毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

物理学が教えてくれる"勇気"とは~将棋を天体観測すると想像してみる

大人のための「数学・物理」再入門 (幻冬舎実用書―芽がでるシリーズ)

吉田氏は物理に関する著作が多い、2004年の刊行。

f:id:kocho-3:20140816224646p:plain

 

 

物理学者による「ゲームの発見」のストーリー

物理学者は、大自然をどのように考えるのだろか?自然を観察し、そこから経験的な法則を見出し、さらにその置くに潜む神秘に挑む。物理学者は、物言わぬ大自然に対して、如何にしてその秘密を打ち明けさせるのか。彼らの思考方法を、一般に馴染み深い卓上ゲーム、その中でも世界一難解であるといわれる“将棋”を例に採って、紹介していこう。

 

将棋の対戦を遠くから大型望遠鏡で観測する物理学者

(物理学者が)倍率を上げると対戦している二人の間には一つの盤があり、さらにその上には、小さな木片が何枚もおかれていた。それらはいずれも独特の五角形の形をしていた。両者が何らかの“ゲーム”を行っていることだけは確かであった。

観測、発見、計算、論理

物理学者は望遠鏡を通して主盤での駒の動きを認識し、相手の駒を取る事、駒が相手の陣地で成る事、ゲームは一番大きな駒の攻防である事などを観測、発見、計算、論理を繰り返す事によって精緻化していく。

真の法則の発見

物理学者は真面目な観測者であった。日夜望遠鏡を除き続け、事の仔細をまとめていった。そこから経験的な法則を導いた。しかし、それは観測の精度が上がるにつれて綻びをみせた。彼はゲームの対象性を信じ、より細部に拘った観測を行い、真の法則を見出した。そこに咲き競う個別の対象の特徴も発見した。そして、遂にゲームの全体像を掴んだのである。観測、発見、推測、計算、論理、これらの連鎖が、対象の性質を明らかにする。物理学者は、あらゆる対象を考え、分析して、その奥に潜んだ法則を明らかにする。これが物言わぬ自然に語らせる、地道にして最も有効な方法なのである。

かすかな綻びを見過ごさないでいられるか?

もう一度、将棋のルールを知らない人が観測により将棋のルールを理解すると想像すしてみる。観測から始まる一連の連鎖を地道に続ける事が不可欠であるかが実感できる。観測者は「わずかな綻び」を見過ごしたり、無視したらどうなるか?真の法則には到達できない。今までの論理とは合致しない“綻び”は真の法則に到達する為に有用な情報を与えてくれる。想像しない情報に接した時それにどう反応するか?物理学の観測だけでなく、すべてのものに接するスタンスであると気づく。物理学が教えてくれる事、それは都合の悪い情報を無視しない勇気である。

蛇足

予想と違う事、それは真実に近づくサイン。