~『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』松村嘉浩氏(2016)
増補版 なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?――日本人が知らない本当の世界経済の授業
松村氏は国債のトレーダー(運用者)、なぜ、自分たちの生活が、親の世代のようにラクにならないのか?(2016)
世界は成長しない時代へ
世界システムの成立および産業革命以来、ものすごい勢いでどんどん成長してきた世界経済が成長の限界を迎え、成長しない”新しい時代”を迎えようとしていることなのです。これは成長することが当たり前だと思ってきた世界にとってみれば大変な脅威です。(84ページ)
現代の既得権益者
現在の社会システムは成長を前提とした仕組みのままですから、例えば、おじいさん・おばあさんたちは、小さくなる”新しい時代”に合わせて、年金を少なくしてもいいとは言ってくれません。・・・おじいさん・おばあさんが自分たちも気が付かないうちに既得権益者になってしまっているわけです。
不安の正体
成長できな世界を無理やり成長させようとしたり、無理なリターンを生み出そうとしたりして、社会が歪んでしまうのです。その結果、人々はこれで大丈夫なんだろうかと不安に襲われるのです。これが、我々が襲われている”不安の正体”なのです。(85ページ)
金融バブルの正体
バブルはお金が余って、おカネを運用したりしたい人が大量にいるときに発生するということです。・・・相変わらず、おじいさん・おばあさんが老後のために貯蓄したおカネは膨大に膨らんでいて、実現不可能な運用利回りを求めているため、金融資産はバブルになる可能性を秘めているのです。(90ページ)
なぜ私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?
著者は自ら「私は日本国債(金利)を中心に長年、未来を予想しトレーディングしてきただけの者」(331ページ)という。資産運用業界の出身者として、高利回り金融商品の需要者=おじいさん・おばあさんの要求自体が社会を歪めている、という指摘は新鮮に映る。
著者は世界が成長の不可能な時代に突入したと言う。私も成長が鈍化したこと、成長の余地が少ないこと、には同意をする。しかし成長が不可能だと決めつける必要はない。
成長余地が狭まってなかでおじいさん・おばあさんが従来どおりの既得権益にあずかるのは難しい。だからこそ新しい利益の形を形成し、新しい意味の成長を模索する必要があるのであろう。私たちが感じる不安は新しい価値の形を創出するためのモチベーションになれば最高である。我々は未来に新しい価値を見つけられるのか?我々は新しい喜びを創造する”新しい時代”に生きている。
蛇足
新しい利益の創出には何で運用したらいいのか?
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