原子核は反発する力と引き合う力で出来ている~『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>』多田 将氏(2015)
ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器> (イースト新書Q)
多田氏は素粒子物理学者、原子核が膨大なエネルギーを生み出す仕組みから、兵器に利用する際の設計方法、冷戦時代につくり出された究極の産物まで、直視しなければ見えてこない「核」の本当の姿を描く。(2015)
原子
太陽の周囲を周回する惑星のように、原子の外周を電子が回ることで、原子の表面を電子が覆っている状態となっているからです。電子は全てマイナスの電気を持っていますので・・・中身がすかすかの原子同士がしっかりと反応できるのです。
原子核
原子核を発見するまで、人類は、重力と電磁力という2つの力しか知りませんでした。しかし、原子核の構造を知ることで、必然的に、もうひとつの力が必要であることを同時に知ったのです。この力を「強い力」と呼びます。・・・この「強い」は「電磁力より強い」という意味ですが、本当に強くて、電磁力の100倍ほどの強さで、陽子と中性子をがっちりと繋ぎ留めています。(34ページ)
水滴と原子核
原子核を液滴(液体が水であれば水滴)と見做し、原子核を繋ぎ止めておく強い力と反発する電磁力との作用を、液滴の形を保っている表面張力のように表現するモデルです。このモデルは、先ほどお話しした太陽系型の原子モデルを提唱したニールス・ボーアを初めとする物理学者たちが提唱したのですが、実際の原子核の振る舞いを非常によく説明出来たのです。(38ページ)
核融合
この水滴は、それぞれ安定して形を保っていますが、お互いに接触するほどの接近すると、くっついて大きな水滴となります。そのほうが、水滴の表面積の総和が小さくなり、安定するからです。(38ページ)
核分裂
一方で、あまりに大きな水滴だと、水滴の表面張力が重力に負けて、その形を保てなくなり、割れてしまいます。(38ページ)
どうして核融合や核分裂を起こすのか?
原子核が融合や分裂を起こすのは、その方が安定するからです。安定するというのはより無駄なく効率よくその原子核の形を保つことが出来る、ということでもあります。・・・従って、融合なり分裂なりを起こして安定した原子核は、反応前よりも結合エネルギーで原子核の形を保つことが出来、その分余剰となったエネルギーは放出してしまうのです。・・・その放出されたエネルギーが、質量欠損分のエネルギーなのです。(61ページ)
原子核同士を反応させるには
原子に一定以上の熱を与えると原子が飛び出して、原子核は剥き出しの状態(プラズマ)となる。原子核同士で働くのは「電磁力と強い力」。核融合、核分裂のどちらの場合もより少ないエネルギーで原子核が構成される。その際に余ったエネルギー=ポテンシャル・エネルギーが放出される。
水滴には「重力と表面張力」が作用する。表面張力が勝っている間は水滴が大きくなり、重力が勝ると水滴は分裂する。
集団に働く力
この水滴モデルの例えは秀逸である。2種類の違う種類かつ大きさの力が働く集団には何にでもあてはまるのであろう。著者は宴会後に二次会が分裂する様子に例えたが、会社にも当てはまる。大きい方がメリットがあればM&Aでどんどん会社は大きくなる。会社が大きくなり過ぎると官僚化が進み会社からスピンアウトする集団が発生する。
蛇足
原子核は反発する力と引き合う力で出来ている。
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