毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

GNPがいつ誕生したか知っていますか?~『ポスト資本主義ーー科学・人間・社会の未来』広井 良典 氏(2015)

ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)

 広井氏は公共政策、科学哲学の研究家、富の偏在、環境・資源の限界など、なおいっそう深刻化する課題に、「成長」は解答たりうるか――。(2015)

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資本主義の後に来るのは第三の定常化社会の入り口か?

 

現在が人類史における第三の定常化の時代だとすれば、(5万年前の定常化①の)心のビックバンにおいて生じた自然信仰や、枢軸時代/精神革命期に生成した普遍宗教に匹敵するような、根本的に新しい何かの価値原理や思想が要請される時代の入り口を私たちは迎えようとしているのではないか?(10ページ)

それでは資本主義とは

 

 

資本主義と市場経済が異なる点は何かとういうと、それは最終的に「拡大・成長」という要素に行きつくのではないか。つまり、単なる市場経済あるいは商品・貨幣の交換だけでなく、あくまでそうした市場取引を通じて自ら保有する貨幣(そのまとまった形態としての資本)が量的に拡大することを追求するシステム・・・、これが資本主義につちえのもっとも純化した把握になると思えるのである。(29ページ)

 

GNPの誕生

 

 

世界大恐慌(1929)を受けて、アメリカ商務省が経済学者サイモン・クズネッツ -経済成長と格差の関係に関する「クズネッツの逆U字カーブ仮説でも知られノーベル経済学賞も受賞- に統計の開発を依頼し、そこでできたのがGNP統計(国民経済計算)だった。クズネッツは戦後、世界各国でのGNP統計の開発を指導し、世界はこうして「GNPの時代」に入っていく。言い換えれば20世紀後半、「GNP」(ないしGDP)という指標を得たことで、資本主義はその「拡大・成長」という中心軸に関する(あるいは資本主義というシステムそのものに関する)重要な後ろ楯を得たとも言える。(51ページ)

GNP(またはGDP)の定義

 

国民総生産(GNP:Gross National Product)とは、ある一定期間にある国民によって新しく生産された財(商品)やサービスの付加価値の総計である。日本では1993年から代表的指標として国内総生産 (GDP)が使われるようになり、かつてほど注目されなくなった。(Wiki)

GNPと経済成長

 

 「ちょうど世界大恐慌がGNPという新たな指標を開発し、それがケインズ政策と連動していった」(51ページ) 

第二次世界大戦ケインズ政策が導入された。東西冷戦の中で資本主義が社会主義を一部取り入れた修正資本主義と捉えられる。GNP(あるいはGDP)で図った経済規模の成長が国家の目標として掲げられたのはわずか65年前であり、それまでの経済目標は景気循環や失業対策であった。経済成長とはGNPという指標によって計測できるようになった抽象概念に過ぎなかったことになる。

ポスト資本主義

 

ポスト資本主義が定常型社会になるのか、超(スーパー)資本主義になるのか本書では断言していない。著者は定常型社会の到来の可能性と同時に、超(スーパー)資本主義には人口光合成、宇宙開発、AIと生命との融合、などの技術革新が必要であると説明する。

GNPという指標が生まれて85年、それが経済政策と結びついて65年、我々は素直に経済成長は正、GNPは拡大しなければいけないと思い込んでいないか?そもそも経済成長は政府の目標と成り得るのであろうか?技術革新によって生じた変化はGNPによって計測可能なのであろうか?

GNPの誕生の経緯はこれを考える機会を与えてくれる。

蛇足

 世界の変化をどうやって測るのか?

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