毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

サイバーの語源は70年前の"サイバネティクス"~サイバー空間で知っておきたい"究極の質問"とは?

サイバーとは?

サイバーとは生命体と情報機器が混じり合った状態、そしてその状態がネットワーク化した空間を指す言葉。Syber-space、電脳空間。これから拡張してコンピュータ、インターネットなどをしめす接頭語。語源はサイバネティックス

 

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

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制御には真空管による乱数生成が大きなファクターだったと推測

 

サイバネティックス~1948年ウィナーにより提唱される。

我々は制御と通信理論の全領域を機械のことでも動物のことでも、ひっくるめて“サイバネティックス(cybernetics)という語で呼ぶことにしたのである。これは”舵手“を意味するギリシャ語から作られた言葉である。(36ページ)

鉛筆を拾うという運動~循環的

この様な動作を行う為には、意識するとしないに関わらず、我々が鉛筆を拾うという目的にまだ到達していない程度が、瞬間ごとに神経系に報告されなくてはならない。(中略)それとは反対に、中枢神経系の極めて特徴的なある種の機能は、循環する過程としてのみ説明できるものである。この循環する過程は、神経系から発して筋肉にゆき、自己受容性の感覚を伝える抹消神経か、別の特殊な感覚であるかを問わないが、いずれにせよ感覚器官を通じて、再び神経系に戻ってくるのである。(39ページ)

 

ウィナーは1961年の本書2版への序文に「統計的情報論および制御論の概念」はあまりに平凡で決まりきった事しか書いていないと思われるのではないか、と記述している。50年後の我々が何を決まりきった事を、と思うのは当然である。

統計的情報処理および制御論とは“学習する機械”(13ページの記述より再構成)

サイバー説明はブラックボックスとホワイトボックスで例える。ブラックボックスは回路が明示されておらず、ホワイトボックスは回路が明示されている。それぞれにランダムな入力を与えて出力を比較する。ホワイトボックスの回路を修正してブラックボックスの出力と一致する様に修正を何度も行う。この概念は“学習する機械”である。

 

ウィナーはサイバネティックスを①人間の機能を補強するもの(例えば義足)、②人間と同等の働きをする人工的な機械(例えばロボット)、③社会科学の分野の可能性を検討し、③は統計的な処理に難しいと指摘し、①と②の可能性を評価している。

 
結局サイバネティックスはどういう影響を与えたか?

論理式を司るコンピュータ、動作を司るサイバネティックス制御、この二つが組み合わさった時ロボット、あるいはストロングAIという概念が成立したと考える。1960年代ストロングAI、人間と変わらない人工知能の誕生に対し楽観的だった背景であろう。そして我々は今もサイバーという言葉を使っており、コンピュータと人間が混在する空間という概念を当たり前の事として受け入れている。

 

本書でウィナーは「魔法に何か願い事をするには、自分が本当に欲しいというものを言わなければならない、ただ自分は願っていると思っていることを言ったのではいけないという事である。新しい本当の学習機械の働きも、杓子定規である。」(329ページ)と記している。ストロングAIが50年前も今も成立しえない理由がここにある。学習機械への究極の依頼事項は完璧には記述できない。

蛇足

「魔法に何をお願いするか?」という質問を自問してみる。究極の答はあなただけのもの。誰も“検索”できない。