毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

政治・社会

人生の選択において最良の結果を得る方法~『Who Gets What―マッチメイキングとマーケットデザイン』アルビン・ロス氏(2016)

Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学 アルビン・ロス氏は「マーケットデザイン」の研究で先進的な成果を挙げ、2012年のノーベル経済学賞を受賞した。(2016) マッチメイキング マッチングとは、私…

人は自分で自分のやりたい事を決めなければならない~『階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現』チャールズ・マーレー氏(2012)

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現 マレー氏は米国のリバタリアンの立場に立つ政治学の研究者。 経済力だけでなく、倫理観、価値観においても圧倒的な「階級格差」が生まれてしまったアメリカの現状を、リバタリアンの論客が詳細に分析した一…

イノベーション信仰は日本と米国だけではない~『国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』古市 憲寿氏(2015)

国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由 古市氏は社会学の研究家、フィンランドと日本、社会学者が“折れない国家”フィンランドの秘密を探る社会文化論。(2015) イノベーション信仰~カティア・ヴァラスキビ(フィンラン…

再び戦争と難民の世紀を繰り返すのだろうか?~『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 』池内恵氏(2016)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書) 池内氏は現代イスラム政治史の研究家、いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。(2016) サイクス・ピコ協定は、第一次世界大戦…

そうか私も含め誰もが希望難民だったのか!~『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』古市憲寿氏(2010)

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) 古市氏は社会学の研究者、「コミュニティ」や「居場所」は若者や生きづらさを抱えた人を救う万能薬なのか?(2010) 近代とは 明治以降、日本はヨーロッパを真似て「近代化」をはじめた。そ…

日本人論は西洋文化圏にいる日本人の精神安定剤だった~『「日本人論」再考』船曳建夫氏(2010)

「日本人論」再考 (講談社学術文庫) 船曳氏は文化人類学の研究家、明治以降、夥しい数の日本人論が刊行されてきた。そこには、私たちを繰り返し襲う「不安」がある。(2010) 日本人論仮説 「日本人論」とは、近代の中に生きる日本人のアイデンティティの不安…

主権国家はいつ誕生したのか?~『世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ』松本太氏(2016)

世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ 松本氏は駐シリア臨時代理大使、止まらない殺戮の連鎖。人間は野蛮な時代に戻るのか?(2016) 現在の国際秩序 現在の国際秩序が、1648年以降のウェストファリア体制というヨーロッパ近代の枠組みの中で…

主権国家はいつ誕生したのか?~『世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ』松本太氏(2016)

世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ 松本氏は駐シリア臨時代理大使、止まらない殺戮の連鎖。人間は野蛮な時代に戻るのか?(2016) 現在の国際秩序 現在の国際秩序が、1648年以降のウェストファリア体制というヨーロッパ近代の枠組みの中で…

日米は疑似植民地主義的な安全保障関係である、という視点~『日本‐呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来』R・T・マーフィー氏(2015)

日本‐呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来 上 マーフィー氏は国際関係・経済学の研究家、在日40年、この国を愛してやまないアメリカ人大学教授が描く「Japan」の肖像とは?(2015) 第二次世界大戦後 日本とその植民地の台湾と朝鮮(少なくともその南…

私の知らない日本の姿がここにある~『オキナワ論 在沖縄海兵隊元幹部の告白』R・D・エルドリッヂ氏(2016)

オキナワ論 在沖縄海兵隊元幹部の告白 (新潮新書) エルドリッヂ氏は歴史学者,「NO」しか言わないオキナワのままでいいのか?(2016) もともとエルドリッヂ氏は歴史学者 もともと私は日米関係を専門とする歴史学者で、日本での暮らしはすでに四半世紀以上にな…

自己責任とは、強者の自己保身である~『この国の冷たさの正体』和田秀樹氏(2016)

この国の冷たさの正体 (朝日新書) 和田氏は精神科医、なぜこの国はかくも殺伐としているのか?個人、組織、そして国家、どの位相でもいびつな「自己責任」の論理が幅を利かせる。 「自由」よりも強者の下で威張ることをえらび、 「平等」より水に落ちた犬を叩…

