毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ノーベル財団がノーベル賞に託すメッセージとは何か>~『日本にノーベル賞が来る理由』伊東 乾氏(2008)

日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)

伊東氏は作曲家、指揮者、原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。(2008) 

 

湯川博士ノーベル賞

昭和24年、湯川にノーベル物理学賞が授与された背景には、ノーベル物理学賞の選考委員でもある「マンハッタン計画」に責任を持った多くの物理学者たちの明確な「後悔」と「謝罪」の念が込められています。・・・湯川への単独授賞は、明確に「原爆投下への謝罪の意を込めて、日本科学を世界第一線のものと承認するセレモニー」として企画されたと考えられます。(50ページ)

湯川博士ノーベル賞授賞は高い専門業績に対して与えられたものでもありますが、湯川さんご自身がその社会的意味や科学者の責任を自覚され、パグウォシュ会議などに奔走されたのも、地球と人類の存続のため「崩れたバランス」を回復するための献身でした。(83ページ)

現代日本への期待

ノーベル各賞の中で常に先駆的な役割を果たす文芸賞が、日本人作家である大江さんに、日本という枠、あるいは国境や人種の別を超えて、障害者との共生と人類の未来への希望を託していることに注目しなければなりません。・・・アメリカの科学界がすでに「アメリカ」という一国家を超えた働きをしているように、日本が日本という枠を超えて、非西欧唯一の「特権的な知の拠点」を超えて、世界を支える役割を期待されていることに直結します。(178ページ)

ノーベル賞の対象性

ノーベル賞を)より踏み込んでいうなら「対象性とその破れ、そして、より高次での対象性の回復」という過程が、科学から平和まで、分野を問わずすべてのノーベル賞業績と深く関わっているのです。(82ページ)

ノーベル賞とは何か?

 著者はノーベル賞にはメッセージがあるという。高い専門性だけでなく、人類全体を豊かにすること、経済的にも政治的にも安定と繁栄をもたらすこと、が必要であるという。

湯川氏のノーベル賞授賞は、物理学が原爆によって人類にもたらしたマイナスのバランスをとるべく、被爆国である日本、非西洋社会である日本の物理学へのメッセージがあったと分析する。

現在の日本は、非西洋社会の中で他の国・地域と連携した知の拠点として世界への貢献が求められていると説く。日本は幸いなことに明治維新以前から学問に適した国内環境を持ってきた。そしてこの幸運による知の拠点となった今、日本だけで独り占めするのではなくそれを世界を分かち合うことが求められているという。

ノーベル賞は普遍的なメッセージを発信していた。

蛇足

 

ノーベル賞受賞者は世界で300名

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