毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

"環境にやさしい"に隠された本当の意味何か?~『現代思想としての環境問題、脳と遺伝子の共生』佐倉 統 氏(1992)

現代思想としての環境問題―脳と遺伝子の共生 (中公新書) 佐倉氏は進化生物学の研究家、環境問題とは情報の肥大化した文化によって人間が危機に立っていることを意味するとして、コンピュータに希望を見る。(1992) 環境問題とは何か? 環境問題複合体における…

奴隷制とカースト制を比較して見えてくるもの、社会制度は不合理なもの~『面白くて眠れなくなる社会学』橋爪 大三郎氏(2014)

面白くて眠れなくなる社会学 橋爪氏は社会学の研究者、なぜ社会はこんなふうに成立しているのか?戦争、憲法、貨幣、家屋、結婚、正義、宗教、資本主義、そして幸福とは?(2014) 社会学というアプローチ 社会学は社会の一部を切り取るかわりに、社会をまるごと…

出版とは典型的な資本主義活動であった~『知識の社会史ー知と情報はいかにして商品化したか』P・バーグ(2004)

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか バーグ氏は文化史の研究家、知はいかにして社会的制度となり、資本主義世界に取り入れられたか。(2004年) 印刷出版、そして資本が知識の商品化を加速 本の出版それ自体商売であり、実業家たちの関心を惹きつ…

もしあなたが中世のヴェネチア商人だったら何をしますか?~『港の文化史的意味』会田 雄次 氏(1974)

論集・日本文化〈2〉日本文化と世界 (1972年) (講談社現代新書) 会田雄次氏の「港の文化史的意味」の章より、海洋商人と農民意識の比較を行っている。(1974) ヴェネチア商人 中世、とくに13、4、5世紀のヴェネチアは、富強を誇る大商業帝国になっていた。な…

新しいアウトプットはインプットの量を増やす。16世紀科学革命の教えてくれる事~『印刷革命』ELアイゼンステイン(1987)

印刷革命 アイゼンステインは印刷の歴史を研究、活字文化の起原を探求し、20世紀のメディア革命の理解にも深い示唆を与えるであろう。 (原著は1983年、翻訳は1987年) コペルニクスは1974年天文学者兼印刷者レギオモンタヌスの重要論文の出版予定目録を入手し…

日本の封建時代と近代の分岐点となった元禄時代はどういう政治変化があったのか?~『元禄時代』大石慎三郎(1970)

元禄時代 (1970年) (岩波新書) 大石慎三郎(1923-2004)は日本近世史の研究家。元禄は、日本の元号の一つ。貞享の後、宝永の前。1688年から1704年までの期間を指す。元禄時代とはどういう時代だったのか?(初版は1970年) 農民経済の変化 近世初頭に6割6分であ…

♪やぎさんのゆうびん♪に学ぶ、贈与と返礼が世界の基本~『寝ながら学べる構造主義』内田 樹 氏(2002)

寝ながら学べる構造主義 (文春新書) 内田氏はフランス現代思想の研究者、構造主義とは「私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。(2002) 世界で親族シス…

お金とは他者との適当な距離感を作ってくれるコミュニュケーション・メディアである~『ジンメル・つながりの哲学』菅野 仁 氏(2003)

ジンメル・つながりの哲学 (NHKブックス) 菅野氏は社会学の研究家、ドイツの思想家ゲオルク・ジンメルの「つながりの哲学」=「社会はあらかじめ存在するのではなく、人と人の日々のコミュニケーション=相互作用の集積から生まれるものである」を説明する。…

D-Wave Systemsという会社の量子コンピューターを知っていますか?~『量子コンピューターが本当にすごい』竹内 薫氏(2015)

量子コンピューターが本当にすごい (PHP新書) 量子力学の原理を使って複数の計算を同時に行い、スパコンを圧倒的に凌ぐ計算能力を持つ量子コンピューター。2011年、カナダのD—Wave systems社が突然、量子コンピューターの発売を発表。(2015) 量子コンピュー…

アートを見るとは他人との違いを知ること~『アート鑑賞、超入門』 藤田 令伊 氏(2015)

アート鑑賞、超入門! 7つの視点 (集英社新書) 藤田氏はアートライター、本書は、アートを「見る」ことに焦点を当て、7つのポイントから芸術作品へのアプローチを説き明かす。(2015) 左手の窓のガラスは割れている フェルメールの「牛乳を注ぐ女」を素材にし…

