雲の重さは数十トン、それでも雲は軽い~『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』古川武彦×大木勇人氏(2011)
図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)
古川氏は気象学の研究家、大木氏はサイエンスライター、数十トンもある雲が落ちてこないのはなぜ?(2011)
雲の粒
雲はどれも、たくさんの小さな水滴や氷の集まりです。これらを合わせて「雲の粒」と呼ぶことにします。積雲は、ふわふわと軽そうに見えますが、じつはそうではありません。普通に見られる大きさの雲一つをつくる雲の粒の総量は、なんと数十トン以上もあります。
雲が落下しない理由①空気抵抗
雲の粒1個の大きさは、だいたい半径0.01㎜程度です。小さいといっても質量があり、地球の重力が働いています。したがって、雲の粒も落下します。・・・実際の雨粒の落下では、秒速6-7メートルに達したときに、空気による抵抗が重力の大きさと同じになって、力がつり合い、それ以上速さは増えません。・・・空気の抵抗は、物体の表面で生じるので、表面積が大きいほど大きくなります。・・・話を簡単にするために、雨粒が立方体の物体であると仮定し、この立方体を半分に切ってみます。切った断面が新たにできるので、表面積は増えます。・・・粒を小さく分けるほど、受ける空気の抵抗は大きくなっていきます。
数十トンもある雲が落ちてこない理由の一つは、小さな雲の粒となって表面積を広げているため、落下に気がつかないほど(空気抵抗と重力の大きさが釣り合う)終端速度が遅いということです。(15ページ)
雲が落下しない理由②上昇気流
日射におより地表面のある部分が周囲よりも強く熱せられると、その付近の空気のかたまりが温められて周囲の空気より軽くなり、上空へ浮かびあがります。・・・このように上昇する空気の流れを上昇気流といいます。上昇気流の中にあれば、小さな雲の粒1個1個は気流に支えられ、雲全体も奥手こないと考えることができます。(16ページ)
雲は乾燥した空気より軽い
空気にさらに水蒸気が含まれるとき、水蒸気が入った分だけ、窒素分子や酸素分子が排除されます。・・・このときに排除された窒素の分子量は28、酸素の分子量は32であるのに対し、入れ替わりに入った水蒸気の分子量は18しかありません。つまり、水蒸気を含んだ空気は重くなるどころか、軽くなるのが事実です。(24ページ)
空気は重い
ふわふわした雲は軽い綿菓子の様である。その雲全体としてみれば数十トンもの重さになるという。雲の粒一つ一つは小さく空気抵抗が増えて落下しない。
更に我々の直観を裏切るのは、雲は水蒸気を含む分だけ乾燥した空気より軽い。湿った空気は~4%程度の水を含み、窒素・酸素に次ぐ構成比となる。この湿った空気=雲に比べ、乾燥した空気は更に重たくなる。
我々は空気の重さを直接感じることはない。空に浮かぶ雲は、空気の重さを感じさせてくれる。
蛇足
直観を裏切ること、水蒸気は乾燥した空気より軽い
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