毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

”非自発的雇用”とは奴隷状態のこと~『 ケインズはこう言った 迷走日本を古典で斬る』高橋 伸彰氏(2012)

 ケインズはこう言った 迷走日本を古典で斬る (NHK出版新書)

高橋氏は経済政策の研究者、ケインズなら、日本経済にどのような処方箋を書くか?(2012)

 

 

非自発的雇用

・・・年間2000時間働いても年収200万円にも満たない時給1000円未満のワーキングプアや、無給のサービス残業あるいは週40時間の法定労働時間をはるかに超える長時間労働を強いられても拒否できない正社員などが直面している過酷な雇用状態のことである。(32ページ)

非自発的雇用は経済成長では解決できない

・・・経済全体の需要を増やし、生産量を増やせば雇用量も増える。そして雇用量が増え、所得が増えて、消費が増えれば、物価の下落に歯止めがかかり、税収も増える。その機動力となる需要の創出を、国債の累増やゼロ金利で発動が制約されている財政政策や金融政策に依存せず、シュンペーターがその主著『経済発展の理論』で唱えたイノベーションで実現できるなら、日本経済は“失われた20年”というトンネルから早晩抜け出せることができる・・・非自発的雇用の根因は総需要の不足よりも、労働力を買い叩き、雇用者を搾り取ることで利潤を確保しようとする資本の論理(増殖運動)にあるからだ。(40ページ)

なぜ非自発的雇用が生じたのか?

労働の苦痛に見合う最低限の賃金を下回っても、なお働かざるを得ないことに非自発的雇用の本質があるとすれば・・・・生きていくために働くか、犯罪に手を染めるか、それとも自らの命を絶つかといったぎりぎりの選択を迫られる雇用者は・・・実質的な“奴隷”と言っても過言ではない。・・・1円でも多い利潤の確保がホンネなのに、グローバルな競争における生き残りが大変だとタテマエを盾にして、可能なかぎり人件費を削減しようとする企業とその利害関係者に支持された“民主的政府”による自由放任(労働規制の緩和)政策から生まれたのである。(41ページ)

労働時間の短縮

成長の可能性に雇用の安定と暮らしの安心を求めるのか、それとも成長に固執せず働く機会の確保と暮らしの安心を求めるのか。・・・私は非自発的雇用の解決には労働時間の大幅な短縮が必要だと考えている。・・・・週20時間、1日5時間に短縮するように労働基準法を改めるべきだと考えている。(202ページ)

ケインズは100年後を予測した

重大な戦争と顕著な人口の増加がないもの仮定すれば、経済問題は100年以内に解決されるか、あるいは少なくとも解決のめどがたつであろう。これは、経済問題が人類の恒久的な問題ではないことを意味する。(21ページ)

 

ケインズはこう言った~迷走日本を古典で斬る

非自発的雇用とは高橋氏の造語である。それは資本主義にビルトインされたシステムだから、である。一方で“奴隷”状態を許容する労働者は成熟途上の社会に適合した教育制度・社会制度によって生み出されたと考えるべきであろう。

非自発的雇用はシュンペーターのいうイノベーションによっては取り除けない。高橋氏はワークシェアリングを提案するが、その本質はベーシックインカムであろう。ケインズが予見した様に、我々は経済問題を解決している。ベーシックインカムが導入されれば、誇りを失わず非自発的雇用を拒否できる。それよりも大切なことは我々は経済問題を解決している、非自発的雇用を拒否したとしても、制度としてのベーシックインカムがあろうがなかろうが生きていける、と信じることであろう。“奴隷”状態は拒否できる。

蛇足

私のやっていることは非自発的雇用ではないか?

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