毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は5億年の地球の酸素濃度を既に知っている、それは化石燃料の埋蔵量につながるデータ~『植物が出現し、気候を変えた』D・ビアリング氏(2015)

植物が出現し、気候を変えた

 ビアリング氏は植物学、古気候学の研究家。植物の進化と繁栄は、かつて想像されていた以上にダイナミックに、地球の景観や気候をつくりかえていた ! 2015年刊

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植物は酸素を製造

 

 

植物や微生物が行っている酸素製造という活動は、岩石や海底での堆積や炭素の埋没といったゆっくり進むプロセスにつながっている。その仕組みは、まず、植物が成長するときに光合成をして酸素を放出する。こうしてできた林が枯れるときは、(海中林でも陸上林でも)動物や菌類がその死骸を分解し、逆に酸素が消費される・・・しかしほんの少し-わずか1%にも満たないが-の植物体は分解を免れる。(61ページ)

 

どうして石炭紀に植物の分解が進まなかったか?

 

理由は何であれ、石炭紀の炭の量から考えれば、大量の炭素が一度埋まり、それによって酸素濃度が押し上げられたに違いない。

 

それではなぜ酸素濃度が上昇したか?

 

 

石炭紀の始めまえに、植物がリグリンという分子の合成能力を進化させた。リグリンは固い物質でこれがあるおかげで、植物は背が高くなっても体を支えることができる。しかし微生物にとって、この物質は新たな難関として立ちはだかった。この複雑な分子を消化するには、特殊な酵素が一揃い必要なのだ。(69ページ)

 

その証拠は堆積岩の生成、そして巨大昆虫

 

 

(20世紀に石油会社が調査した結果を分析する事で)およそ5億4千万年にわたる大気中の酸素量の変遷をシミュレートしてみた。曲線から分かるように、約3億年前の石炭中期に酸素量は大きく上昇し最高で約35%に達した。そして2億年前になると、約15%に落ちてしまった。驚くのは、この酸素の急増、そして激減が巨大昆虫を始めとする動物の進化、そして絶滅ときれいに符合していることである。(64ページ)

 

我々は今2億年の石炭紀の蓄積を使っている

 

 

現在、私達人類は石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで、有機物の「風化」を加速させている。自然の風化プロセスと同じように、私たちが化石燃料を燃やすと大気中の酸素あ消費される・・・今のような酸素消費量を続けたとしても、酸素不足の危機が起こるには7万年異常かかるだろう。一方、化石燃料はあと千年ほどしかもたないと言われている。(63ページ)

 

エネルギー問題を考える時

 

学術的には堆積岩の調査から石炭紀化石燃料は1千年単位で蓄積されていると考えられている。資源エネルギー庁の資料によれば、「石炭:約109年、石油:約53年、天然ガス:56年、出所:BP統計2013」である。全て加算して2百年である。当然ながら経済的あるいは技術的に採掘不可能なものがあるが、100年後の技術を視点にすると未だ未だ埋蔵量は増えていく可能性が高い。5億年に渡る酸素濃度を推定し検証する複数のデータがそれを示している。

蛇足

 植物の進化が地球の気候を変えた、という視点

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