人類はいつまで成長できるか?~『3つの循環と文明論の科学』岸田一隆氏(2014)
3つの循環と文明論の科学―人類の未来を大切に思うあなたのためのリベラルアーツ
岸田氏の研究テーマは(古い順に)素粒子物理学・原子核物理学・科学コミュニケーション、人類は成長し続けられるのか?
本書のテーマ
- 人類は、「物質・エネルギー」「産業」「金融」という3つの循環に支えられている。
- 持続可能性とは、この3ちの循環がバランスを取りながら持続できることである。
- 成長は、決して持続可能ではなく、定常な社会をめざさなくてはならない。
本書の結論
私たちが維持できる社会の規模は、科学技術によって人工的な循環をどれだけ大きくできるか、価値観の変革によって経済規模をどれだけスリムにできるか、この二つのバランスにかかっている。
世界人口は指数関数的な増加
こうして(ながい時間軸で)見ると、世界人口の傾向は、「革命期と定常期の繰り返し」ではなく、一貫して「指数関数的な増加の継続」なのである。ただし、増加のペースが変っているのです。10万年前から始まった指数関数的な増加は、1万年前にそのペースを速めました。そして、18世紀後半から、その増加ペースは爆発的なものになりました。(30ページ)
自然の再生スピードは遅い
生物による再生の空間的な密度は決して大きくありません。光合成によって植物が蓄えることのできる太陽エネルギーは、その僅か0.2%に過ぎないからです。現代のエネルギー源のなかでは、エネルギー生産の空間的な密度が小さいといわれる太陽光発電の効率ですら20%ですから、それに比べても、100分の1に過ぎないことになります。・・・「自然はとても大きいけれでも、か弱い」ということです。(55ページ)
人工的な再生システムが必要
自然の再生システムだけでは、人間生活を支え切ることはできません。そこで、新しく人工的な再生システムを開発するのです。もちろん、そんなに簡単なことではないでしょう。これをどれだけ太い流れにできるかは、これからの人類の工夫次第です。・・・そして大切なことは、産業も金融も成長の概念を捨てることです。物質・エネルギー循環を無制限に大きくできない以上、これらの矢印をある程度の太さに留めて、定常状態にしなくてはいけません。(46ページ)
3つの循環と文明論の科学
岸田氏は金融、産業、物質・エネルギーのそれぞれの循環の大きさが等しくないと継続して存続できないという。人類は10万年前に脳の肥大によって環境への適応力を高め、1万年前には間氷期に農業と都市化が進行、そして18世紀後半産業革命によって指数関数的な人口増加を経験してきた。
成長の限界の見えてきた今、改めて人工的な再生システムが必要であると指摘する。
自然再生エネルギーでは地球の人口は維持すらできない。我々が今なすべきことは何か?次の人工的な再生システムの構築まで、物質・エネルギーの流れを少しでも効率よくする様にすることであろう。
根拠はないが、人類が次世代の人工的な再生システムを確立するまで、ハードクラッシュすることなく時間を稼ぐことができる、と私は思う。未来を悲観的に見る必要はないし、自然に帰れといったノスタルジーにすがるのもまた間違いである。我々には知恵と時間がある。
蛇足
人類文明を持続可能にするためには、見えない人々との協調が必要なのです。(160ページ)
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