毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

政治・社会

”非自発的雇用”とは奴隷状態のこと~『 ケインズはこう言った 迷走日本を古典で斬る』高橋 伸彰氏(2012)

ケインズはこう言った 迷走日本を古典で斬る (NHK出版新書) 高橋氏は経済政策の研究者、ケインズなら、日本経済にどのような処方箋を書くか?(2012) 非自発的雇用 ・・・年間2000時間働いても年収200万円にも満たない時給1000円未満のワーキングプアや…

そもそも世界秩序は安定しないもの~『 リヴァイアサン』長尾龍一氏(1994)

リヴァイアサン (講談社学術文庫) 世界の部分秩序である国家を、「主権」という、唯一神の「全能」の類比概念によって性格づける国家論は、基本的に誤った思想である。(1994) 主権国家は誤りである 世界の部分秩序である国家を、『主権』という、唯一神の…

アメリカのリベラルは何を読み間違ったのか?~『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか? 』西森マリー氏(2017)

ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか? アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実 (星海社新書) トランプ台頭、及びトランプ支持者を分析する本は既に数多く出版されていますが、その全てがリベラルな視点から書かれたもので、多くはまるで科学者が下…

我々の社会は未だ直系家族的であった~『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層 』鹿島茂氏(2017)

エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層 (ベスト新書) 鹿島氏はフランス文学者、あらゆる問題は、トッドの家族システムという概念で説明ができる!(2017) トッドの家族人類学理論 ・・・結論から先にいうと、トッドの家族人類学理論の勘どころは、従来、…

無頼とはルーティーンに埋没しない人のこと~『 ヤクザと日本―近代の無頼』宮崎学氏(2008)

ヤクザと日本―近代の無頼 (ちくま新書) 宮崎氏はノンフィクション作家、ヤクザとは、法の支配がおよばない炭鉱・港湾などの最底辺社会に生きた者たちが、生きんがために集まり発展したのが近代ヤクザの始まりといえる。(2008) 1884年賭博犯処分規則が布告…

近代化はいつ始まったのか?~『近代化の理論 』富永健一氏(1996)

近代化の理論 (講談社学術文庫) 富永氏は社会学の研究家、多面的に「近代化」をとりあげ、その起源を小封建領主割拠の中世から国民国家に統合された西洋の歴史に求める。(1996) 近代化 西洋史上での近代化はルネサンスと宗教改革と地理上の発見に始まった…

なぜUFOが話題にならなくなったのか?~『UFOとポストモダン』木原善彦(2006)

UFOとポストモダン (平凡社新書) 木原氏は現代アメリカ文学の研究者、 初期の宇宙人は優れた科学を持つ金髪の白人だったが、灰色の肌をした吊り上がった目の邪悪なものへと姿を変え、ポストモダンの時代には節足動物や昆虫になってしまった。これはいったい…

我々が欲している「間主体的な欲望」とは?~『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 』東 浩紀氏(2011)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書) 東氏は批評家、2001年当時「オタクから見た日本社会」であったが、いまでは「オタク」という言葉をつける必要がなくなっている。(2001) 動物化とは 欲求とは、特定の対象をもち。それとの…

本当に欲しいものは何か?~『きみと地球を幸せにする方法』植島啓司氏

きみと地球を幸せにする方法 (知のトレッキング叢書) 植島氏は宗教人類学の研究家、これからの理想的な生き方、社会のあり方を想像する。(2016) 望ましい地球の姿・・・この地球がどうなればもっとも好ましいか考えてみよう。そのためにはまず自然と人工と…

100歳になったあなたが、今のあなたに言いたいこと~『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』L・ロンドシュタット×A・スコット

LIFE SHIFT(ライフ・シフト) L・ロンドシュタットは人材論・組織論の研究家、 みんなが足並みをそろえて教育、勤労、引退という3つのステージを生きた時代は終わった。(2016) 長寿が当たり前になる 平均して、私たちは親の世代より長く、祖父母の世代に比…

中国人留学生は日本の学歴を爆買い中!~『中国人エリートは日本をめざす - なぜ東大は中国人だらけなのか? 』中島 恵氏(2016)

