毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

月に酸素はあるか?~『無限の始まり : ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』Dドイチュ氏(2013)

無限の始まり : ひとはなぜ限りない可能性をもつのか

 人間はなぜ限りない可能性をもつのか?(2013)

 

宇宙船地球号は本当か?

生物圏には人間の生命を維持する能力がないのである。歴史のはじめから、地球を何とか人間の住める場所にしたものは、人間の知恵にほかならない。・・・我々と「宇宙船」の関わり方というと、単なる乗客だったこともなければ(よく言われるように)乗務員を務めていたこともない。整備員ですらない。我々は宇宙船を設計し、建造する立場である。その設定が人間によって生み出される前に存在するのは、乗り物ではなく、単なる危険な原材料の山だ。(79ページ)

月に酸素はあるか?

・・・人間が生物圏の完全に外側、たとえば月面上で生きていけるかどうかは、人間の生化学的性質のきまぐれには左右されない。・・・現在のテクノロジーでも、月面上に、自給自足が可能な入植地を建設することはできるだろう。そこでは、太陽光発電で電力を供給し、廃棄物をリサイクルする。また月全体から原材料を手に入れることも可能だ。月の岩石には、酸素が金属酸化物の形で豊富に存在している。(89ページ)

 地球には真空がある

月には、質量、エネルギー、証拠(科学理論をテストする情報)といった、地球と基本的に同じ資源がある。・・・「月に住む人間は空気を自分自身でつくる必要がある」という事実には、「地球の実験室では真空を自分自身でつくる必要がある」という事実と同じ意味しかない。(95ページ)

無限の始り

本書の著者は宇宙船地球号のメタファーは誤っている、という。生命にとって地球の生物圏は優しい母親のようなゆりかごでは決してない。生物が反映している様に見えるのは過酷な環境に進化によって適用したからである。更に人間はその地球を改造する能力を獲得した。我々は地球環境によって与えられた物質、エネルギーを加工・利用することを覚えた。それは制限のない知識創造によってのみ可能となる。我々は宇宙船地球を常に改造し住みやすくしている。この運動は無限に続いていく。

月に酸素はある、それは地球に真空がある、ことと全く等価である。我々が科学という力で真空を発見した様に、いずれ月に酸素を発見する。その時宇宙船地球号はまた少しバージョンアップしている。

蛇足

真空は1650年、真空ポンプにより”発明”された。

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