毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球に一番多い物質は何か知っていますか?~『鉄理論=地球と生命の奇跡』矢田 浩 氏(2005)

 鉄理論=地球と生命の奇跡

矢田氏 は金属工学の研究家、元素としての鉄は、40億年前に生命が誕生したときから、生命になくてはらなないものだった。(2005年)

 もっとも安定的な鉄原子核

 

 すべての原子核の中で、鉄の原子核がもっとも安全なためである。原子核の安定性は、核子数(陽子と中性子の数の合計)が小さいうちは、だいたい原子核が大きくなるほど大きくなる。つまり陽子または中性子1個あたりの結合エネルギーがより大きくなる。・・・核子数56の鉄の原子核あたりで(結合エネルギーは)ピークになる。(18ページ) 

生命にとって鉄の特別な意味①

 

鉄は、さまざまな化合物中の窒素、酸素、硫黄原子と配合結合をしやすく、生命にとって極めて重要な多くの配位化合物を作る。特に鉄がユニークな点は、鉄の原子価が2価でも3価でも、配合化合物が一般にほとんど同じ立体構造をとることである。この為配位化合物の中心にいる鉄原子が、容易に電子の受け渡しをすることができる。(31ページ) 

生命にとって鉄の特別な意味②

 

 強い磁性を持つということである。室温で磁性をもつ元素は鉄、コバルト、ニッケル。だけで、その中で鉄はいちばん強い磁性を持つ。(32ページ) 

生命は鉄を利用した

 

 最初の生物は、海水中の鉄イオンを利用してエネルギーを得ることで誕生したらしい。もしこの学説が事実でなかったとしても、鉄-硫黄タンパク質が最古のタンパク質といわれていることなどから考えても、鉄なしでは地球型の生命は生まれなかったことは確かである。(87ページ) 

鉄は生命に環境を提供した

 

 (生命が海水から陸上に進出するには紫外線からの防御が必要であり)これが可能になるためには、酸素の増加による大気中オゾン層の生成と、地球の中心の溶けた鉄の核が作った地磁気の生成とが、欠かせなかった。他の地球型惑星には地球のように発達した磁場はできなかったが、これは地球のような固体の鉄の内核ができなかったためらしい。(88ページ) 

すべての生命は鉄を必要としている

 

人体には鉄は85.6PPM含まれている。一方地殻には70,700PPM、河川には0.02-0.7PPM、海水中には0.03PPM含まれている。鉄の人体中の濃度は、海水の900倍に達する。

これは著者は生命が誕生した時の原子海水の鉄分濃度は0.6-60PPMの範囲であり、生命はそれを有効活用する能力を獲得したからだと説明する。そしてその後海水中の鉄は酸素発生により酸化、海水から消えていった。

地球型生命は呼吸や光合成で鉄を電子の受け渡しに使っている。鉄というと産業、工業を連想するが、実は生命とも深く結びついていた。安定的な原子核を持つ鉄は、地球の存在量は32-40%と推計されている。地球は鉄の惑星であり、地球型生命もまた鉄を活用する事で繁栄してきた。

蛇足

 

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