毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

原油の源、シェール(頁岩)はどうやって堆積したか?~『地球の履歴書』大河内 直彦氏(2015)

地球の履歴書 (新潮選書)

 大河内氏は地球物理の研究家、戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解してきた。(2015)

 

黒色頁岩

黒色頁岩の特徴は何といっても、大量の有機物が含まれていることである。写真の黒い地層には、もっとも多いところで40%ほどの有機物が含まれている。有機物とは、生き物が作り出す炭素や水素からなる物質のことである。私たち自身も、骨や歯を除けば有機物の塊に他ならない。つまり黒色頁岩には、生き物の遺骸がたっぷり含まれているのだ。

こういった有機物は、私たちを取り巻く環境のように、酸素ガスがたっぷりと含まれているところでは化学的にきわめて不安定だ。酸素と反応して、簡単に水と二酸化炭素に分解してしまう。この分解は、そこここに数限りなく潜むバクテリアによって触媒される。(94ページ)

1億年もの間、どうして有機物が分解されなかったか?

酸素ガスが豊富にある環境ではだめだ。炭酸ガスは、有機物を食べるバクテリアの多くが呼吸するのに必要とするものだ。有機物を食べつくすバクテリアの活動を抑え込むためには、酸素ガスをなくせばよい。つまり海が淀み、ヘドロが溜まるような無酸素の海だ。

地質記録によると海洋無酸素事変は、白亜紀の中でもある特定の時期に世界的な広がりをみせた。特に1億2000万年前と9400年前に起きた2回の海洋無酸素事変は、有機物の濃度、分布範囲の広さという点で、長い地球史の中でも最大級のものだ。・・・海底に分厚くたまった堆積物をどんどん掘り進んでいくとわかる。9400万年前と1億2000万年前という時間に達すると、必ずや有機物をたっぷり含んだ真っ黒な地層にぶち当たるのだ。(95ページ)

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太陽光は海面から約300m程度しか届かないため、深海では光合成は行われません。現在の海では、海水が大循環しているので、表層の酸素が数千mの深海底まで行き届いているのです。しかし地質時代においては、海洋の大部分が無酸素状態に陥ってしまう"イベント"が起きてきたことがわかっています日本地質学会 - 地質マンガ 無酸素じゅげむ

 

中東の原油の起源

 

 中東の大油田も、その多くは白亜紀の黒色頁岩だ。長期間にわたって地熱で温められてきた黒色頁岩中の有機物はじわじわと熟成し、石油として生まれ変わったのである。(98ページ)

 

 白亜紀の黒色頁岩にはどうして有機物が残っているのか?

石油の埋蔵量の多くは白亜期に形成されたことが知られている。有機物が堆積したものが黒色頁岩である。言われてみればどうして有機物は分解されなかったのか?本書によれば白亜紀の海は無酸素状態に陥った時があったからだだということになる。海洋の大部分で赤潮が発生した状態だと考えればよい。こうやって有機物はバクテリアによって分解されることなく堆積していった。

今から1億2千万年前の白亜紀は今より温暖で海面が高く、大陸はパンゲアから分裂を始めた時代だった。白亜紀の大陸と現在の大陸を比較し、そして我々が知った原油の生成のプロセスを掛け合わせると原油の分布と埋蔵量を類推できるはずだと、と考える。これらの情報は商業上あるいは軍事上の大きな秘密でもあるのだが、、。

蛇足

黒色頁岩をシェールと呼ぶ

 

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