毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうして我々は未来をシミュレートする事ができるのか?~『自由は進化する』ダニエル・C・デネット(2005)

自由は進化する

デネット認知科学、あるいは哲学者。自由は進化を加速するシミュレーションのツールとして自然がくれた。(2005)

 

遺伝子からの自由

 

 

まったくランダムな突然変異が遺伝子に生じる→新しい形質→現実世界でのテスト→100億に一つの確率で有利なら生き延びるけど、それ以外はみんなくたばるというプロセスで進化が進んできたけれど、だんだん遺伝子以外の形で情報を記録する仕組みが出てきた。・・・(パブロフの犬の様に)後天的な条件付が可能だというのは、行動の幅がすさまじく広がったことでもある。生物はこの段階で、遺伝子やそのすり込みの通りに動くか、あるいは後天的な条件付に従うか、という選択の余地を持ち始めている。(訳者解説439ページ)

 

自由の進化

 

訳者は①一番簡単なシミュレーションである実践、②自分の頭の中でシミュレーションしてみる、③コミュニュケーションによりシミュレーションを共有する、という段階を経て「自由が進化」(byデネット)していると要約する。自由の進化により、人間はより効用の高い選択を行える様になりつつあると結論づける。つまりは様々なシミュレーションを行ない一番効用の高い選択肢を選べる自由があると言い換えられる。

人間は未来を創る自由な能力を持つ

 

 

本書でのわたしのねらいは、ダーウィンの「奇妙な理由づけの倒錯」を受け入れれば、道徳や意味、倫理や自由の問題という最高かつもっとも深遠な人間思考までもずっと組み立てられるんだ、というのを示すことだった。・・・人間の自由がなぜ他の生物の自由より大きいかが理解できるし、この高い能力が道徳的な意味合い-ノーブレス・オブリージュ-を持つことも理解できる。人間は次に何をするか決めるのに一番いい立場にいる。それはわれわれが最大の知識を持ち、従って未来についても最高の見通しを持っているからなのだ。(447ページ)

 

ダーウィンの「奇妙な論理の倒錯」

 

 

(進化は絶対的無知が造物主になるという点で)自然選択には先の見通しがまったくない・・・でも母なる自然が、後知恵ならたっぷり持っているということも無視しちゃいけない。彼女のモットーは「あたしがそんなに近視眼的なら、どうしてあたしはこんなに豊かになれたのかしら?」だと言っていい。そして母なる自然は先はみえないけれど、でも先を見通せる生き物-特にわれわれヒト-を作り出したし、そしてヒトはまさにその予見力を、地球上の自然選択プロセス自体の誘導と幇助に使い始めているほどだ。(79ページ)

 

我々人間は遺伝子から自由である

f:id:kocho-3:20150502172140p:plain

 

動物の中で人間は圧倒的に後天的条件付が可能である。我々は遺伝子の働きだけに依存しているのではない。「氏より育ち」という諺を思い出す。それは自分で後天的条件を選択し自分で未来を創る事ができるという意味でもある。我々は「氏」=遺伝子を理由にする事はできても、それ以上に「育ち」=後天的条件の責任であり、ノーブレス・オブリージュを有している。我々はシミュレートし、未来を創造する力を進化によって獲得しているのだから、、。

蛇足

 

未来を想像するノーブレス・オブリージ

こちらもどうぞ

 

kocho-3.hatenablog.com