毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

株価と政権支持率の相関関係が示すもの~『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』金子 勝氏(2015)

資本主義の克服 「共有論」で社会を変える (集英社新書) 資本主義に、制度やルールの空白が生じ、「独占」が生まれている。(2015) 株価と内閣支持率の関係 株価が上昇している時は内閣支持率が高まり、株価が下落すると、内閣支持率が低下する。株価が落ち…

偶然何かを見出すとき、愉しい~『ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待』齎藤亜矢氏(2014)

ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待 (岩波科学ライブラリー) 齎藤氏は芸術認知科学の研究家、キーワードは「想像」と「創造」。旧石器時代の洞窟壁画を出発点に、脳の機能や言語の獲得など、進化と発達の視点から考察する。(2014) なぜ描くのか…

為替水準は金融政策が決めている、という当たり前のこと~『戦後経済史は嘘ばかり』高橋洋一氏(2016)

戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書) 高橋氏は財務省出身のマクロ経済政策の研究家、実は、高度成長の要因はほとんど為替だった!?(2016) 固定相場制 固定為替相場についての最大の誤解は、相場を決めれば自動的に相場が維持されると思っている人が多いことです…

風景画はいつ生まれたのか?~『エグゼクティブは美術館に集う (「脳力」を覚醒する美術鑑賞)』奥村高明氏(2015)

エグゼクティブは美術館に集う (「脳力」を覚醒する美術鑑賞) 奥村氏は美術教育の実践者、美術の知識や鑑賞の方法を知ることで、仕事や実生活を創造的にします。(2015) 風景画 風景画とは、目の前に広がる風景を描いた絵です。例えば、図2のピサロの描い…

我々は普遍的なものを目指せるし、理解できる~『ユダヤ人と近代美術』 圀府寺司氏(2016)

ユダヤ人と近代美術 (光文社新書) 圀府寺氏は西洋美術史の研究家。 あなたはいかなる像も造ってはならない(「出エジプト記」:4-5)――。 ユダヤ教では偶像崇拝が厳しく禁じられていた。 しかし、啓蒙主義思想が浸透しはじめた19世紀以降、ユダヤ人の画家や彫刻…

馬車をつないでも鉄道にはならない~『経済発展の理論』シュムペーター(1926)

経済発展の理論―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上〉 (岩波文庫) シュムペーター(1883-1950)はオーストリア出身の経済学者、資本主義経済過程を循環―発展の二段階的に把握し、革新・新結合という経済内部の自発的な発展力…

馬車をつないでも鉄道にはならない~『経済発展の理論』シュムペーター(1926)

経済発展の理論―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上〉 (岩波文庫) シュムペーター(1883-1950)はオーストリア出身の経済学者、資本主義経済過程を循環―発展の二段階的に把握し、革新・新結合という経済内部の自発的な発展力…

あなたは最近何に感動しましたか?~『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』千住 博氏(2014)

芸術とは何か 千住博が答える147の質問(祥伝社新書) 千住氏は画家、芸術とは何か、人間とは何か?(2014) 芸術とは何か? 人間をおたがいに知り、わかりあおうとする行為であり、人間の存在そのものです。そして、人々が必要とする提言を含み、共通項を探し…

宇宙はいずれダークエネルギーで一杯になる、その時何が起きるのか?~『輪廻する宇宙 ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来』横山順一氏(2015)

輪廻する宇宙 ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来 (ブルーバックス) 横山氏は宇宙構造進化論の研究家、 現代物理学は宇宙を生まれ変わらせることができるか?(2015) 宇宙の輪廻転生説 正の真空のエネルギーがあり、宇宙が再び指数関数的膨張の時代を迎える…

長期的に合理的で短期的に不合理なこと、それが”英断”~『大人の直観vs子どもの論理』辻本悟史氏(2015)

大人の直観vs子どもの論理 (岩波科学ライブラリー) 辻本氏は発達心理学の研究家、子どもの脳は想像以上に〈論理的〉で、大人の脳は意外なほど〈直観的〉。日常生活で、人生で、そして進化の過程で、それが「うまくやっていく」秘訣であることを、脳の機能と…

