本当に欲しいものは何か?~『きみと地球を幸せにする方法』植島啓司氏
植島氏は宗教人類学の研究家、これからの理想的な生き方、社会のあり方を想像する。(2016)
望ましい地球の姿・・・この地球がどうなればもっとも好ましいか考えてみよう。そのためにはまず自然と人工との不毛な対立をなくさなければならない。(180ページ)
大都市は六本木ヒルズを大型化したようないくつかの高層化したビルに集約される。一つのビルには千代田区くらいの規模の住民が住み、そこでの生活はホテルのように快適なものとなる。食事、クリーニング、ベッドメイキング、清掃、フィットネスクラブなどはすべて共有空間でシェアされる。一方、プライベートな領域の保護も徹底しており、カフェ、バー、クラブなども充実している。(182ページ)
大都市と自然
(大都市の)窓から外を眺めると、見渡すかぎりの自然が広がっているのが見える。地上のほとんどの土地がいまやジャングル化していくことになる。土地が余ってくる。大都市に人々の生活が集約されるとともに、広大な自然が息を吹き返す。人類は地球上の1%以下の土地に住み、そこからフィッシング、ラフティング、ロッククライミング、ジャングルツアー、気球の旅などに出かけていく。・・・すなわち、理想の地球像は、人口集約的な都市と野生のジャングルとの対比から生まれることになる。(183ページ)
共感し合える未来
フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールも指摘しているように、「大量消費、マス、コミュニケーション、大量輸送と都市集中といった現象は、数十億人の他人たちに各人が共存する場面を割り当てるが、彼らは見つめ合うことなく隣り合い、交流することなしに交換し合い、向かい合うことなしに出会う」ことになる。どうしたらそうした殺伐とした未来を人々がつねに共感し合えるような未来に変えることができるのだろうか。(180ページ)
きみと地球を幸せにする方法
人間は産業革命以来天然資源を使って消費拡大してきた。この拡大のスパイラルがいつまでも続くことはなく、どうやったら人間と地球が共存できるか?植島氏は人類が1%の大都市に住むことになる、と考える。大都市を大都会、と言い換えるとそこには競争、孤独、など殺伐としたキーワードが連想される。数十億人が空間を共有しながら人間関係が存在しないのはあまりに不安定である。人類は過去仲間を作ることで生き延びてきた。本書の各章のタイトルは、贈与する人々、シェアする人々、共感する人々、歓待する人々、である。親密かつ安定した人間関係が重要であるのは言うまでもない。
植島氏の描く大都市でどのような生活を送りたいのか、考えてみたい。現在の生活と理想の生活の差は何なのか、どうして今実現できないのであろうか?この思考実験は本当に欲しいものを教えてくれる。
蛇足
未来の大都市ではベーシックインカムになっている
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