毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

250年前、チェス指しロボットが存在していた!?~『 謎のチェス指し人形「ターク」』T・スタンデージ氏(2011)

 謎のチェス指し人形「ターク」

スタンデージ氏は作家、1770年、ウィーンで常軌を逸した発明がベールを脱いだ。通称「ターク(トルコ人)」というロボットは、世界第一級のチェスの指し手だった! (2011)

 

チェス指し人形「ターク」の誕生

 

1769年の秋のある日、35歳のハンガリーの文官ヴォルフガング・フォン・ケンペレンは、オーストラリア=ハンガリー帝国の女帝マリア・テレジアの宮廷に召し出され、そこに招待されていたフランス人奇術師の舞台を目撃することになる。・・・それからいろいろな出来事が起き、彼は奇想天外な機械を創ることになる、その機械は、木製のキャビネットの後ろに座って東洋風の衣装を着た人間の形をしており、チェスを指すことができたのだ。(3ページ)

知的作業を行う機械

ケンペレンの仕事は知らず知らずのうちに、動力織機、電話、コンピュータ、そして探偵小説の発想を喚起することになった。・・・それは本物のオートマトンではなく、人間のオペレーターがこそこそとコントロールして巧みに動く、糸で吊るされた操り人間みたいなものだった・・・ケンペレンは自分の機械にチェスを指させるという、明らかに知的な仕掛けを選んだとき、「機械は人間の能力を模倣したりそのまま再現したりできるか」という活発な論争に火をつけたことになる。この機械がデビューした時期は偶然にも産業革命が起こった時期と重なり、機械が人間の労働者を置き換え、人間と機械の関係が再定義されている最中だった。チェスを指す機械は、機械は人間の身体能力を上まわることはありうるが、心理的な能力を超えるのは無理だ、という考えに染まっている人には驚異だった。これが起こした人々の反応は、200年以上も経って、コンピュータが起こしたそれの先駆けだった。(6ページ)

チェス指し人形「ターク」がインスパイアしたもの

(後に自動織機を発明した)カートライトはロンドンでタークを見物したばかりだっだ。彼はすぐに、チェスを指すことのできる機械を作れるのだったら、自動織機を作ることだってできるだろうと推測した。(74ページ)

バベッジは)チェスを指せる本物の機械が可能なのかと思いをめぐらすようになった。・・・(バベッジの作ったコンピュータの元祖とも言える)階差機関の一部にあたる何かは、まるでタークのように、機械がいずれは人間の精神活動さえ代替できる可能性を示していた。(150ページ)

エドガー・アラン・ポーの)タークを分析した(エッセイの)方法は、その後に彼が書くことになるミステリー小説の原型であると広く見なされ、・・・(184ページ)

 

f:id:kocho-3:20170123080956p:plainトルコ人 (チェス) - Wikipedia

 

 

謎のチェス指し人形「ターク」

今から約250年前、チェス指し人形「ターク」が誕生した。その制作目的が見世物であり、更に言えば人間が操作する騙しだった。これら出生の秘密を越え、「ターク」は機械が知性を持つことができるか、という大きな命題を提示することになる。

この命題は自動織機のカーライト、階差機関のベバッジ、ミステリー小説家のポー、コンピュータのチューリングなど多くの人々をインスパイアすることになる。

約250年前に着想された「ターク」、つまりチェス指し人形は現在のコンピュータ・テクノロジーによって実現している。ケンペレンが様々な選択の中からチェスを選んだ慧眼に感服させられる。

蛇足

ケンペレンは人口音声も研究していた

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