毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

戦争の目的とは何か?~『日本人だけが知らない「本当の世界史」』倉山満氏(2016)

日本人だけが知らない「本当の世界史」 (PHP文庫)

倉山氏は憲政史の研究家、ヨーロッパ公法にすぎない国際法とは何か?(2016)

ウェストファリア条約

一つは(ローマ教皇および神聖ローマ)帝国からの主権国家の独立、二つは対等な主権国家の並立、三つは教会権力と世俗権力の対等である。要するに現代人が想像する主権国家は、ウェストハリア条約によって成立したのであり、広義にはいまだに世界はウェストファリア体制なのである。(86ページ)

ウェストファリア条約と戦争

ウェストファリア体制は、領邦主権国家にこの(決闘により決着をつける)資格を認めた。すなわち戦争である。厳密な意味での戦争とは、宣戦布告で始まり講和条約発効で終了する法的状態のことである。これは双方の合意により開始され終結する。(89ページ)

無差別戦争観

戦争そのものには善悪の区別はないと考える思想である。戦争のやり方による善と悪だけがあると考える。・・・この世界観においては、敵とは利害が異なる者にすぎず、状況が代われば敵と味方は入れ替わりうる。よって外交交渉による妥協が成立するのである。(97ページ)

宗教戦争との違い

宗教戦争の時代は殺戮を自己目的化していたが、目的限定戦争は無意味な殺傷を禁止する方向に向かった。・・・戦争は「決闘の法理」に基づく文明国間の神聖な儀式となった。実体をはっきり言えば、主権国家を有する王様だめに許されるゲーム(余興、果し合い)となった。(98ページ)

戦争とは何か?

ウェストファリア体制で確立されていく近代国際法の体系は、戦国時代の日本そのものである。戦国時代の合戦はすべて目的限定戦争であり、何らかの世俗的利益に基づいて行われ、すべての戦争は外交の手段である。(104ページ)

日本人だけが知らない「本当の世界史」

我々は西洋社会の作った国際法の世界に住んでいる。国際法とは1648年のウェストファリア条約によって成立した主権国家を前提とした仕組みである。それではウェストファリア条約における戦争とは何か?戦争とは「世俗的利益に基づいて行われる外交手段」ということになる。世俗的利益とは突き詰めれば経済的利益に行き着く。我々は戦争を手段として認める世界に住んでいる。戦争は経済的利益の為に存在する、といことである。現代において人命をかけて戦争をしてまで損得のあう経済的利益が存在するのであろうか?現代はその意味で戦争の目的が見えにくくなっている。戦争の目的が不明確であるからこそ、本来の戦争の目的を明確に意識することが必要である。

蛇足

宗教戦争には終わりがない

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