毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

グローバル資本主義は政府と通貨を選択する時代~『 中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来』

 中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 (新潮選書)

 岩村氏は日本銀行の出身、1978年ハイエクは「通貨の選択」において国家は特定通貨の使用、通常は中央銀行の発行する通貨の使用、を強制すべきではないと主張した。グローバル資本主義の今日変動相場制により、通貨の選択が可能となっている。図らずもハイエクの主張が実現しているのである通貨が選択できる時代、中央銀行の役割は何か?(2016)

 

 ハイエクは通貨間競争を支持

 

ハイエクが通貨にあり方について主張したのが、通貨を国家のコントロール下に置くな、通貨の発行と流通に「競争」を導入すべきであるということでした。・・・「政府の通貨発行権ではなくその排他的な権利であり、人びとにその通貨を使わせ、特定の価格で受領させる政府の権力である」・・・「責任ある金融政策をとる国の通貨は、次第に信頼できない通貨にとって代わるようになるだろう、というのがおそらく結論である。金融的高潔さの評判があらゆる貨幣発行者が用心深く守ろうとする資産となるであろう。」(20ページ、ハイエク『通貨の選択』からの引用部分)

通貨の選択権がある場合、無い場合

どの通貨を使うかの選択が自由に委ねられている世界では、人びとは減価が予想される貨幣を受け取ろうとはしないでしょう。そうすれば、普通に市場で取引される商品と同じように、貨幣にだって市場原理あるいいは自然淘汰の原則が働いて、良い通貨だけが残っていくはずです。つまり「良貨が悪貨を駆逐する」ことになります。しかし、政府により特定の貨幣の役割の受け取りを強制される世界ではそうはいきません。権力による強制から自衛しようとする人々は良貨を退蔵し、できる限り悪貨を先に使おうとするはずでしょう。今度は「悪貨が良貨を駆逐する」ことになってしまうのです。(23ページ)

ハイエクは価値保蔵手段に着目

ハイエクの描くところの通貨間競争の世界とは、民間銀行が各々の通貨単位を自ら決め、その単位での銀行券を競って発行する世界です。その競争を動機づけているのは各発行銀行の企業利益追求です。ハイエクはそうすれば通貨価値は自然に高まるだろうと考えたわけです。まさに慧眼と言うべきです。貨幣発行を競争に委ねれば、貨幣価値を高めるというインセンティブが貨幣発行者に働くということは、変動相場制移行後の各国が繰り広げた通貨価値維持競争と、それによる世界的な物価の安定からうかがい知ることができます。・・・ハイエクの発想は貨幣の「価値保蔵手段」としての役割に眼を付けたものと整理してもよいでしょう。(290ページ)

中央銀行が終わる日

中央銀行は1820年頃ヨーロッパで成立、経済成長を後押しすることとなった。それから200年を経て経済成長に限界が見え始めた今日、中央銀行の役割はかつてなく低下している。それは金利が低下してきていることからも明らかである。経済成長が限界を見せている今日経済政策を後押しする金融政策も同様にその機能を低下させている。

それでは中央銀行の役割は終わったのか?著者は物価の安定という役割は残るという。

貨幣の機能は①決済手段、②価値保蔵手段、そして③価値尺度である。ビットコインを含めた民間銀行は①と②の機能を担える。③の価値尺度については中央銀行の唯一の機能、言ってみれば中央銀行の発行する銀行券が貨幣の基準を提供する。

人はなぜ貯蓄をするのか?それは老後に備える為であり、“インフレによる老後の貯えの減少”が最大の恐怖である。著者は日本銀行出身、中央銀行は価値尺度の提供によりこのリスクを防止することを期待する。

蛇足

グローバル資本主義は誰もが使いたい通貨を選べる時代の始まり

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