毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球科学

『モナリザ』の背景はなぜ荒涼とした風景なのか?~『ダ・ヴィンチ絵画の謎』斎藤 泰弘氏(2017)

カラー版 - ダ・ヴィンチ絵画の謎 (中公新書) 斎藤氏はイタリア文学、特にダ・ヴィンチの手稿の翻訳・研究で知られる。『モナリザ』の 左右の背景はなぜつながっていないのか、そもそもなぜこんなに荒涼とした風景なのか……。(2017) どう繋がっているか、分か…

Co2を悪者だと刷り込まれていませんか?~『地球はもう温暖化していない: 科学と政治の大転換へ』深井有氏(2015)

地球はもう温暖化していない: 科学と政治の大転換へ (平凡社新書) 深井氏は金属物理学の研究家、いまだ広く信奉されるCO2地球温暖化原因説。だが太陽は寒冷化へのシグナルを発している。(2015) 地球温暖化の従来ストーリー 化石燃料を消費することに伴って…

洪水伝説がもたらしたも、石炭と石油~『岩は嘘をつかない―地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史』D・R・モンゴメリー氏(2015)

岩は嘘をつかない―地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史 モンゴメリー氏は地形学の研究家、洪水伝説を軸に、科学と宗教の豊穣なる応酬から誕生した地質学(2015) 地質学とは? 地質学とは、地面より下(生物起源の土壌を除く)の地層・岩石を研究する、…

日本海は対馬海流が流れ込閉鎖海洋だった~『日本海 その深層で起こっていること』蒲生俊敬氏(2016)

日本海 その深層で起こっていること (ブルーバックス) 蒲生氏は化学海洋学の研究家、「母なる海」、日本海の知られざる姿を解き明かす。(2016) 日本海の特徴①外部の海とつながる海峡が浅く、地形的な閉鎖性が強いこと (日本海の)最大水深は約3800メート…

隕石が教えてくれること、太陽系で物質は循環している~『隕石でわかる宇宙惑星科学』松田准一氏(2015)

隕石でわかる宇宙惑星科学 (阪大リーブル051) 松田氏は宇宙地球科学の研究家、隕石はどこからやってきて、一体どんなものなのか?(2015) 隕石とは 太陽系ができたのは46億年前と考えられています。それは隕石の年代測定をすると、多くの隕石の年代が46億年…

これ以上できない、少なくとも私たちには~『時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち』中川毅氏(2015)

時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー) 中川氏は古気象学の研究家、 2013年、水月湖が過去5万年の時を測る「標準時計」として世界に認められた。その真の意味とは? 「物差し」となった、世にも稀な土の縞模様「年縞」とは? ひと…

雲の重さは数十トン、それでも雲は軽い~『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』古川武彦×大木勇人氏(2011)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス) 古川氏は気象学の研究家、大木氏はサイエンスライター、数十トンもある雲が落ちてこないのはなぜ?(2011) 雲の粒 雲はどれも、たくさんの小さな水滴や氷の集まりです。これらを…

光合成を最初に始めたのは何だったか?~『光合成とはなにか―生命システムを支える力』園池公毅氏(2008)

光合成とはなにか―生命システムを支える力 (ブルーバックス) 園池氏は光合成の環境応答の研究家、光のエネルギーで生きることを選んだ「植物という生き方」を考えてみよう。(2008) シアノバクテリアの誕生 おそらく今から27億年ぐらい昔、地球上に水を分解…

地球上に土壌はいつ現れたか?~『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』藤井一至氏(2015)

ヤマケイ新書 大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち 藤井氏は土壌学の研究家、生き物たちの営みを「土」から理解するための一冊。(2015) 土壌とは何か? 一般には、土壌とは岩石が風化し植物遺体が混ざったものと定義される。生き物を育み、同時に生き物…

地球収縮説を知っていますか?~『大陸と海洋の起源』ヴェーゲナー(1929、文庫は1981)

大陸と海洋の起源〈上〉―大陸移動説 (岩波文庫) ドイツの地球物理学者ヴェーゲナー(1880‐1930)が今世紀はじめ本書で提唱した大陸移動説は、それまでの地球観をくつがえす、まさに地球科学の1つの革命であった。(原著は1929、文庫は1981) 大陸移動説 大陸塊…