隕石が教えてくれること、太陽系で物質は循環している~『隕石でわかる宇宙惑星科学』松田准一氏(2015)

隕石でわかる宇宙惑星科学 (阪大リーブル051) 松田氏は宇宙地球科学の研究家、隕石はどこからやってきて、一体どんなものなのか?(2015) 隕石とは 太陽系ができたのは46億年前と考えられています。それは隕石の年代測定をすると、多くの隕石の年代が46億年…

ヒトは長い寿命を何の為に使うのか?~『人間にとって寿命とはなにか』本川達雄氏(2016)

人間にとって寿命とはなにか (角川新書) 本川氏は長年にわたりナマコを研究、ヒトは本来40歳が寿命であり、現代人は膨大なエネルギーにより生かされている「人工生命体」だ。(2016) 私とは何か 私というものは、ふつうに私だと見做しているようなものを核…

共同体が解体された時、社会はどうなるのか?~『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』E・トッド氏(2016)

シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書) トッド氏は歴史人口学者、2015年1月パリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で…

ハーバードMBAが教えてくれた、福島第二原発とリーダーシップ~『ハーバードでいちばん人気の国・日本』佐藤知恵

ハーバードでいちばん人気の国・日本 (PHP新書) 佐藤氏はビジネス作家、福島第二原発を救った「チーム増田」まで、日本人が想像できないほど、ハーバード大学をいま「日本」が席巻している! (2016) 福島第二原発 福島第二原発も一つ間違えれば、メルトダ…

改めて思う、不足とは配分の問題である~『牛肉資本主義―牛丼が食べられなくなる日』井上恭介氏(2015)

牛肉資本主義―牛丼が食べられなくなる日 井上氏はNHKの番組プロデューサー、リーマンショックの後、 息を潜めたかにみえた「マネー資本主義」。 このグローバルマネーが次のターゲットに選んだのは、「牛肉」だった。(2015) 穀物はだぶついている 2015年9…

これ以上できない、少なくとも私たちには~『時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち』中川毅氏(2015)

時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー) 中川氏は古気象学の研究家、 2013年、水月湖が過去5万年の時を測る「標準時計」として世界に認められた。その真の意味とは? 「物差し」となった、世にも稀な土の縞模様「年縞」とは? ひと…

モラベックのパラドックスという言葉を知っていますか?~『ザ・セカンド・マシン・エイジ』Eブルニョルフソン+Aマカフィー(2015)

ザ・セカンド・マシン・エイジ EブルニョルフソンとAマカフィーはデジタル化の経済的インパクトの研究者、 蒸気機関の発明によるファースト・マシン・エイジは18世紀後半に始まった。いま、コンピュータを中心としたセカンド・マシン・エイジに突入した。(2…

ネットビジネスとは、人々に上手にコンピューターを使わせるかを競っていた~『戦略がすべて』瀧本 哲史氏(2016)

戦略がすべて (新潮新書) 瀧本氏はイノベーション論の実践家、どの世界にも各々の「ルール」と成功の「方程式」が存在する。それでは資本主義社会の攻略法とは?(2016) ネットビジネスが儲かる一つの理由は、利益を上げることに徹していることにある。・・…

羽田空港で一番多いゴミが何か知っていますか?~『世界一清潔な空港の清掃人』新津春子 氏(2015)

世界一清潔な空港の清掃人 2013・2014年と、2年連続で「清潔な空港」世界一に選ばれた羽田空港。その栄光を陰で支えたのは、羽田ひとすじ20年、汚れを見つけるとなぜか笑顔になる一人の清掃員。…80種類以上の洗剤を駆使し、あらゆる困難な汚れ…

自分の頭上の、何もない、高くて広い空を見上げることはできる~『新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか』北野 武氏(2015)

新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか 「時代を作る人は、いつだって古い道徳を打ち壊してきた。誰かに押しつけられた道徳ではなく、自分なりの道徳で生きた方がよほど格好いい。 自分なりの道徳とはつまり、自分がどう生きるかという原則…