自分の手の中にあるものから始める、見切り発車のすヽめ~『進みながら強くなる-欲望道徳論』鹿島 茂(2015)

進みながら強くなる ――欲望道徳論 (集英社新書) 鹿島茂氏はフランス文学専攻、学問でもビジネスでもパフォーマンスを上げるために完全な準備が整うのを待つのではなく、むしろ未経験の分野への挑戦は見切り発車で始めるからこそ力がつくのだ。(2015) 見切り…

近代以前、東南アジアは胡椒、香辛料、絹・綿、染料を産む"豊饒の海"だった~『文明の海洋史観』川勝 平太 氏(1997)

文明の海洋史観 (中公叢書) 川勝氏は日本経済史、昨日の続き。(1997) 近代はアジアの海から誕生した。より正確にいえば、海洋アジアからのインパクトに対するレスポンスとして、日本とヨーロッパに新しい文明が出現した。農業社会から工業社会への移行という…

ダーウィンはマルクスへ手紙を書いていた~『文明の海洋史観』川勝平太氏 (1997)

文明の海洋史観 (中公叢書) 川勝氏は日本経済史が専門、農業社会から工業社会への移行という「陸地史観」の常識に挑戦し、海洋アジアを近代の発生源とする「海洋史観」を提唱。(1997) 1873年10月にダーウィンからマルクスに宛てた書簡(草稿か投函されなかっ…

どうして我々は客観的に見る事がでいかないか?~『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤 亜紗 氏(2015)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) 伊藤氏は美学と現代アートが専門、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか――? 目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことその…

巨大な夢は一人では達成できない、だからこそ達成がやさしい~『巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ』ラリー・ペイジ他(2015)

巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ 本書には、世界を変えた起業家、投資家、教育者、俳優、映画監督たちが登場。イェール、MITなど一流大学の卒業生へ熱く語りかけた、一世一代の肉声スピーチを完全収録。 1996年、23歳の時の夢 私が…

江戸時代の人は「江戸時代」という言葉を使ったか?~『文明探偵の冒険~今は時代の節目なのか』神里 達博 氏(2015)

文明探偵の冒険 今は時代の節目なのか (講談社現代新書) 科学の限界から歴史の本質まで。この時代が特別な「時代の節目」なのか、あるいはどういう意味で「時代の節目」なのか?(2015) 科学は既に地球を覆い尽くし我々は科学から逃れる事ができず、所与の…

江戸時代の人は「江戸時代」という言葉を使ったか?~『文明探偵の冒険~今は時代の節目なのか』神里 達博 氏(2015)

文明探偵の冒険 今は時代の節目なのか (講談社現代新書) 科学の限界から歴史の本質まで。この時代が特別な「時代の節目」なのか、あるいはどういう意味で「時代の節目」なのか?(2015) 科学は既に地球を覆い尽くし我々は科学から逃れる事ができず、所与の…

創作活動は孤独なもの、だからこそ創作者は場を共有する~『歌仙の愉しみ』大岡信/ 岡野弘彦/丸山才一(2008)

歌仙の愉しみ (岩波新書) 大岡信/ 岡野弘彦/丸山才一 当代随一の詩人、歌人、小説家が揃って、一巻三十六句の調べを織りなす。古きよき歌ことばから現代語まで、とっさの受けは縦横無尽。(2008) 丸山才一氏の「わたしたちの歌仙」より。 歌仙の愉しみ 連句は…

創作活動は孤独なもの、だからこそ創作者は場を共有する~『歌仙の愉しみ』大岡信/ 岡野弘彦/丸山才一(2008)

歌仙の愉しみ (岩波新書) 大岡信/ 岡野弘彦/丸山才一 当代随一の詩人、歌人、小説家が揃って、一巻三十六句の調べを織りなす。古きよき歌ことばから現代語まで、とっさの受けは縦横無尽。(2008) 丸山才一氏の「わたしたちの歌仙」より。 歌仙の愉しみ 連句は…

アインシュタインの相対性理論は主客逆転させる思考実験によって生まれた~『水平思考の世界~電算機時代の創造的思考法』エドワード・デノボ(1969)

水平思考の世界―電算機時代の創造的思考法 (1969年) エドワード・デボノ氏は情報処理の心理学の研究家、確実性の高い垂直思考ではなく 確実性の低い水平思考をどうやって行うかについて語る。(1969年) 単純だが見慣れない図形をどうやって誰もが知っている見…

