毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

実は20世紀、日本はパワーゲームの主役だった~『優位戦思考に学ぶ 大東亜戦争「失敗の本質」』日下公人氏×上島嘉郎氏(2015)

優位戦思考に学ぶ 大東亜戦争「失敗の本質」

 大東亜戦争における日本の「失敗の本質」とは何か? それは、「戦争設計のなさ(政治的に何を勝利とするかが不分明)」であったこと。我々はここから何を学ぶか?(2015)

 

優位戦思考

優位戦は、攻めることも守ることも自在、戦いのルールから、勝敗や和平の定義まで決められる立場から仕掛ける戦いで、劣位戦はそれらのイニシアティブがない立場からの戦いです。(21ページ)

優位戦思考とは、自分がどのようんばカードを持っているか、あるいは持ち得るか、相手との比較のうえで何ができるかを考えることです。自分の長所短所をわきまえることは前提ですが、その後は、相手よりいかに柔軟な思考、発想ができるか、そしてそれを実行に移すかという“勝負の世界”です。・・・(例え不利な条件があっても)さらに何が可能だったかを考えることが優位戦思考です。(87ページ)

20世紀のパワーゲームの主役は日本だった

世界史的な視野で20世紀の百年を振り返れば、そのパワーゲームの主役は日本でした。中国も、ロシアも、イギリスも、日本と戦ったことで哀運に傾きました。ロシアは日露戦争に敗れて帝国を失い、ソ連となって第二次大戦では勝者の側にいても、「中立条約違反」と「侵略による領土獲得」という道徳的敗北を喫しました。その後、同盟国として日本が支えたアメリカとの経済戦争でも敗れ、ソ連という国家は崩壊しました。

中国も、清という国は日清戦争で潰れ、中華民国という蒋介石の国も毛沢東共産党に敗れて台湾に逃げざるを得なかった。イギリスも日本を敵に回したことで全アジアの植民地を失い、英連邦は残っているとはいえ往年の大英帝国ではない。

第二次大戦とその後の冷戦に勝利したのはアメリカですが、彼らは人類初の「原爆使用」という道徳的な疵(きず)を負いました。(287ページ)

大東亜戦争失敗の本質

日本海軍は結局、決戦をしないままに潰れてしまった。敗因の第一は、上層部の戦争指導力の弱さです。・・・決戦を日本に有利な場所と時機に敵に強制するべく戦争全体を設計するという思想がなかった。・・・(第一次大戦では戦勝国となっており)その後はこちらが敵を選べるくらいの大国になり、強くなったとき、どう相手を選ぶかという政治指導者、高級軍人を育成できなかったのが残念です。(272ページ)

優位戦思考に学ぶ

優位戦思考とは相手よりより抽象度の高い、より広い見地から全体を俯瞰することによって得られる。日下氏は20世紀が日本が主役だったと指摘する。日清、日露、第一次大戦と戦争によってパワーゲーム上の大国だった。しかし日本はそれを認識しないまま、劣位戦、相手の作ったルールで戦争を始め、敗戦する。なぜなら戦争を始めてみたものの、戦争全体の設計、更に言えば目的がはっきりしていなかった。日本は自分の持てるパワーを認識しないことで、戦争に負けていた。

ここから我々が学ぶべきは、「自分の持てるパワーで優れた基準をつくって、世界に普及させる」という優位戦思考の重要性である。“自ら“には日本と置いてもいいし、我々のビジネス、思想、文化、を当てはめてもいい。更に今風な表現を使えば、自らストーリーを語ること、である。

蛇足

謙遜も過ぎれば大きな不幸を招く

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