中国人エリートは日本をめざす - なぜ東大は中国人だらけなのか? (中公新書ラクレ 565) 中島氏はジャーナリスト、「日本を一流大学を卒業して、日本の一流企業に就職する。そして将来は日本に永住したい」、 中国人エリートは、日本の何にあこがれているのか…

21世紀とは誰もが不安な時代~『 二十一世紀をどう生きるか―「混沌の歴史」のはじまり 』野田宣雄氏(2000)

二十一世紀をどう生きるか―「混沌の歴史」のはじまり (PHP新書) 野田氏はドイツ近代史の研究家、家族も職業も国家も拠り所にならない、不安と混乱の時代が到来する。(2000) 既に紹介した「20世紀をどう見るか」の続編 これまでの時代 近代の2、3世紀にわた…

どうしてジャングルの破壊は終わらないのか?『生物多様性〈喪失〉の真実――熱帯雨林破壊のポリティカル・エコロジー』JHヴァンダーミーア氏×Iペルフェクト氏(2016)

生物多様性〈喪失〉の真実――熱帯雨林破壊のポリティカル・エコロジー 熱帯林、バナナのモノカルチャーと先進国をつなぐ環境破壊の原因ネットワークを描く。(2010) 熱帯雨林と生物多様性の重要性は誰でも気づくが、、、 新製品を生む可能性、炭素吸収源とし…

GDPとは人間の感情の総和である~『人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長』吉川 洋氏(2016)

人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書) 吉川氏はマクロ経済学の研究家、人口減少が進み、働き手が減っていく日本。もはや衰退は不可避?そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」を突きつける。(2016) CPIで…

人類はいつまで成長できるか?~『3つの循環と文明論の科学』岸田一隆氏(2014)

3つの循環と文明論の科学―人類の未来を大切に思うあなたのためのリベラルアーツ 岸田氏の研究テーマは(古い順に)素粒子物理学・原子核物理学・科学コミュニケーション、人類は成長し続けられるのか? 本書のテーマ 人類は、「物質・エネルギー」「産業」「…

情報にとって国境は意味を持たない~『〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史』玉木俊明氏

〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史 (講談社現代新書) 玉木氏はヨーロッパ近代史の研究家、 17世紀オランダの活版印刷、19世紀イギリスの電信、20世紀アメリカの電話――、世界史上のヘゲモニー国家は、情報革命の果実を獲得することで、世界の中核…

情報にとって国境は意味を持たない~『〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史』玉木俊明氏

〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史 (講談社現代新書) 玉木氏はヨーロッパ近代史の研究家、 17世紀オランダの活版印刷、19世紀イギリスの電信、20世紀アメリカの電話――、世界史上のヘゲモニー国家は、情報革命の果実を獲得することで、世界の中核…

銀河鉄道999の描く夢とは何か?~『夢見られた近代』佐藤健志氏(2008)

夢見られた近代 佐藤氏は評論家、「欧米の夢に適応するための努力を強いられてきた過程」である「近代」、「物語」を通して問う、空虚なる日本の真因。(2008) 内容(「BOOK」データベースより) 私たちの生きた「近代」は、本当の近代だったのか。いま、日…

地方公共団体とは何か?~『 君は憲法第8章を読んだか』大前研一氏(2016)

君は憲法第8章を読んだか 第8章は「地方自治」を謳いながら、結局は中央政府がすべての権限を握り、中央の意向に従う者だけに目こぼしする歪な政治の論拠となっている。(2016) 地方公共団体とは? 日本という国をより良くするための憲法改正を目指すなら、…

誰がハイパーインフレの恐怖を煽ってきたか?~『日本を救ったリフレ派経済学』原田泰氏(2014)

日本を救ったリフレ派経済学 (日経プレミアシリーズ) 原田氏は”リフレ派”の論客の一人、「現実」を疑う人々が俗説を流し、国民の不安を煽り続ける。(2014) 金融緩和と銀行の利益の関係 日本銀行がインフレターゲット政策を採用し、消費者物価上昇率が2%ま…

