毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

D-Wave Systemsという会社の量子コンピューターを知っていますか?~『量子コンピューターが本当にすごい』竹内 薫氏(2015)

量子コンピューターが本当にすごい (PHP新書)

量子力学の原理を使って複数の計算を同時に行い、スパコンを圧倒的に凌ぐ計算能力を持つ量子コンピューター。2011年、カナダのD—Wave systems社が突然、量子コンピューターの発売を発表。(2015)

 

 
量子コンピューターのコンセプトを提唱したのは物理学者ファインマン

 

 

量子の世界をシミュレートするのなら、量子の理屈で動くコンピューターが必要!というわけだ。さすがはファインマン。ちなみに、量子力学の難しい問題とは、計算量が指数的に増大する問題のことだ。ファインマンの興味は、量子力学的な物理現象のシミュレーションだった。・・・量子力学的な物理現象のシミュレーターに必要なのは計算力だ。後は、汎用性次第で、「めっちゃ凄い計算能力」を持ったコンピューターになるだろう。(237ページ)

 

量子状態は制御できる形で保持が難しい

 

 

基本的に、量子は、最低でも小型の分子以下、できれば電子や光子のように大きさが無いくらいの粒子であるほうが、量子の波動を使いやすい。さらに重要なファクターは、極低温が必要ということだ。そもそも大きな分子や、多くの原子のかたまりだと量子として扱いにくく、あるいは高温だと量子として扱えないのだ。(256ページ)

 

通常のコンピュータとの違い

 

 

今、僕らが使っているフォン・ノイマン型コンピューターは、基本的に、決定論的なシステムになっていて、ある入力に対して、何が出力されるかは決まっている。・・・完全に量子特有の重ね合わせを使って計算させたときは、確率的にしか答を得られないのだ。(そら、量子が確率的やもん、仕方ないわ)。そして、フォン・ノイマン型コンピューターが、基本的に総当たりで計算結果を出していたのに対し、量子コンピューターは、重ね合わせたすべての計算結果から、求める答え(と思われるもの)を一つだけ出すのだ。・・・量子コンピューターで計算するということは、量子ビットの列がどのように収束するかを観測する、いわば実験なのだ。(258ページ)

 

既に発売された量子コンピューターD-Wave

 

D-Waveは階差機関(階差計算専用機)に当たるのだ。・・・ある意味、D-Waveは、最適化問題を計算することに特化した、究極のアナログコンピューターとも言えるのだ。(293ページ)

最適化問題を解く量子アニーリング方式は、特に、多くのエネルギー量子が最適化することを利用した、アナログコンピューターだから速いのだと言えるだろう。(295ページ)

f:id:kocho-3:20150524010259p:plainD-Wave Systems - Wikipedia

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D-Waveは量子アニーリング・コンピューター

f:id:kocho-3:20150524010125p:plain281ページ

 

金属加工を行った後熱を加えることで金属原子を落ち着かせエネルギー状態を安定化させる。焼きなまし、と言われている。量子のもつ確率的な振る舞いによるトンネル効果のコンセプトを使ったのが量子アニーリング法である。

これにより膨大な状態の組み合わせの中から全てを総当たりで計算するのではなく、エネルギー状態の安定化した所のみを見つけ出し、比較する事で最適解を見つける。D-Waveは量子の巾のもったもつあいまいさを利用していたのである。

D-Waveが汎用コンピューターでないものの、既に発売されていた事に驚く。量子物理学を論理的に解明する途上ではあるが、それを計算に応用し始めていた。

蛇足

 

指数関数的計算が計算できるとしたらどういう事が可能となるのか?

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