毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

原子核は弾力性のある水滴の様、そしてそれは分裂を起こす

現代物理学の父ニールス・ボーア―開かれた研究所から開かれた世界へ (中公新書)

 

 

ニールス・ボーア(1885-1962)

デンマークの理論物理学者]量子論の育ての親として、前期量子論の展開を指導、量子力学の確立に大いに貢献した。

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分裂反応とは、不安定核(重い原子核や陽子過剰核、中性子過剰核など)が分裂してより軽い元素を二つ以上作る反応のことを指す。天然ウランに低速中性子(slow neutron)を照射し、反応生成物にバリウム同位体を見出したことにより発見された。

f:id:kocho-3:20140826081948p:plain核分裂反応 - Wikipedia
1938年核分裂の発見

ウラン中性子をあてる実験において、ウランより軽いラジウムに似た生成物のあることを見出していた。趙ウラン元素が作られるはずであるのに、ウランより軽い物質が生成されることは、不可解きわまりないことであった。バリウム原子は原子番号56で、ウラン原子(原子番号92)の約半分の重さをもつから、ウランが破裂したことが示されたことになる。核分裂の発見である。(210ページ)

ボーアの液滴モデル

核分裂が)はじめはゆつくりと細長く変形してくびれができ、最後に二つの粒にちぎれて分かれると考えた。普通の液滴がその様に分かれず安定しているのは、表面張力によるものだが、原子核の場合には電気を帯びている(ので表面張力と同等の力が働いている)。・・・(ボーアは)遅い中性子によって分裂を起こすのは天然ウランの中に0.7%しか含まれない質量数235の同位体であり、天然ウランの大部分を構成する質量数238のウラン同位体は、速い中性子によってのみわずかに核分裂すると結論した。・・・普通の液滴が二つに分かれるとき、さらに小片が2,3飛び散るように、一つの核分裂反応において2,3個の中性子が飛び出る可能性のあることが示されているが・・・こうして放出された二次中性子はまた新たな核分裂を引き起こすのに使われる可能性があり、さらにその数が十分多いときには、最初の過程におけるよりもっと沢山の中性子が出されることになる。この仕方でどんどん増えていく連鎖反応を実現することができる。(214ページ)

核分裂のもたらしたもの

ウラン1回の核分裂で二個の中性子が出ることをつきとめたとき、多くの人はこの核エネルギーを実際に使用できるかどうか、特に原子爆弾をつくることができるかどうかを真剣に考え始めていた。(214ページ)

ボーアの核兵器開発に対する思い

原子力は、有効に利用でき、自由に研究もできるが、そん効果的な管理は十分に開かれた世界なくしては不可能だ。プライバシーは必要だが、世界の安全をおびやかすおそれのあるものはすべて原理的に世界に公開されなければならない。(229ページ)

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ボーアの開かれた世界に対し、英米の出した答え

原子爆弾の)管理と使用に関する国際協定をつくるという観点から世界にこれを知らしめるべきという(ボーアの)提案は受け入れなれない。(1944年9月、英チャーチル首相と米ルーズベルト大統領の合意書)

核分裂に関して我々が認識すべき事

核分裂は人類が作り出したではなく、人類によって発見されたものである、という事。つまりは人類共通の知的財産の一部である。核分裂の発見は第二次世界対戦を背景に核兵器を生んだ。今も核分裂核兵器をめぐる構図はボーアの理想の真逆である「閉じた世界」であると認識する。

蛇足

分裂という言葉はアメーバ細胞の分裂に由来する。