毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

マネージャ―は部下に任せるのが本当にいいのか?~『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 』A・S・グローブ氏(2017)

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 

 インテル元CEOのアンディ・グローブが、後進の起業家、経営者、マネジャーに向けて、一字一句書き下した傑作。(原書は1984年、復刊は2017)

部下をどうやってマネージするか?

マネージャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことである。・・・(それでは)たった一つの最上のマネジメント・スタイル、つまり、これに勝るものはないといったような良いアプローチが果たしてあるのだろうか?(252ページ)

部下のタスク関連習熟度(TRM)

これは、今手がけているタスクに関連したきわめて個別・具体的なものであり、特定の人または特定のグループの人々は、ある仕事では高いが別の仕事では低いTRMを持つことが十分ありうるのだ。・・・(あるマネージャーを違った分野に移動させると成績が悪化することがあるが)マネージャーの個人的成熟度は変らないが、環境、内容、タスク、など、すべてが新しいことだったので、新しい仕事での彼のタスク習熟度が極端に低くなったということなのである。・・・結論としては、タスク習熟度が変わるにつれて、様々なマネジメント・スタイルが必要になるということである。(255ページ)

部下のタスク習熟度に応じた効果的マネジメント・スタイル

 

部下のタスク習熟度(TRM)

効果的マネジメント・スタイル

明確な構造(仕組み)、タスク指向―“何を”“いつ”“どうして”を示す

個人志向―双方向通行的コミュニュケーション、支持、お互いの判断力を重視する

マネージャーの関与を最小限に―目標を設定し、モニターする

 

ここで一言注意しておきたいが、明確な構造を持つマネジメント・スタイルのほうがコミュニケーション志向のスタイルよりも価値が低いなどと、判断しないことである。何が「良く」て何が「悪い」ということは、あなたの考え方や行動の中で、いかなる場も占めてはならない。われわれ追求しているのは、何が最も“効果的”かという点である。(256ページ)

 子供に自転車を与える場合

親は子供に単に好き勝手に(自転車で)外へ出すわけではない。側につき添って自転車が倒れないように保護しながら、道路での安全について話してやるだろう。子供の成長がさらに進めば、親は細かい指示を省けるようになる。最後には、子供の生活習熟度が充分に進み、子供は家を離れ、大学に入ることも考えられえる。この時点になると、親子の関係は再度変わり、親や単に子供の進歩の度合いをモニターするだけとなるだろう。(257ページ)

マネジメント・スタイルは変わる

開けたマネージャーは(明確な構造を持った、何を、いつ、どうして、を指示する)こういううるさいやり方は使うべきではないように考える。結果として、手遅れになってどうにもしようがなくなるまでそれを取り上げようとしないことが多い。・・・(マネージャーは)マネジメント・スタイルの良し悪しをではなく、それが効果的か効果的でないかの判断を学ばなければならない。こういうわけで、リーダーシップの研究者にはマネージャーが使う唯一最良の方法が見つからないのである。それは毎日のように変わるし、時々刻々変化するのである。(260ページ)

ハイアウトプット・マネジメント

アンディ・グローブは「マネージャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことである」という。

それではマネージャーはどうやって引き出すか?それには唯一絶対の方法はない。相手によって環境によって変わる、ということである。

一般的には任せるマネジメント・スタイルが上等で、マイクロマネジメントスタイルはあまり良くない、と捉えられている。しかしTRMの低い部下をどうなるか?子供に自転車を与えたら、練習もせず自由に乗らせるか?訓練・経験などによって部下のTRMを上げてマネジメント・スタイルを任せる方向に持っていることが必要である。

本書でも触れられているとおり、マネジメント・スタイルに良いも悪いもない。あるのは何が一番効果的か、という点だけである。

マネジメントは人と人との関係である以上感情から逃れられない。だからこそマネージャーはマネジメント・スタイルにこだわる感情から自由でなければならない。マネージャーがこだわるべきは一番効果的な方法である。

蛇足

子供は成長するだけだが、ビジネスは成長・後退を繰り返す

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