毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

モラベックのパラドックスという言葉を知っていますか?~『ザ・セカンド・マシン・エイジ』Eブルニョルフソン+Aマカフィー(2015)

ザ・セカンド・マシン・エイジ

EブルニョルフソンとAマカフィーはデジタル化の経済的インパクトの研究者、

蒸気機関の発明によるファースト・マシン・エイジは18世紀後半に始まった。
いま、コンピュータを中心としたセカンド・マシン・エイジに突入した。(2015)

 
モラベックのパラドックス

人工知能 (AI) やロボット工学の研究者らが発見したパラドックスで、伝統的な前提に反して、高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要するというものである。(Wiki

一歳児のスキルが難しい 

ロボット工学者のハンス・モランベックは「知能テストで大人を負かすとか、チェッカーをするといったことは、コンピュータにとってさほどむすかしくはない。だが知覚や運動といったことになると、一歳児のスキルを身につけることさえむずかしく、場合によっては不可能だ」と鋭くも見抜いた。(56ページ)

数学的思考や論理的思考は新しい能力

人間が当たり前に使っている知覚・運動スキルの習得は、コンピュータにとっては非常に困難なのである。数百万年にわたる進化の歴史の中で、人類は何十億ものニューロンを身につけてきた。友人の顔を見分けるとか、音を聞き分ける、細かい手先の作業をするといった繊細で微妙なことができるのは、そのおかげである。一方、「高度な思考」とされている抽象的な推論、たとえば数学的思考や論理的思考といったものは、人類は比較的最近になってあらたに身につけたスキルで、数千年程度しか経っていない。こちらは比較的単純なソフトウェアで十分こなすことができ、さしてコンピュータの演算能力を使わない。だから人間の能力と肩を並べ、さらには上回ることができてしまう。(228ページ)

数百万年の進化を経てきたスキル

 

Wikipediaによれば顔面の認識、空間内の移動、人々の動機づけの判断、ボールをキャッチすること、声を識別すること、適当な目標を設定すること、興味深い事物に注意を払うこと、知覚・注意力・視覚化・運動などのスキルに関わるあらゆること、社会的スキルなどが上げられる。究極は無意識に認識し行動していることであろう。

コンピュータとロボットが得意な分野で能力を上げれば上げるほど、人間が数百万年経てきた能力とのギャップが生まれる。このギャップをシームレスにつなげること、これこそがコンピュータとロボット、AIの課題なのだと認識した。ロボットが知覚・運動スキルを高度化すればするほど、人間とマシンの境界線が問題となる。

蛇足

 人間は数学的思考や論理的思考で機械と競争してはいけない

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