原油の源、シェール(頁岩)はどうやって堆積したか?~『地球の履歴書』大河内 直彦氏(2015)

地球の履歴書 (新潮選書) 大河内氏は地球物理の研究家、戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解してきた。(2015) 黒色頁岩 黒色頁岩の特徴は何といっても、大量の有機物が含まれていることである。写真の黒い地層には…

宇宙の視点から見ると、水は非常識な物質~『生命の星の条件を探る』阿部豊氏×阿部彩子氏(2015)

生命の星の条件を探る 阿部氏は地球物理学の研究家、宇宙の視点でみると水は常識を裏切る物質である。(2015) 宇宙に水はたくさんある H20という通り、水は水素=Hと酸素=Oからできています。太陽系で二番目に量が多いヘリウム=Hは化学反応しない物質です。…

生命は海ではなく、陸地で誕生していた?~『できたての地球――生命誕生の条件』廣瀬 敬氏(2015)

できたての地球――生命誕生の条件 (岩波科学ライブラリー) 廣瀬氏は地球起源・初期宇宙の進化の研究家、 「できたての地球」になぜ生命は生まれたのか。(2015) 生命の誕生時期 太陽系に始まりは46億年前、そして地球表面を覆っていた、ドロドロに融けたマグマ…

500年前ヨーロッパは小氷河期で今より気候が目まぐるしく変動していた~『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン(2001)

歴史を変えた気候大変動 (河出文庫) フェイガン氏は歴史と気候変動を研究、人類の歴史を揺り動かした五〇〇年前の気候大変動とは、いったい何だったのか?人口大移動や農業革命、産業革命と深く結びついた「小さな氷河期」を、民衆はどのように生き延びたのか…

日高昆布が教えてくれる事、森と海の生態系は実は一体であった~『森が消えれば海も死ぬー陸と海を結ぶ生態学』松永勝彦 氏(2010)

森が消えれば海も死ぬ―陸と海を結ぶ生態学 第2版 (ブルーバックス) 松永氏は森林と水産の関係を専門とする、昔から、魚介類を増やすには水辺の森林を守ることが大切とされ、こうした森は「魚つき林」と呼ばれた。(2010年) 海水中の鉄は粒子状であり細胞には…

地球に一番多い物質は何か知っていますか?~『鉄理論=地球と生命の奇跡』矢田 浩 氏(2005)

鉄理論=地球と生命の奇跡 矢田氏 は金属工学の研究家、元素としての鉄は、40億年前に生命が誕生したときから、生命になくてはらなないものだった。(2005年) もっとも安定的な鉄原子核 すべての原子核の中で、鉄の原子核がもっとも安全なためである。原子核…

もしも地球がメロンの大きさだったら?~『科学の世界のスケール感をつかむ』小谷 太郎(2013)

科学の世界のスケール感をつかむ: もしも地球がメロンの大きさだったら (BERET SCIENCE) 小谷氏はサイエンスライター、もしも地球がメロンの大きさだったら―月は、メロンから4メートル離れたウメ。(2013) もしも地球がメロンの大きさだったら? 地球を1億分…

地球の皮膚の厚さはどれぐらいか?~『土の文明史』モントゴメリー(2010)

土の文明史 モントゴメリーは地形学の研究家。文明が衰退する原因は気候変動か、戦争か、疫病か?古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす。(2010年) 土壌はわずか30㎝から1mの深さ …

我々は5億年の地球の酸素濃度を既に知っている、それは化石燃料の埋蔵量につながるデータ~『植物が出現し、気候を変えた』D・ビアリング氏(2015)

植物が出現し、気候を変えた ビアリング氏は植物学、古気候学の研究家。植物の進化と繁栄は、かつて想像されていた以上にダイナミックに、地球の景観や気候をつくりかえていた ! 2015年刊 植物は酸素を製造 植物や微生物が行っている酸素製造という活動は、…

今更ながら、津波は波の高さより波長に注意すべきである、~神永正博氏「食える数学」より

食える数学 (角川ソフィア文庫) 神永氏は数学と工学の研究家。 数学は、実学だ。その数学で、何ができるか?―2010年刊、東北大震災前の出版(2015年1月に文庫化予定) 波長の短い通常の波 普通の波の波長は、数メートル程度です。たとえば波長4メートル、高さ20…

