毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

いつまで金融業は儲かり続けられるか?~『 不確実な未来を生き抜くための「経済史」』増田悦佐氏(2015)

 不確実な未来を生き抜くための「経済史」 (SB新書)

増田氏は証券アナリストの実務家、官製相場、株高、格差拡大……歴史が物語る「資本主義のカラクリ」!(2015)

 

20世紀はアメリカの金融業の時代

アメリカでハイテク・バブルが絶頂に達した2000年には、なんとGDPの8%という巨大なシェアを占めるにいたり、現在までほぼ一貫してこの高水準にあります。つまり、世界最大でもっとも豊かな国民経済を擁するアメリカで、20世紀後半は金融業の経済に占める地位が約2%から8%へと4倍に増していたのです。(135ページ)

それは成長をもたらしたか?

アメリカだけは、1970年以降、企業利益率が趨勢として上昇しています。・・・金融部門とハイテク部門の2分野だけが、延々と利益率を高めてきたのです。・・・結局のところ、アメリカの高い企業利益率は、金融業とハイテク産業大手を不自然な介入によって国が守っているからこそ成立している状態なのです。(246ページ)

アメリカの金融システムの行方

現在アメリカで進行中の国家丸抱えの金融市場買い支えは、企業社会で現役の帝王である金融企業による、王座を守るための必死の、しかも最後の抵抗でしょう。いずれ政府や中央銀行まで巻き込んだ金融破綻によって、サービス業の一部門、しかもあまり利益率も成長性も高くない地味な部門という分相応の地位に戻らざるを得なくなるはずです。

世界経済の大勢は、明らかにモノ(工業製品)からコト(サービス)へと移行しています。いまや、先進諸国の大部分で消費の6~7割をサービスが占め、製造業製品は2割程度か、それ以下に縮小しています。これは、世界が資源消費に依存しない豊かさを追求するようになったということで、文句なく歓迎すべき傾向です。アメリカの異常な金融肥大化が破綻したあとの21世紀世界は、サービス産業の時代になっているでしょう。

一方つい最近崩壊したと思われる中国の資源浪費バブルは、すでに王座を失った製造業による王政復古、反革命の試みだと言えます。(165ページ)

何が切っ掛けとなるのか?

先進諸国では無尽蔵の資金を持ち、国家とともに永遠の生命を持つという幻想を維持している中央銀行が買い支える人工的なバブル相場を、中国ではシャドーバンキングが支えているのです。・・・中国のシャドーバンク各社は、買っても買っても株価が高値を抜けないという状態になったとき、いつまで買い続けられるのか。中国のシャドーバンクが上海総合株価指数の買い支えを放棄した時点が、先進諸国の中央銀行による自国国債の買い支えを崩壊させるきっかけになるのではないでしょうか。(167ページ)

不確実な未来を生き抜くための「経済史」

増田氏は金融業界でアナリストとして活躍してきた。その時、どうして金融業の利益率はこんなに高いのか、常に疑問を持っていたという。金融業とは小口の資金を集め、それを投資する事業であり差別化の図りにくい儲からない事業形態に見えるという。国家丸抱えの金融市場では市場の価格変動メカニズムは歪められ、この構造を俯瞰できる金融業にとっては借入金によるレバレッジ=規模拡大によって利益を確保してきた。

このスキームが成立し続けるのは「無尽蔵の資金を持ち永遠の生命を持つ中央銀行」という信頼が必要である。しかし中央銀行や国家の将来性を過少評価しても始まらない。社会は国家に変わるシステムを未だ見つけていない。国家が非効率性故に自壊するまで、この仕組みは廻り続ける。

蛇足

金融業はますます儲からなくなる

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