毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

シンデレラはどうやって12時を知ったか?~『時計の社会史』角山 栄 氏(1984)

時計の社会史 (中公新書 (715))

角山氏は経済史の研究家、時間をめぐる比較文化史(1984年)

 

  

シンデレラ物語

シンデレラ (英: Cinderella) の童話は仏語の『サンドリヨン(仏: Cendrillon)』、『灰かぶり姫』あるいは『灰かぶり』に由来する。日本ではシャルル・ペローによるものが有名である。

 「その話のハイライトは、時間の約束を守らなかったために、魔法がとけて、美女からたちまち、もとの一介にみすぼらしい娘の姿に変わってしまうところである。」(4ページ) 

シンデレラはどうやって11:45を知ったか?

 

いったいシンデレラはどうして時をしったのだろうか。もとより腕時計も懐中時計もないが、時計の針を眼で確認したのではなく鐘の音でしったとすれば、その時計はどんな時計であったのだろうか。町の公共時計なのか、それとも王宮のなかの置時計であったのだるうか。(5ページ) 

時間厳守の持つ意味

 

 

時間を守るという仙女との約束である。しかもその約束には、1分でも遅れてはならないという厳しい時間の約束であれば、その時計の客観的な正確さを保証するものがなければならない。・・・そのことを考えると、シンデレラのお伽話が、厳重な時間の約束を中心に構成されていることの社会的意味は重要である。(5ページ)

 

『時計仕掛けの世界~1550-1650ドイツの古時計のカタログ』より

  

(1980―1981年に行われたドイツ古時計の博覧会のカタログには)展示会に展示された120点の時計について、それぞれの鐘の打ち方が明記されているではないか。その解説によれば、時針は1本であるが、時報は1時間ごとはもちろんあるにしても、多くの時計が15分ごとおよび1時間毎に鳴る仕掛けとある。しかもそれらの豪華なぜんまい時計の製作年代はすべて16世紀末から17世紀初めにかけての時期であることが明記されている。(14ページ) 

時間意識の革命と資本主義の成立

 

 商人の時間は利潤に関係する時計であり、時間を組織的・計画的に利用することが営利なのである。・・・ヨーロッパ各都市に種具現した公共用機械時計は、「教会の時間」に挑戦する「商人の時間」を象徴するものであり、それは自由都市を牛耳る商人たちの経済的・社会的・政治的支配の道具となった、・・・一大革命とは、近代的資本主義的時間の成立を意味する。それはほぼ時間的には15世紀から16世紀にかけての時期であったといってよい。(19ページ)

 

 

シンデレラもまた資本主義に暮らしていた

 

角山氏は西欧において時間の計測は利息、労働時間の商品化と密接に関わっていた事を指摘する。15-16世紀には時間を計測する事が普及し始める。それは資本主義が成立しつつある証拠でもある。シャルル・ペローが描くシンデレの舞台は16世紀末、置き時計と、時間厳守という習慣が社会的に認知されていた事を示す。そして私はシンデレラの約束に何の違和感を持たなかった。我々は資本主義の只中にいる。

蛇足

 

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