毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人類はあえて火山のそばに住んできたより環境史という視点から

歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史 (世界史の鏡 環境)

石史は環境史の研究家。

f:id:kocho-3:20140818001925p:plain

最大クラスの噴火は最低8回

人類の生存まで危ぶまれた約73000年前のインドネシアのトバ噴火であろう。更に、世界的に飢饉や文明崩壊、政治社会の動揺を招いた535年のナゾの異常気象もインドネシアのクラタカウ噴火の可能性が高い。・・。過去の噴火でVEI(火山爆発指数)=8は、トバ(73000年前)、ニュージーランドのタウボ(26500年前)、イエローストーン国立公園(210万年前)など計8回起きているVEI=7はタンボラ(1815年)、「鬼界カルデラ」(73000根年前)、阿蘇山(9万年前)、サントーニ(BC1620年)、など。(45ページ)

噴火と寒冷化のメカニズム

1880年~1960年の北半球の平均気温を調べた結果、地表に直接届く日照量の減少と火山噴火が時期的に一致することを発見した。噴火によって大気中にばらまかれたエアゾルの増加が原因と考えた。エアゾルとは空気中を浮遊している液体もしくは個体の微粒子のことだ。・・・寒冷化で問題になるのが「硫酸塩」のエアゾルである。通常は、化石燃料の燃焼に伴って工場などから発生する硫黄参加物が、大気中で水と反応してできる。火山から吹き出すガスの7-9割は水蒸気だが、硫黄酸化物も含まれている場合が多い。エアゾルは対流圏では降水で直ぐに洗い落とされるが、成層圏の下部では1年前後、中部では2-3年は滞留する。・・・大気中にエアゾルが増えると、大気は透明ガラスからすりガラスに変わったようになり、直接日照量が減少する。(23ページ)

火山は恵みをもたらしていた?

米国地質調査研究所のエリック・フォースによると、「偉大な古代文系が誕生したのはプレート境界地帯である」という説を唱えている。地震や噴火をもたらすプレート境界は破壊的役割だけでなく創造的な役割をはたしてきたというわけだ。フォースによると15の代表的な古代文明のうち13までがプレート境界やその75㎞県内で栄えたという。・・・これらの地域で古代文明が興り多くの人口を養うことができた最大の理由は、プレート境界が水を得やすかったことにある。(14ページ)

著者が研究してきたのは環境史

「20万年におよぶ人類史のなかで、自然の環境変動や人類による環境改変がどのように発生し、その結果人類はどのように影響を被ったかを、時間・空間的に把握すうる学問領域」と定義する。

f:id:kocho-3:20140818002022p:plain

 

環境史の視点からみれば我々は火山によって直接的にも間接的にも壊滅的な打撃を何度となく受けてきた。一方で火山が多く存在するプレート境界には、水や金属や農地を求めて多くの人々が集まってきた。文明そのものが地球のプレートの上に存在する以上その影響から逃れる事はできないし、それを利用する事が必要だという事がわかる。我々は大噴火のおきる可能性のある所にあえて住んでいる。

蛇足

富士山の由来は尽きる事のない噴煙から「不死」となった。