宮型霊柩車はどうしてあの様な意匠なのか?~『新版 霊柩車の誕生』井上章一氏(1987)

新版 霊柩車の誕生 (朝日選書) 井上氏は文筆業、本書が1987年の処女作、霊柩車はいつ誕生したのか? 大正4年(1915年)霊柩車の登場 大正期にはいり、葬列が衰弱していく。葬儀屋は、なんとかこの傾向を押しとどめようとするが、時勢はいかんともしがたい状…

途上国と先進国、人間に根本的差はあるか?~『貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える』バナジ―氏×デュフロ氏(2012)

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える バナジー氏とデュフロ氏はインドの貧困撲滅の研究者、「貧乏な人たちに耳を傾け、その選択の論理を理解」した新・開発経済学入門。(2012) 貧困の罠 所得や財産を急速に殖やす手立てが、ほとんど投…

今も世界は高度成長を続け、貧困者は減少している~『大脱出――健康、お金、格差の起原』A・ディートン氏(2014)

大脱出――健康、お金、格差の起原 ディートン氏はノーベル経済学賞を受賞した、経済成長論の研究家。 成長と健康の関係を丹念に分析することで、格差の背後にあるメカニズムを解き明かす。(2014) 経済成長の基盤は何か? (経済学者で人口統計学者の)サイモ…

国際節税スキームと生活保護制度を比較する~『税金を払わない巨大企業』富岡幸雄氏(2014)

税金を払わない巨大企業 (文春新書) 富岡氏は国税勤務を経て、税制の研究者。 日本の法人税は本当に高いのか?ソフトバンク0.006%、ユニクロ6.92%巨大企業の驚くべき税負担の軽さ。(2014) 多国籍企業に対する税制の不備 ・巨額な受取配当収益を、二重課税…

獄中記はどうして興味をそそるのか?~『暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』 顔伯釣氏×安田峰俊氏(2016)

「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄 (文春新書) 顔伯釣氏は10万人を動かした中国最大の民主化勢力の元幹部、編訳の安田氏はルポライター、 逃亡2万キロの全記録(2016) 現代の中国 現代中国を襲う深刻な社会問題は、中進国のジレンマとい…

米軍の変化に注目せよ!そこにビジネスの未来が見えてくる~『教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質』加谷桂一氏(2016)

「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質 加谷氏は著述業、個人投資家、経済と戦争遂行能力は直結しており、強い経済を持つ国は、圧倒的に有利に戦争を遂行できる。(2016) 米軍とは? 世界最大の経済大国である米軍の軍事費は突出しており、年…

リベラリズムとは正義の味方、スーパーマンの思想、である~『 リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門』井上達夫氏

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門 井上氏は法哲学の研究家、真のリベラルは、今いかに考えるべきか。(2015) 橘氏が引用しており、本書を知る。 啓蒙 啓蒙主義というのは、理性の重視ですね。理性…

重要なこと、「相手の身になって考えてみよう」~『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』橘玲氏(2016)

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある 誤解と差別とダブルスタンダード!世界標準からかけ離れたニッポンの「リベラル」(2016) 「民主主義」をやめることから始めよう デモクラシー(democracy)は神政(テオクラシーtheocacy)や貴族政(アリストク…

世界を、自分の基準でしか見ていないのではないか?~『 ポスト西洋世界はどこに向かうのか: 「多様な近代」への大転換』Cカプチャン氏(2016)

ポスト西洋世界はどこに向かうのか: 「多様な近代」への大転換 カプチャン氏は米国民主党に影響力を持つ国際政治学の研究家、はじめて、「誰のものでもない世界」が到来している。(2016) ポスト西洋社会 こんにち、われわれが目撃しているのは、世界が西洋…

もはやグローバル化は単純な欧米化、ではない~『大収斂 - 膨張する中産階級が世界を変える』K・マブハニ氏(2015)

大収斂 - 膨張する中産階級が世界を変える マブバニ氏はシンガポールのインド系移民として生まれ、長らくシンガポールの外交官として活動。 先進国の経済格差が広がる一方で新興国の中産階級が爆発的に増大する!(原書は2012、2015) 193人の船長のいる地球号…