正しい決断+マーケティング、月にだって行ける~「月をマーケティングする」アポロ計画と史上最大の広報作戦

月をマーケティングする 1961年、ガガーリンの乗ったボストーク1号に人類初の有人宇宙飛行で先を越されたアメリカは、ケネディ大統領の決断により、1960年代のうちに人類を月に送る「アポロ計画」を立てる。 そのための予算は250億ドル。この膨大な金額を国…

どうして我々は活断層の側に「あえて」住んでいるか?~それにはメリットがあるから、

日本人はどんな大地震を経験してきたのか (平凡社新書) 2014年11月に発生した長野県北部地震は神城断層のずれによる内陸型地震だった。改めて地震と日本の社会の関係を考えてみた。 寒川氏は地震考古学を研究、「地震といかに付き合っていくか。これは、日本…

太陽は数百年単位の停滞期か?、結果は5年後に判る~宮原氏の「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか」(書評)

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来(DOJIN選書) 2014年以降おこる事~黒点の数は減るサイクルへ 2014年を過ぎると、黒点数は数年をかけてゆっくり減っていくと考えられます。問題は、どれくらいの時間をか…

川のある所に山ができる、という非日常~書評「川はどうしてできるのか」藤岡 換太郎氏

川はどうしてできるのか (ブルーバックス) 藤岡氏は地球科学の研究家、「 時空を超えた、壮大な地形のミステリーツアーをぜひ体験してください。」 ヒマヤラ山脈を乗り越える川 ヒマラヤ山脈を乗り越える4つの皮は、山脈ができる前から存在していました。ヒ…

天気予報はコンピュータで数値予測を計算~いつ始まってどうやって予測しているか?

天気予報はこの日「ウソ」をつく (日経プレミアシリーズ) 安藤氏は気象予報士、科学記者。本書は2014年8月発刊 数値予想では垂直方向にも格子を設定 風が吹いたり、雲が発生したり、雨が振ったり。こうした現象は、すべて物理法則に沿って起きています。たと…

いつ雲に名前がついたか?~雲のでき方が解明される以前、人々は"オーラ"の泡が雲になると考えていた。

雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者 雲で気象を読むのは、じつは非常に近代的な考えかたである。雲は、不定形でつかみどころがなく、移り変わるものの代名詞だったのだ。 1802年ハワードは論文を発表 ルークハワードの論文、「雲の変異」の神髄は…

地球史という視点から観た、ゴーギャンと生命の定義~世界は外から見ないと分からない

我関わる、ゆえに我あり ―地球システム論と文明 (集英社新書) 松井氏は惑星(宇宙)物理学者。 地球進化の歴史は火の球地球からの「冷却」と物質圏の「分化」 地球は生まれた時、どろどろに溶けている状態でした。初め熱く、だんだん冷えていく、これがエネル…

どうして磁石は北を指すか?~地球はだんだん冷えている

地球-ダイナミックな惑星 (サイエンス・パレット) 地球物理学的な過程や生物間の類まれな結びつきなくしては、私たちが知りうる現実の世界が偶然の結果として生み出されることはなかった。 地下生命のバイオマスは地球の20%!と書いている 地球の中心核 鉄で…

宮澤賢治「グスコーブドリの伝記」が今に伝えるもの~地球温暖化の議論はいつ始まったか?

名作の中の地球環境史 時代の危機をいち早く察知して作品に取りこみ、それが社会に対する警告や警鐘になったことが少なからずある。 21ページ、グスコーブドリの伝記の執筆時期1932年頃の気候変動 グスコーブドリの伝記 グスコーブドリ(ブドリ)はイーハト…

人類はあえて火山のそばに住んできたより環境史という視点から

歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史 (世界史の鏡 環境) 石史は環境史の研究家。 最大クラスの噴火は最低8回 人類の生存まで危ぶまれた約73000年前のインドネシアのトバ噴火であろう。更に、世界的に飢饉や文明崩壊、政治社会の動揺を招いた535年のナゾの…