ストップウォッチを持って仕事をしたことがありますか?~『 生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』伊賀泰代氏(2016)
伊賀氏はキャリア形成コンサルタント、日本企業は生産現場での高い生産性を誇ったが、ホワイトカラーの生産性が圧倒的に低く世界から取り残された原因となっている。(2016)
生産性とは生産現場だけのものではない
生産性は「成果物」と、その成果物を獲得するために「投入された資源量」の比率として計算されます。「アウトプット」÷「インプット」といってもよいでしょう。(30ページ)
日本で「生産性の向上といえばコスト削減」とおもわれがちなのは商品企画やマーケティングに影響力を持たない「工場」のみでその言葉が使われ、発展してきたからでしょう。(33ページ)
問題は生産現場以外
今の日本の問題は、ビジネスイノベーションの少なさです。具体的には、経営管理手法や組織運営方法などマネジメント分野のおけるイノベーション、ブランディングやプライシングなどを含めたマーケティング分野でのイノベーション、企画や人材育成など個人技に頼りがちな分野のイノベーションなどにおいて、後れを取っていることだと思われます。(64ページ)
生産現場で行われていること
製造現場ではすべての人の仕事振りが公開されています。個々人の間にパーテーションがあったりはしないし、時には自分の後ろに(許可もとらず)誰かが立っており、作業時間をストップウォッチで計っていたりします。そして「この作業手順はこう変えてはどうか」「部品の置き方をこう変えてはどうか」といった話し合いが頻繁に行われ、実際に試されています。そういう環境から、世界で最も生産性の高い製造現場が生まれているのです。(153ページ)
ホワイトカラーの現場でも同じ
マッキンゼーで新人育成を担当していた頃、パフォーマンスが上がらないと悩む新人コンサルタントによく与えていたアドバイスが、「キッチンタイマーを買って作業時間を可視化するように」というものでした。・・・何をどう変えればどれほどスピードが変わるのか、ひとつひとつ効果を測定することで、さらなる改善が可能になるからです。タイマーを使わずに生産性を上げようとするのは、体重計に載らずにダイエットをするようなもので、効果が測定できなければ手法の正しさも確認できません。・・・マッキンゼーにおいて成長する、昇格するとは、仕事の生産性を上げることに他なりません。(137ページ)
生産性
日本企業は戦後生産現場の高い生産性で世界を席巻した。日本の人口増、米国市場へのアクセスによって市場が一気に拡大した。そこではマーケティングもブランディングも生産現場に比べ重要性は薄かった。だからこそホワイトカラーでは生産性ということが重視されてこなかったのであろう。更に言えば生産性を追求することは、新規性や多様性などを阻害する、といった言い訳が横行してきた。
伊賀氏はグローバルカンパニーのマーケティングへの取組例にアップルストアを引用する。アップルストアの特徴はその洗練されたデザインで一気にブランディングしたことで有名である。実は最近アップルストアの名称からストアの文字を消しているという。これは「物理的な拠点がもはや物を売る場所=ストアでなくなる」ことを先取りしたからだと分析する。
いい物を作れば世界に売れる、仕事には私だけのこだわりが大切、ホワイトカラーの仕事は標準化できない、これではグローバルに通用しないのは間違いない。競合はマーケティング、組織運営、ファイナンス、あらゆる分野で生産性を上げる=アウトプットを増やそうとしている。我々はもっとアウトプットの質・量の向上に目を配るべきである。
蛇足
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