毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今も世界は高度成長を続け、貧困者は減少している~『大脱出――健康、お金、格差の起原』A・ディートン氏(2014)

大脱出――健康、お金、格差の起原

ディートン氏はノーベル経済学賞を受賞した、経済成長論の研究家。 成長と健康の関係を丹念に分析することで、格差の背後にあるメカニズムを解き明かす。(2014)

 

 

 経済成長の基盤は何か?

 

(経済学者で人口統計学者の)サイモンは繁栄の真の源は土地でもなければいつの日か枯渇するかもしれない天然資源でもなく、人材だと述べている。口が一つ増えるごとに未来の労働者が生まれ、長期的には人口の規模にかかわらず平均所得を創出するようになるだけでなく、創造力のある頭脳も生まれるのだ。この新しい頭脳のいくつかが生み出す新しいアイデアはその持ち主にとってだけでなく、人類全体にとって役立つだろう。・・・彼らがもたらす新しいアイデアや手法が、大脱出のツールである経済成長の究極の基盤という形の利益を生む。そしてこの利益は、容易にコストを上回る可能性がある。世界は1950年代と1960年代に2度健康改善から恩恵を受けたことになる(一度目は平均余命の延び、2度目は人口爆発にともなって爆発的に増えた世界的知識と創造力)。(262ページ)

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世界は成長している

それぞれの国を示す円の大きさが開発年の人口に比例するようになっている。・・・世界最大の二か国、中国とインドはこの半世紀の間、かなり急速な成長を遂げてきた。そしてどちらの国にも膨大な数の国民がいるため、世界の所得分配図の最底辺にいた20億人以上の人々の平均年収が現在平均値付近にまで引き上げられた。・・・図5は世界中の人々の生活水準が平均化していることを示すはずだ。・・・(図6がわかることは)中国とインドの急成長によって世界中の何億もの人々が(貧困から)大脱出を果たしただけでなく、世界は前よりも少し平等になった。(59ページ)

富裕国で格差が拡大する理由

新たな技術が新たな機会を提供したのはより高学歴でより独創性に富んだ人々に対してであって、極端な場合にはもっとも高学歴でもっとも独創性のある人々、その中でも特に幸運な人々にずば抜けて多くの富をもたらした。・・・グローバル化は、優秀な起業家にも優秀な芸能人と同様、活躍の場を広げ利益を拡大するチャンスを与えた。たしかに、今は世界中で多くの人々が自分の優れた才能を活かすことができる時代だ。(225ページ)富裕国で成長が低迷する理由

富の極端な集中は民主主義と成長を阻害し、成長を可能にする創造的破壊を抑え込んでしまうかもしれない。このような格差は、先に脱出した者が自分たちの通ってきた脱出経路を塞ぐ行為を奨励してしまう。・・・増殖する自己利益追求型の特殊利益集団のレントシーキングによって連帯していない大多数の人間が犠牲になり、富裕国が弱体化していくのだ。(348ページ)

大脱出

著者は「世界はより良くなっている――より豊かになり、より健康になり、平均寿命は延びている。」という。日本にいると停滞の20年で低成長が普通の姿だと思ってしまうが、世界は今も高度成長を続けている。そしてこの経済成長こそが人々を貧困から脱出させる原動力であるが、その本質は人的資源であると指摘する。要は人口が増えればその中から独創的な人が誕生し、そのメリットが人口増のコストを上回るからである。

それでは人口増加の止まった富裕国はどうか?我々は医療の発達により更に時間を確保、更に情報技術を活用することで革新的なアイデアを共有する術を持った。先進国でも人口資源を活用できる余地は沢山ある。富裕国がしてはならないこと、自らの利益のため革新への道を塞ぐことだけである。

蛇足

成長とは新しいアイデアによって生まれる。真実はいつも平凡

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