毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アメリカではキリスト教が影響力を持つ理由とは?~『熱狂する「神の国」アメリカ 大統領とキリスト教』松本佐保氏(2016)

 熱狂する「神の国」アメリカ 大統領とキリスト教 (文春新書)

松本氏はバチカン近代史の研究家、キリスト教信者は大統領をどう選んできたか?(2016)

 

 

アメリカと宗教

アメリカは、キリスト教以外の他宗教を軽視し、そのツケが現在のイスラーム国の台頭という形であらわれているとっても過言ではないかもしれない。冷戦時代、すでにイラン革命など政治的なイスラーム運動は始まっていたにもかかわらず、これらをすべて冷戦構造や安全保障の問題として宗教を軽視したことが、冷戦後から今日にかけての宗教の過激化という結果を招いているようにみえる。(11ページ)

プロテスタントカソリック

プロテスタントの)福音派の中の右派と左派、カトリックの中の右派と左派の対立の方が(プロテスタントカトリックの対立より)如実になってきている。右派は得てして原理主義的な傾向を持ち、キリスト教原理主義ブッシュ・ジュニア大統領時代のアフガニスタン戦争やイラク戦争をもたらした点は否定できないであろう。

レーガン時代にアフガニスタンソ連と戦ったイスラーム戦士や、イランと戦ったイラクにアメリカは武器と資金を提供した。一方ブッシュ・シニアはかつてレーガンが擁護したイスラーム勢力を潰そうと戦争に挑んだ。それが現在のイスラーム国の台頭を招いた。(260ページ)

大統領とキリスト教

共和党は、ケネディ、ニ期にわたるジョンソン政権という民主党時代に立たされて以降、政権奪回の過程で、いかにキリスト教票を取り込んできたのかという歴史の流れが見えてくる。・・・ブッシュ・シニアを破ったクリントンから政権を奪回するにあたり、ブッシュ・ジュニアは「諸刃の剣」ともいえるキリスト教右派キリスト教保守を再び動員して選挙に勝利し、その二期の間に、今度はネオコンという新しい右派をつくり出した。(259ページ)

熱狂する「神の国」アメリカ

プロテスタントによって建国されたアメリカは、共産主義との対立の中で反共産主義を主張するカトリックとの対立を解消していく。その後プロテスタントカトリック、双方の右派はその政治的主張が近似し、より深く連携することになる。

アメリカの大統領選挙には如何に右派の支持を取りつけるかが大きな鍵になってきたという。本書は台頭した右派はアメリカの外交政策にも大きな影響を与えている、と分析する。

アメリカは冷戦期においては近代を善とし(イスラーム教などの)宗教の存在を軽視してきた。それがイスラーム教右派の拡張を許し、更にキリスト教右派を刺激する悪循環に陥った。著者は今後、プロテスタントカトリックの左派の協力関係、更にキリスト教穏健派とイスラーム穏健派との対話が模索されることに期待する。

アメリカ全体としては宗教の影響は世俗化によって弱まったとしても、大統領選挙では宗教大きな影響を与える。

蛇足

大統領選は宗教と不可分

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