毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は、太陽エネルギーのどの程度消費しているのか?~『夢の新エネルギー「人工光合成」とは何か』井上晴夫氏(2016)

夢の新エネルギー「人工光合成」とは何か 世界をリードする日本の科学技術 (ブルーバックス)

太陽光と水だけでエネルギーを創り出し、二酸化炭素を再利用する人工光合成とは?(2016)

 

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人類のエネルギー使用量を1とすると

人類が現在使用しているエネルギー量を1としてその量を比較すると大変興味深いことが見えてくるのだ。化石資源に蓄えられているエネルギー量は200~300倍程度もあるが、・・・(植物による光合成が生む)バイオマスエネルギー量は、人類が使用しているエネルギー量の約10倍しかないのである。・・・植物の光合成産物であるバイオマスの利用はすぐ限界となってしまい、次世代エネルギーの本命にはなり得ない。・・・・地球上には、現在人売りが使用している総エネルギーの約1万倍の太陽光エネルギーが降り注いでいる。無尽蔵に近いエネルギー量と言えるだろう。(27ページ)

変換効率

緑色植物の光合成では、このエネルギー変換効率は意外に低く、1%に満たないことが多い。・・・太陽電池の場合は、実用化され販売されているものの中には、エネルギー変換効率が15%を超えているものもある。・・・太陽電池と分子触媒を組み合わせた場合は、エネルギー変換効率が20%を超える例もある。(29ページ)

人口光合成

  ・生物学からのアプローチ:天然の光合成を改良しようとする方法

  ・(光を吸収する)色素分子触媒、(光で直接水を分解する)金属 

    錯体触媒からのアプローチ

  ・半導体光触媒からのアプローチ:ホンダ―フジシマ効果

再生可能エネルギー因子(RFI:Renewable Energy Factor)

  RFI

  システムが出力するエネルギー/システムを作り運転する投入エネルギー

石油などを中心とする化石資源を燃焼してエネルギーを得ている現在のエネルギーシステムでは、全体の原油消費の中で実際にエネルギーとして消費されているのは約2/3で、残りの1/3はエネルギーを使える形(例えば電力)にするために使われている。つまりエネルギー2を作り出すために投入するエネルギーは1である。・・・これをREFの式にあてはねると、REF=2/1=2ということになる。(211ページ)

人口光合成とは何か?

太陽電池希少金属を使ったり、寿命が短かったり、製造コストが高かったり、でREFは1以下である。太陽電池は出力エネルギーより投入コストの方が多い。従って収支はマイナスである。

(一方自然の光合成は見かけ上のエネルギー変換効率は1%程度と低いながらREFが1以上のため、収支はプラスとなっている。)

人口光合成は生物学的アプローチ、あるいは新素材によってREFが1を超えるシステムを作ろうとするものである。現時点ではエネルギー変換効率は1%程度、当然REFも1以下であるが、これを、1を超えるレベルに引き上げる計画である。

エネルギー収支はバランス可能(と思った)

人口光合成の可能性や時期は未だ分からない。私は短期的なエネルギー不足は杞憂だと思う。例えば化石燃料のREFが2から3に上昇したら潜在埋蔵量は200~300年から350~450年に拡大する。AIの力を活用すれば化石燃料を効率的に採掘する方法は改善できる。更に言えば農業の効率性向上も未だ期待できるであろう。REFが1以上ということはそのままエネルギー収支改善に貢献する。

そうなれば人口光合成のハードルは更に高くなるが、地球のエネルギー効率は上昇する余地はまだまだある。人類の使用エネルギー1に対し、太陽光エネルギーは10,000である。改善余地はとてつもなく大きい。

(本書の主張とは真逆ながら)私には既存の技術の延長線だけでも、エネルギー不足は解決可能である、と改めて感じた。

蛇足

人類の使用エネルギー1は大きいか小さいか?

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