人類が最初に栽培した植物は何だったか?~『栽培植物と農耕の起源』中尾 佐助 (1966)

栽培植物と農耕の起源 (岩波新書 青版 G-103) 中尾佐助(1916-1993)は遺伝子育種学の研究家、野生時代のものとは全く違った存在となってしまった今日のムギやイネは、私たちの祖先の手で何千年もかかって改良に改良を重ねられてきた。(1966) バナナという果物…

それでも我々は常識を打破して非常識に変える力を持っている~『物質から生命へ―自然発生説論争』ヘンリー・ハリス氏(2003年)

物質から生命へ―自然発生説論争 ヘンリー・ハリス氏はサイエンスライター、「生命は物質からひとりでに生じてくる」という説は、アリストテレス以来、多くの科学者、哲学者、歴史家を魅了してきた。(2003年) 自然発生説 自然発生説というのは、適切な条件下…

模倣とイノベーションは対立する概念と思い込んでいないか?~『コピーキャット、模倣者こそがイノベーションを起こす』オーディット・シェンカー 氏(2013)

コピーキャット―模倣者こそがイノベーションを起こす シェンカー氏は国際経営の研究者。ビジネスにおいて、模倣はイノベーションと同様に重要である。模倣はイノベーションよりも早く安く商品ができるうえ、低リスクで収益性が高い。本書で模倣とイノベーシ…

物理学はいつ誰が始めたのか?~『物理学とは何だろうか?』朝永 振一郎(1979)

物理学とは何だろうか〈上〉 (岩波新書) 朝永 振一郎(1906年 - 1979年)は、日本の物理学者。超多時間論を元にくりこみ理論の手法を発明、量子電磁力学の発展に寄与した功績によって、ノーベル物理学賞を受賞した。(Wiki) 現代文明を築きあげた基礎科学の…

スマートフォンを発明したのは誰なのか?~『パラダイムでたどる科学の歴史』中山 茂氏

パラダイムでたどる科学の歴史 (BERET SCIENCE) 中山氏は科学史家、「パラダイム」とは、アリストテレスやニュートン、アインシュタインなどがそれぞれの時代に創り上げたような、「一定の期間、科学上の問い方と答え方のお手本を与えるような古典的な業績」…

どうやったら自分と大きな目標を信じる事ができるか?~『生くる』執行 草船 氏(2010)

生くる 執行氏は「実業家、著述家、歌人」、本書帯より物質文明に惑わされ、生きにくい時代に切ない涙を流す現代人へ「生の完全燃焼」を激烈に問う。 (2010 年) 「信じること」という章で原爆開発を比喩にして説明している。 マンハッタン計画 第二次世界大…

どうやったら自分と大きな目標を信じる事ができるか?~『生くる』執行 草船 氏(2010)

生くる 執行氏は「実業家、著述家、歌人」、本書帯より物質文明に惑わされ、生きにくい時代に切ない涙を流す現代人へ「生の完全燃焼」を激烈に問う。 (2010 年) 「信じること」という章で原爆開発を比喩にして説明している。 マンハッタン計画 第二次世界大…

洗剤アタックと極限微生物の共通項、それは非常識という事~『極限微生物と技術革新』堀越 弘毅 氏(2012)

極限微生物と技術革新 堀越氏は1968年に好アルカリ性細菌を発見し、極限環境微生物研究の突破口を開いた。(2012年) 好アルカリ性菌から極限微生物へ 思いもよらぬ発見が、目の前にあった。半世紀以上前、著者によって好アルカリ性微生物が発見された。それは…

日高昆布が教えてくれる事、森と海の生態系は実は一体であった~『森が消えれば海も死ぬー陸と海を結ぶ生態学』松永勝彦 氏(2010)

森が消えれば海も死ぬ―陸と海を結ぶ生態学 第2版 (ブルーバックス) 松永氏は森林と水産の関係を専門とする、昔から、魚介類を増やすには水辺の森林を守ることが大切とされ、こうした森は「魚つき林」と呼ばれた。(2010年) 海水中の鉄は粒子状であり細胞には…

人間にとって可視光線とは何か?~『動物はなぜ動物となったか』日高 敏隆 (1976)

動物はなぜ動物になったか (1976年) (玉川選書) 日高敏隆(1930-2009)は動物行動学者の草分け、本書は1976年の一般向け科学エッセイ。 オンデマンド版 動物はなぜ動物になったか - 玉川大学出版部 動物が目を持った時、光が生まれた 一つの重要な変化が起こっ…