毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

あなたは自分でゲームを組み立てているか?~『サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台』平田竹男(2013)

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台 (新潮文庫)

 平田氏は「トップスポーツビジネス」の研究家、自ら関わった数多くの日本代表戦のマッチメイクを振り返り、ピッチ外で火花を散らすもう一つの戦い=「外交交渉」の真実を、通産省出身のサッカー協会元専務理事が明かす。(2013)

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マッチメイクとは

2002年から2006年まで、私は日本サッカー協会のゼネラルセクレタリー(専務理事)として、様々なカテゴリーの日本代表が戦う「代表戦」の一切を取り仕切ってきた。サッカー界では「マッチメイク」と呼ばれる作業である。・・・私の定義では「サッカー協会が主体的に国際試合を組むこと」となる。その目的は、まず「代表の強化」と「競技の普及」にある。・・・さらに重要な点は、試合を通じてしっかりとした収入を確保することだ。・・・)日本のサッカーが発展するためには、ピッチの外の(交渉という)戦争でも勝たなくてはいけない。(12ページ)

ドーハで日本に有利な条件を勝ち取る

アテネ五輪出場をかけたアジア最終予選は)4チーム中1位にならなくてはいけない。・・・シード順などを考慮すると、日本以外の同グループ3チームが中東勢になる確率が最も高いことがわかった。・・・通常のホーム&アウェーの大会方式なら、移動距離が長い日本が明らかに不利だからである。・・・AFC(アジアサッカー協会)からは24時間以内に交渉すれば、ホーム&アウェー方式を変えることも可能だと通達されていた。抽選はドーハのホテルで行われた。私は数日前から、抽選会場近くの部屋に乗り込み、日本サッカー協会の「前線基地」を置いた。食べ物、飲み物を持ち込み、24時間体制で他国の醸成を細かに分析し、抽選結果とその後の交渉のシミュレーションをした。・・・抽選の結果、日本は予想どおり中東3カ国になった。しかし、通常のホーム&アウェーではなく、日本とUAEアラブ首長国連邦)での2カ国集中開催を勝ち取った。日本にとってはむしろ有利な条件だ。アテネへの切符がぐっと近づいた瞬間だった。(10ページ)

交渉シーン全体をイメージすること

この交渉に際しては、自分が将来携わる可能性のある交渉について、俯瞰しながら具体的な「シーン」をイメージしておいたことが良かったと思う。つまり、アジア予選をダブルセントラルにするという最終的なゴールに向かって具体的に逆算し、そこに向かって想定されるハードルや壁を抽出した上で、採りうるアクションを整理し、少なくとも日本側で用意できるカードを豊富に持っていたことである。・・・こういうようにピッチ全体を見渡しながらも、一対一で真剣に人付き合いをしていれば、日本人でも全く問題なく海外で人脈をつくれるし、交渉だって勝てる。(45ページ)

交渉の舞台裏

 

平田氏は大学でサッカー選手としてプレーするも、その後経済産業省で資源外交に従事。その後日本サッカー協会の専務理事として海外の国々とサッカーを巡る闘いを選択した。

官僚時代には日本のJリーグが、南米で、中東で、日本のイメージを変えるのを見てきたという。ビジネスだけの日本から、スポーツを楽しむ若者は「日本の国威発揚に大きく貢献」(15ページ)したという。

本書は、日下公人氏が『優位戦思考で世界に勝つ』で引用、手にとった。サッカーも外交も、世界で戦わなくてはいけない時がある。その時必要なのは用意周到に準備することである。自分で選択を増やしていくことが勝利に繋がる。平田氏は2013年より内閣参与も努める。

蛇足

あなたのゴールにつながるマッチメイクは何ですか?

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