主導権を握る為に必要なこと、自力で運命を切り拓く、覚悟~『優位戦思考で世界に勝つ』日下公人氏(2014)
日下氏は評論家、「優位戦」とは、こちらが主導権を握って“戦場"を選び、時を決め、目的も手段も決められる戦いのことである。そうした「優位戦」の思考を持てば、「劣位戦」に追い込まれることなく自分の利益を確保できる。(2014)
優位戦思考とは~アメリカの小咄
メリーちゃんとマーガレットちゃんは大の仲良し姉妹でした。あるとき、「オヤツの時間です」と言われて二人が行ってみると、テーブルにはケーキが一つしか載っていませんでした。メリーちゃんは「マーガレットちゃんの分がない」と泣き出しました。
メリーちゃんはケーキを確保できるうえ、「妹思いの、いいお姉さんですね」と褒められる。先んずれば人を制す。劣性に追い込まれることなく時部員の利益を確保できる。(14ページ)
欧米の行動原理
欧米の政治家や外交官、経済人は、そうした思考に長けている。国際貿易や産業・環境技術などの新ルールを中核メンバーだけで、自分たちが有利になるように決め、あとで日本などに参加を呼びかける。「入らないと孤立するぞ」と脅すと、日本はあわてて飛んでくる。そして必死に追いつこうとする。これまでの日本はそうだった。これが典型的な劣位戦である。日本の外交官、学者、進歩的言論人、政治家は、この劣位戦が得意である。決められた枠の中でベストを尽くす達人、というよりもそれしかない。(15ページ)
ビジネスの優位戦思考
新しい事業プランを示しながら、「これ、やりましょう」と上司に提案する。すると「他社を含め前例がない。リスクが大きすぎないか」と反対されるが、そんなときは、こう進言してはどうか。
「大丈夫です。もしも失敗したときは私が“腹”を切ります。降格、左遷されても構いません。失敗は私のせいだと言われても、決して反論しません。また成功したら、あなたが命じてやらせたと言って下さって結構です。私は何も話しません」
こう言えば、自由に思い通りの仕事ができる。それで失敗したら、別の部署に行くか、別の会社に行って仕事をしようと覚悟しておけばよい。(16ページ)
自力で運命を切り拓く
日下氏はあとがきに、「最後に一つだけ、私も何かしたことを書いて終りにする。」と書き、イラク戦争後の復興業務支援で自衛隊が派遣されたサマーワの住民を日本に招待したことを紹介する。
大概の日本人が小咄のメリーちゃんに違和感を感じるはずである。必要なのはケーキが与えられた時のことを想定し自らの戦略を建てておくことである。必要と思うなら、マーガレットちゃんとシェアすればいいのだから。メリーちゃんに分けて、と頼むマーガレットちゃんになってはいけない。
我々に必要なのはまず自ら優位戦思考で行動することである。優位戦思考の第一歩は他に先んじて自ら計画を作ること、そこに必要なのは勇気である。他人の作ったルールに従うのではなく、自らルールを作ることである。すべての人が「自力で運命を切り拓く」と決意することによって、世界はもっと良くなる。
蛇足
自力で運命を切り拓く、覚悟
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