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2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

米軍の変化に注目せよ!そこにビジネスの未来が見えてくる~『教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質』加谷桂一氏(2016)

「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質

 加谷氏は著述業、個人投資家、経済と戦争遂行能力は直結しており、強い経済を持つ国は、圧倒的に有利に戦争を遂行できる。(2016) 

 

米軍とは?

世界最大の経済大国である米軍の軍事費は突出しており、年間70兆円以上の金額を軍事費に支出しています。日本の国家予算(一派会計)が年間約100兆円ですから、米国は日本の国家予算に近い金額を常に軍事費として支出しているわけです。(18ページ)

米国(のGDPに占める軍事の割合)は3.5%、中国は2.1%程度、日本やドイツは1.0%程度となっています。ロシア(のGDP比4.5%)は、先進国と比べると生活水準が低く、現在の軍事費水準はギリギリのラインと見ることができます、一般的にはGDPの1%から3%程度の範囲が適正水準と言えるでしょう。(20ページ)

米軍は軍事費で何に使っているか?

軍事費全体のうち、もっとも大きな割合を占めているのは、燃料や資材など、軍事的なオペレーションの実施に必要となる経費です。次に多いのは人件費で全体の約23%程度、続いて装備品の調達費が11%、研究開発費が約11%と続きます。・・・年代が新しくなるにつれて、戦費総額が大きくなりますが、兵員数はあまり増えていません。つまり兵器のハイテク化がかなりのスピードで進行しており、戦争のコストに占める人件費の割合が低下しているのです。

この動きは、ドローン(無人機)などロボット兵器の登場で、今後、再び加速する傾向にあります。各国はハイテク兵器への支出を増やし、人員を次々に削減しています。近い将来、先進国のとっての戦争は、人員をできるだけ投入しないスタイルに変わっていくでしょう。・・・1980年時点における米軍の兵員数は200万人以上でしたが、2014年は134満員まで減っています。(38ページ)

ITは戦争を変えていく

オバマ大統領は、米国史上、最大級の軍縮を行い、中東に配備する米軍の規模を縮小させました。・・・(しかし)オバマ政権の誕生以降、ドローン(無人機)による攻撃が急激な勢いで増えているからです。ブッシュ政権時代には40回程度といわれていた無人機による攻撃は、オバマ政権になると400回を超えるようになりました。(245ページ)

IT化がもたらすもう一つの影響は、戦争における兵站(ロジスティックス)の変化です。戦争は、補給や整備、衛生といった兵站業務があってはじめて成立しますが、IT化によってこの概念が大きく変わろうとしています。・・・3Dプリンタとは、コンピュータ上でやり取りされる三次元設計データを元に、プラスチックや金属などで立体を製造するための装置です。・・・理論的には各兵器のパーツを、3Dプリンタを使って現場(戦場)で生産することができるはずです。これが実現すると、従来の戦争の概念が大きく変わる可能性があるのです。(251ページ)

戦争と経済の本質

「戦争が外交の延長であり、外交は経済の延長である」(261ページ)という言葉は言い古された表現ではあるが、今後ともそれは変らない。むしろロボット化、IT化は民生と軍事の境目をますます曖昧にしていく。テクノロジーの進化によって戦争は可視化されなくなり、資本主義経済は国境を超えたM&Aにより敵味方の構図さえ曖昧にしていく。戦争の本質はサイバー空間と金融市場というバーチャルな空間にその比重を移し、国家という概念も更にバーチャル化していく。ビジネスも同様にサイバー空間と金融市場というバーチャルな空間を上手に使うことが求められている。米軍の変化はそのことを教えてくれる。

蛇足

残酷な真実、戦争とは金儲け、である。

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