毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

途上国と先進国、人間に根本的差はあるか?~『貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える』バナジ―氏×デュフロ氏(2012)

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える

 バナジー氏とデュフロ氏はインドの貧困撲滅の研究者、「貧乏な人たちに耳を傾け、その選択の論理を理解」した新・開発経済学入門。(2012) 

 

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貧困の罠

所得や財産を急速に殖やす手立てが、ほとんど投資余力のない人には制限されているのに、多めに投資できる人には急拡大するような状況では、貧困の罠が確実に発生する、ということです。・・・45度線上では、今日の所得は明日の所得に等しくなります。“貧困の罠”ゾーンにいる極貧層にとっては、将来の所得は今日より低くなります。曲線が45度線より下にあるからです。これはつまり、時間がたつにつれてこのゾーンの人々はもっと貧しくなり、やがては点Nで貧困にとらわれてしまう、ということです。(30ページ)

途上国と先進国で何が違うのか?

貧乏な人々は、他の人を悩ませているのと同じ問題にとらわれています―情報不足、弱い信念、そして問題の先送りなどです。確かに貧乏でないわたしたちは、いくらかよい教育を受け、情報を持っていますが、そのちがいはたいしたものではありません。・・・わたしたちの本当の強みは、当然のように享受している多くのことから来ています。きれいな水の出る水道がひかれた家に住んでいます―毎朝忘れずクローリン(消毒薬)を診ずに加える必要はありません。下水は勝手に流れていきます―みんなその実際の仕組みなんか知りません。・・・わたしたちは自分たちの限られた自制心と決断力をあてにする必要はほとんどないのです。でも貧乏な人々は、常にその能力をあてにしなくてはなりません。

自分の健康についての正しい決断を責任もって下せるほどに賢く、忍耐強く、知識のある人など、だれもいないということを認識すべきです。豊かな国に住む者は目に見えないあと押しに囲まれて生活しています。(102ページ)

最貧国の人の特徴

貧乏な人は重要な情報を持っていないことが多く、まちがったことを信じています。子供の予防接種の効果についてわかっていません。教育の最初の数年で学ぶことに大した価値はないと思っています。肥料をどれくらい使うべきかも知りません。HIVに感染しやすい方法についても知りません。政治家たちが何をする人かもわかっていません。(348ページ)

貧乏人の経済学

貧困の罠は一言で言えば実行可能な戦略が見えない、場合に生じる。貧困の罠の外側を知らない貧困層の人々にとって明日の所得が低下することへの恐怖感はとてつもなく大きい。明日の所得を犠牲にして何かに投資しようにも、投資できる事業機会が存在しなければやりようがない。更に言えば十分な情報どころか間違った情報に囲まれている。貧困の罠の外側から俯瞰すれば、貧困から脱出する方法は幾らもある。貧困の罠の中からはその方法が見えないのである。

それでは貧困の罠の外側に居るであろう先進国の人々は多くの知識を持ち、より賢いのであろうか?本書の示唆することはそこに大きな違いはない、ということ。人間は情報不足で、信念を持ち続けるほど忍耐強くなく、問題を先送りする、存在なのである。

本書は途上国の開発経済、具体的にはどうやって途上国の人を貧困層から脱出させるか、について書かれている。そしてその分析結果は、自分の欠点に気づくことになる。忍耐強くなるにはどうしたらいいか?目的の方向に目に見えない後押しに囲まれる環境を作ったらいい。健康維持に欠かせない良好な水が簡単に手に入る仕組みに住んでいるのと同じようにしたらいい。

蛇足

自分を知るために、貧乏な人に耳を傾けよう!

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