毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

共同体が存在しない社会は存在しえるのか?~『宗教消滅 資本主義は宗教と心中する 』島田裕巳 氏(2016)

宗教消滅 資本主義は宗教と心中する (SB新書)

 

島田氏は宗教学者、日本の宗教が衰退している現象を読み解きながら、それを経済・資本主義とからめて宗教の未来を予測する。(2016)

 

宗教の存在しない社会は無かった

宗教の存在しない国や民族というものは、これまで発見されておらず、どこかの時点で、宗教に結びつくような精神活動が始まったことは間違いない。人類は、相当に古い時代から宗教と付き合ってきたのである。(3ページ)

資本主義の社会では、資本の蓄積ということが自己目的化され、規模の拡大が続いていく。市場を拡大し、生産力を高めていくことが至上命題となるが、その為には労働力を確保しなければならない。移民者や移民は、それを満たすために故郷を捨てていくのである。(158ページ)

宗教の最小単位は家族である

信仰は個人のものであるかもしれないが、宗教というものは必ず共同性を伴っている。・・・信仰を得るという行為は、特定の宗教談大のメンバーになることを意味する。・・・信仰は、信者から外部の人間に伝わるのではなく、家族の内部で継承されるようになる。・・・宗教は、地域や村落共同体、家族や一族といった共同体に基盤をおいている。その共同体を資本主義は破壊していくのだ。(163ページ)

宗教の未来

ヨーロッパや日本などの先進国で起こっている宗教の急速な衰退という現象である。それは、伝統的な既成宗教で起こっていることが、同時に新宗教にも起こっている。要は、先進国の社会は、世俗化、無宗教化の方向に向かっているのである。(233ページ)

高度資本主義と宗教

共同体の最小単位とも言うべき家族でさえ解体の危機になる。・・・高度資本主義社会は、たしかに「お一人様」でも生きられる社会になっているが、単身者世帯は決して再生産されない。・・・資本主義は、社会の最小単位を家族から個人へと狭めることによって、社会を成り立たせる基盤を失いつつあるようにも見える。(239ページ)

宗教消滅

 

宗教は科学の発達によってその存在基盤を弱めてきた。更に資本主義は共同体を解体する。島田氏は宗教も共同体の一種であり、他の共同体と同様解体の方向に向かっているという。

欧州などではイスラム教の伸張は激しいが、それも経済的理由による移民が背景にあるとすれば、その拡張も一時的なものでありいずれは無宗教の方法に収束するという。

高度資本主義は社会という共同体を「お一人様」に解体させ、もはや宗教ですら存続できなくなっているのかもしれない。我々の社会から共同体が消えていくとき、どんな社会が存在するのであろうか?

蛇足

 

資本主義は共同体の存在しない宗教か?

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