毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

生命が誕生した時、大陸はあったのか?~『シーラカンスは語る 化石とDNAから探る生命の進化』大石 道夫氏 (2015)

シーラカンスは語る 化石とDNAから探る生命の進化

大石氏は分生物学者、デヴォン紀から3億年以上のあいだ、その姿をほとんど変えていない「生ける化石」シーラカンス。陸上生物の手足のように太いひれを持つこの魚は、生物の陸上進出の謎を解くヒントになるのではないか、と注目されてきた。(2015)

 

 

生物進化のゆりかご期-先カンブリア時代

先カンブリア時代は生物の進化においていくつかのエポックメーキングなことが起こった時代でもある。まとめると①アクリタークのような単細胞ながら核のような構造をもた生物が出現した、②多くの細胞が集合し、個体を形成し、機能が分化したスプリギーナのような多細胞生物が出現した。(45ページ)

分子時計によると現存する生物の最終的な祖先は、ほとんどすべて先カンブリア時代に行き着く、すなわち収斂される。最近の研究によると、動物、植物、菌類などの真核生物は約16億年前の先カンブリア時代に共通の祖先から分かれたことが確認されている。・・・少なくともカンブリア紀の生物爆発的増加の原因となる多くの種の原型はすでに先カンブリア時代に準備されていたとの考えを強く支持している。(102ページ)

先カンブリア時代の初期にわたってなんらかの理由で、ゲノムDNAのきわめて異常な増大も含めて、不安定化、流動化が起こり、当時激変した地球環境に応じて、それに適応できるようにゲノムDNAが変化した生物が一挙に生まれたのであろう。最近のゲノムDNAの解析の結果を見ると、哺乳類などと比べて魚類の種によるゲノムの大きさの幅はきわめて大きいことがわかってきたが、この事実はそれを反映しているとも言える。・・・特に先カンブリア時代には、生物の組織や器官を作り上げる発生過程に、遺伝情報の流れ自体を含めて、現在の生物ではすでに存在しなくなったまったく異質なパラダイムが存在していたとも考えられる。たとえば、現在は否定されているラマルクの用不用説と類似したメカニズムが働いていたとも考えられる。(162ページ)

(あくまで私見だが、鍵はRNAからDNAへの逆の情報の流れの普遍的な存在と、現在は遮断されている体細胞から生殖系への遺伝情報の浸透にあったのではないか.(168ページ注)

陸地の誕生は生命誕生より遅かった

 

先カンブリア時代には酸素濃度の上昇と、大陸が出現という環境の激変があった。生命が誕生した鴇、大陸は存在していなかった。陸に生物がいなかったのではなく、陸の誕生の方が後だった。つまりは生命は最初、海中にしか存在し得なかったのである。

生物のマクロ進化

 

魚がどうやって手足を持って陸上に進出したか?この様な飛躍的な進化をマクロ進化という。著者は、マクロ進化は既存の遺伝子の転用によって生じると説明する。そうならば生物が転用可能な遺伝子群を持っていることが前提となる。大石氏は分子生物学者の視点から、生物が他の生物の遺伝子を取り込んだ、と解釈する。先カンブリア紀ミトコンドリア葉緑体などバクテリアが細胞に取り組まれたように、さまざまな遺伝子が取り込まれていたことがマクロ進化の原動力になったのである。

城西大学大石化石ギャラリー

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学校法人城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリー|学校法人 城西大学

 

大石氏は分子生物学の専門家、「趣味として、20年近い在米の時代も含めて、今まで40年以上にわたって、化石の収集を続けてきた。その結果、十数点のシーラカンスの化石など中生代の魚類を中心とした化石が約400点以上に達したので最近このコレクションの一部を公開したところである」(164ページ)。

大石氏は40年来の趣味のコレクションを大学で公開している。分子生物学という専門領域と、化石収集という趣味の領域、二つの存在が豊かな人生の実りを実現した。私は正直羨ましい、と思った。

蛇足

 

生きた化石シーラカンスは1938年、南アフリカで発見された。

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