書物の近代―メディアの文学史 (ちくま学芸文庫) 紅野紙は近代文学・メディア論の専攻、1999年文庫化 書物の近代 読書の基底にあるのは、言葉の音と形を、舌・目・耳・手でモノとして感じとめながら、同時にそれに呼応して想像の世界においてもう一つの身体が…

人間の心はどうやって生まれたか?~心は情動が記憶されたもの、身体心理学のアプローチより

動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書) 春木氏は身体心理学が専攻、2011年刊。 心は身体の動きから生まれた 脳という中枢の存在は、末梢である四肢の活動の経験の集積であって、末梢である身体なしに存在し得ない。大雑把な言い方になるが…

アマゾンは「一冊売れたらそれをランキング一位にする」、という簡単なアルゴリズム~部分の変動が全体構造を把握可能とするという実例

Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造 (DOJIN選書) 服部氏は確率論、数理物理学の研究家。2011年刊。 チャート:y軸の最小目盛りは順位1位、最大は順位80万位を現す。 ある本が売れたらランキングを1位にする 根幹は単純も単純…

我々は過去に囚われ未来を想像できない存在である~不確実性下の意志決定論で確率的に証明済み

確率的発想法~数学を日常に活かす 小島氏は数理経済学の専攻、不確実性の存在下での意志決定論、1994年刊 エルスバーグのパラドックス(1961年) 数理経済学者のダニエル・エルスバーグは、1961年に発表した論文で、次のような実験結果を報告しました。まず…

人の体には使っていない骨がある~ヒトは今も進化中という事

「退化」の進化学―ヒトにのこる進化の足跡 (ブルーバックス) 大塚氏は解剖学の研究家、「退化器官でたどるヒト4億年の歴史」 退化とは 退化はもともとdegenerationやreductionの訳で退行、形成不全、縮小という意味である。ところが進化の逆が退化と誤解され…

川のある所に山ができる、という非日常~書評「川はどうしてできるのか」藤岡 換太郎氏

川はどうしてできるのか (ブルーバックス) 藤岡氏は地球科学の研究家、「 時空を超えた、壮大な地形のミステリーツアーをぜひ体験してください。」 ヒマヤラ山脈を乗り越える川 ヒマラヤ山脈を乗り越える4つの皮は、山脈ができる前から存在していました。ヒ…

「水」は存在しない只の虚構に過ぎない~40年前の名著「ことばと文化」に学ぶネーミングの重要性

ことばと文化 (岩波新書) 鈴木氏は言語社会学が専門、「 文化が違えばことばも異なり、その用法にも微妙な差がある。」本書初版は1973年!、私の手元には2013年第73版がある。間違いなく名著である。 H2Oを示す言葉 化学式ではH2Oで示すことのできる物質は、…

世の中は誰にとっても偶発的なもの、現代的ダーウィニズムの視点から~書評 「理不尽な進化」 吉川浩満 氏

理不尽な進化 :遺伝子と運のあいだ 「絶滅」という視点から生命の歴史を眺めながら、進化論という史上最強の思想が私たちに呼び覚ます「魅惑と混乱」の秘密を明らかにしていきます。2014年10月刊 進化論には3つのパターンしかない リチャードドーキンズは、…

世界は今も文化的に孤立しているのかもしれない~1998年刊「翻訳と日本の近代」から考える事

翻訳と日本の近代 (岩波新書) 日本の近代化にあたって,社会と文化に大きな影響を与えた〈翻訳〉。何を,どのように訳したのか。また,それを可能とした条件は何であり,その功罪とは何か?1998年刊。 LinguaFranca「フランク王国の言葉」を意味するイタリア…

感覚とは電気信号の集まりに過ぎない~書評「感覚器の進化」解剖学者 岩堀修明 氏

図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ (ブルーバックス) 嗅覚から感覚器に興味を持ち本書を手に取る。岩堀氏は解剖学が専門、感覚器を生物進化、発生論の視点から説明する。 すべての感覚は活動電位の変動である。 どんな感覚器があるか? …

メディアミックスの現代的意味について~書評「メディアミックス化する日本」 大塚英司氏の近著

メディアミックス化する日本 (イースト新書) 大塚氏はまんが原作者、批評家 。「モラルなきWebは愚民政治装置である」 メディアミックス(media mix)とは、広告業界の用語で商品を広告・CMする際に異種のメディアを組み合わせることによって各メディアの弱…

「良く噛んで食べなさい!」を最新の脳科学で解釈する~書評「美味しさの脳科学」

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている 著者は神経生物学の研究者。2014 年4月刊 「美味しさの正体を、脳科学がとらえた」美味しさ(味わい)は、口ではなく、脳が創り出している。その決め手は、口中から鼻に抜けるにおいであり、「においのイメージ」…

遺伝子レベルで細胞老化のメカニズムを知る~自分で「自分の生命」をコントロールする為に

老化はなぜ進むのか―遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム (ブルーバックス) 近藤氏は細胞老化と解糖系代謝の研究者、ヒトは細胞から老化する―そのプロセスを最新の研究をまじえて解き明かす。 ミトコンドリア性悪説 ミトコンドリアは、恒常的に酸化ス…

どうしてやりたい事を我慢する必要があるのか?~書評「たいていのことは20時間で習得できる」

たいていのことは20時間で習得できる 著者のジョシュ・カウフマンは、ベストセラー『Personal MBA』(ビジネススクールに行かずに、MBAの知識を身に付ける方法を説いた)の著者。2014年9月発刊 やってみたい事はどんどん膨らんでいく やあ、僕はジョシュ・カウ…

黄金比がメジャーなのはネーミングの勝利?~書評「美しい顔」とはどんな顔か?

「美しい顔」とはどんな顔か: 自然物から人工物まで、美しい形を科学する (DOJIN選書) 著者は「芸術学部に所属する理学系教員として、アートと数学、サイエンスのコラボをめざす。」2013年9月発刊 黄金比とは 黄金比(golden ratio)の近似値は1:1.618、約5:…

我々はどうして、そしてどうやって砂糖を摂取しているか?~「フードトラップ、食品に仕掛けられた至福の罠 」より

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠 加工食品に巧妙に仕掛けられた「至福ポイント」の罠に落ちる消費者―。ピュリッツァー賞ジャーナリストが巨大食品企業の欺瞞と苦悩を丸裸にする。 コカコーラは味覚、嗅覚、触覚を刺激~加工食品とは如何に感覚を…

我々は本当に他人の心そのものを認識できるか?~動物たちの「心」を考える時

動物たちの心の世界 動物は本能だけで生きているわけではなく、さまざまな学習の能力を持っている。 2005年発刊。 動物に心はあるか? まず第一のグループは人間以外のどんな動物にも意識経験などないと考えている。もう一つのグループに属する読者には、こ…

我々は脳がすべてをコントロールしていると思っていないか?~書評「粘菌~偉大なる単細胞が人類を救う」

粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う (文春新書) 中垣氏は粘菌行動を物理的法則から分析しようとする「物理エソロジー」の研究家。 単細胞で脳も神経もなく、大きさも性別も、生物学上の分類さえ融通無碍な生物・粘菌。その粘菌が人間でも難しい迷路を解き、現…

情報産業の先駆者"宗教"、そして文明始まって以来のキラーコンテンツ"味覚"~50年前の情報文化論

情報の文明学 (中公文庫) 梅棹 忠夫(1920ー2010)は生態学者、民族学者、情報学者、未来学者 本書は1962年執筆、インターネットなど存在しない、わずかにコンピュータが登場した時代の情報文化論 情報産業の先駆者としての宗教 宗教教団とは、神を情報源とする…