共同体が存在しない社会は存在しえるのか?~『宗教消滅 資本主義は宗教と心中する 』島田裕巳 氏(2016)

宗教消滅 資本主義は宗教と心中する (SB新書) 島田氏は宗教学者、日本の宗教が衰退している現象を読み解きながら、それを経済・資本主義とからめて宗教の未来を予測する。(2016) 宗教の存在しない社会は無かった 宗教の存在しない国や民族というものは、こ…

中央銀行とは何の為の組織なのか?~『ルワンダ中央銀行総裁日記』 服部正也(増補版2009)

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書) 服部正也は日本銀行出身、一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、…

人種奴隷制プランテーションが西洋近代を作った~『近代世界と奴隷制―大西洋システムの中で』池本幸三氏×布留川正博氏×下山晃氏(1995)

近代世界と奴隷制―大西洋システムの中で プランテーション労働に基づく南北アメリカの黒人奴隷制と大西洋奴隷貿易を、大西洋システムを背景に克明に分析し、近代奴隷制を資本主義世界との密接な関連の下に捉えた労作。(1995) 表紙:植民地本国あるいは擬人…

コロンブス交換という言葉を知っていますか?~『ヨーロッパの舌はどう変わったか―十九世紀食卓革命』南直人氏(1998)

ヨーロッパの舌はどう変わったか―十九世紀食卓革命 (講談社選書メチエ) 南氏はドイツ近代史の研究家、十九世紀、ヨーロッパの食卓に未曾有の変動が起きる。植民地からの誘惑の味、コーヒー・砂糖。科学の福音、缶詰。テーブルマナーの洗練、美食大衆の誕生。…

誰にでも世界の素晴らしさを味わうことができるとしたら、~『アルケミスト―夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ氏(1988)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア) コエーリョはブラジルの作家、羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過…

雲の重さは数十トン、それでも雲は軽い~『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』古川武彦×大木勇人氏(2011)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス) 古川氏は気象学の研究家、大木氏はサイエンスライター、数十トンもある雲が落ちてこないのはなぜ?(2011) 雲の粒 雲はどれも、たくさんの小さな水滴や氷の集まりです。これらを…

絶対貧困という極限状態で、人はどう生きるか?~『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』石井光太氏(2011)

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫) 石井氏は貧困地域をルポタージュする。絶対貧困──世界人口約67億人のうち、1日をわずか1ドル以下で暮らす人々が12億人もいるという。だが、「貧しさ」はあまりにも画一的に語られてはいないか。スラムにも、悲惨な…

世界は厳しいが、変えられる~『職業は武装解除』瀬谷ルミ子氏(2015)

職業は武装解除 (朝日文庫) 瀬田氏は武装解除のプロフェッショナル、「壊れた社会」を立て直す、それが私の仕事―。17歳のときに見た写真が、平凡な少女の運命を変えた。「武装解除」のプロとして、24歳で国連ボランティアに抜擢、30代で各界の注目を集めるに…

かつてカトリック教会は聖俗両方の権威者だった~『カトリック教会と奴隷貿易―現代資本主義の興隆に関連して』西山俊彦氏(2005)

カトリック教会と奴隷貿易―現代資本主義の興隆に関連して 西山氏はカトリック司祭叙階、現代資本主義のスタートラインとなった大航海時代に、カトリック教会は決定的な役割を果たしていた。(2005) 1493年教皇アレキサンデル6世の「贈与大勅書」 「全能なる…

日本的な様式美とは何か?~『日本人にとって美しさとは何か 』高階 秀爾氏(2015)

日本人にとって美しさとは何か (単行本) 高階氏は西洋美術史の研究家、 大胆なデザイン性、多様な要素を一つ画面に納める構成力、日本独自の美意識を明らかにし、この感性がいかに中国や西洋の文化を受け入れたかを詳らかにする。(2015) 光琳の≪紅白梅図屏…