毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

知らなかった、アメリカのキリスト教保守派~共和党支持層、「レッドステイツの真実」

レッド・ステイツの真実 ――アメリカの知られざる実像に迫る

西森氏はジャーナリスト、マスコミや大学のほとんどは民主(ブルー・ステイツ)が握っているため、共和(レッド・ステイツ)の情報はほとんど国外に伝えられることはありません。2011年刊。

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ブルーステイツとレッドステイツ

 

2000年の大統領選では民主党(ブルーステイツ)のゴア候補が東西海岸と五大湖近郊の都市型・工業地帯の州で勝ち、共和党(レッドステイツ)のブッシュ候補がその他の非都市型・農業地帯の州で勝ち、青と赤がはっきりと分かれました。

 

民主党は政府による福祉、政府による企業の取り締まりを望み(大きな政府)、金持ちへの増税による富の再分配・経済への介入・中絶・銃規制・同性愛者の結婚・環境保護・マルチカルチャー化を支持し、キリスト教の影響を排除しようとする党です。

 

 

共和党は、連邦政府の力を最小限にとどめ(=小さな政府)、規制緩和・減税・キリスト教の権威を支持し、中絶・銃規制・同性愛者の結婚に反対し、快適な生活を妨げる環境保護は非アメリカ的だと主張しているのです。

 

 

共和党支持者は保守的キリスト教

 

 

民主党支持者は、労働組合関係者・有色人種・ヒスパニック・インテリ層、そしてインテリな大金持ちやハリウッドのセレブ。「共和党支持者のほとんどは中流以下で貧困層も少なくなくありません。つまり共和党支持者の多くは実際には共和党の経済政策の「被害者」となる確率が高い層の人々なのです。・・・それは彼らが 「保守的なキリスト教徒」だからです。

 

 

立場の違いが聖書の解釈を変える

 

 

あなたたちの土地の穀物を刈り入れるとき、畑の隅まで刈ってはいけない。また穀物の落ち穂を拾ってはいけない。貧者と在留異邦人のためにそれらを残しておかねばならない。私はあなたたちの神、主である。(レビ記23章22節)

 

 

リベラルな人々は、神のこの教えは社会主義的な富の再分配であると解釈しています。しかし保守派キリスト教徒は、持てる者たちのおこぼれが持たざる者たちに回ってくる、というこの教えこそ、まさにレーガン政権時代の好景気の原動力となったトリクルダウン効果(規制緩和や減税でお金持ちが儲かれば、そのおこぼれが中流以下に回ってきて、社会全体が豊かになる)のことである、と確信しているのである。(128ページ)

 

 

今更ながら米国はキリスト教

 

米国においてはキリスト教が大きな影響力を持っている事に改めて気づかされる。宗教は「社会的弱者の心理的基盤の提供」なのだすれば、「中流以下で貧困層も少なくない共和党支持者」にとってキリスト教が大きな影響力を持つ事に不思議はない。そしてほとんどの宗教は戒律により信者とそれ以外を区別する強力な機能をも有する。聖書の戒律に対する記述の解釈を巡って、保守派とリベラルで真っ向から対立するのも宗教の機能そのものである。保守派は聖書の一部分を意図的に引用し、リベラルはマルチカルチャーを訴えながら保守派の主張は受け入れない。宗教の負の面と言わざるを得ない。アメリカでは宗教は良い意味でも悪い意味でも今も機能している。

 
蛇足

 

 

保守党と共和党、本来の主張と支持者が入れ替わっている。

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