社会は思ったより長期的な視野には立っていない~『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』岩瀬 昇(2016)

日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか (文春新書) 昭和初期の北樺太石油、満洲国建国時の油兆地調査、そして南方油田。そこには確かに石油があったはずなのに、日本はモノにできなかった。(2016) なぜ満州大油田を発見できなかったのか? 満州で…

株価と政権支持率の相関関係が示すもの~『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』金子 勝氏(2015)

資本主義の克服 「共有論」で社会を変える (集英社新書) 資本主義に、制度やルールの空白が生じ、「独占」が生まれている。(2015) 株価と内閣支持率の関係 株価が上昇している時は内閣支持率が高まり、株価が下落すると、内閣支持率が低下する。株価が落ち…

為替水準は金融政策が決めている、という当たり前のこと~『戦後経済史は嘘ばかり』高橋洋一氏(2016)

戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書) 高橋氏は財務省出身のマクロ経済政策の研究家、実は、高度成長の要因はほとんど為替だった!?(2016) 固定相場制 固定為替相場についての最大の誤解は、相場を決めれば自動的に相場が維持されると思っている人が多いことです…

共同体が解体された時、社会はどうなるのか?~『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』E・トッド氏(2016)

シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書) トッド氏は歴史人口学者、2015年1月パリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で…

自分の頭上の、何もない、高くて広い空を見上げることはできる~『新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか』北野 武氏(2015)

新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか 「時代を作る人は、いつだって古い道徳を打ち壊してきた。誰かに押しつけられた道徳ではなく、自分なりの道徳で生きた方がよほど格好いい。 自分なりの道徳とはつまり、自分がどう生きるかという原則…

絶対貧困という極限状態で、人はどう生きるか?~『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』石井光太氏(2011)

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫) 石井氏は貧困地域をルポタージュする。絶対貧困──世界人口約67億人のうち、1日をわずか1ドル以下で暮らす人々が12億人もいるという。だが、「貧しさ」はあまりにも画一的に語られてはいないか。スラムにも、悲惨な…

「巧言葉令色少なし仁」は逆さまである~『悪人正機 』糸井重里氏×吉本隆明氏(2004)

悪人正機 (新潮文庫) 糸井重里が、吉本隆明から引き出すコトバの数々。驚きに充ちた逆説的人生論. (2004) 悪人正機 悪人正機(あくにんしょうき)は、浄土真宗の教義の中で重要な意味を持つ思想で、「“悪人”こそが阿弥陀仏の本願(他力本願)による救済の主…

国家にしかできない、税金を徴収するということ~『お金の流れでわかる世界の歴史』大村大次郎氏(2015)

お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」 大村氏は国税調査官出身のライター、ローマ帝国滅亡は、徴税システムの破綻が原因だった。(2015) 徴税システムの重要性 古代から現代まで、その国の王や、政府にとって、一番、…

産業革命は急激な人口増加をもたらしていた!~『産業革命 (世界史リブレット)』長谷川 貴彦氏(2012)

産業革命 (世界史リブレット) 長谷川氏はイギリス近代史の研究家、産業革命によってエネルギーの石炭へのシフトが進み、人口の増大と経済成長を調和的な形で進行した。産業革命は人びとの生活にどのような影響を与えたのだろうか。(2012) エネルギー革命 …

日本にイノベーションが起きない本当の理由~『未来に先回りする思考法』佐藤 航陽氏(2015)

未来に先回りする思考法 株式会社メタップス代表取締役社長の佐藤航陽が自身の体験から培った「どんな状況にあっても未来を見通せる汎用的な思考体系」を、読者のみなさまにお伝えします。(2015) テクノロジーには流れがある テクノロジーは「人間を拡張す…

日本という仕組みに、誰がいつ”コメ”を選択したのか?~『コメを選んだ日本の歴史』原田 信男氏(2006)

コメを選んだ日本の歴史 (文春新書) 原田氏は日本の料理史の研究家、イモ、雑穀、獣肉…。さまざまな食物のなかで、どうしてコメだけが聖なる地位を獲得できたのか?(2006) なぜコメなのか? まず何よりコメは、栄養価が高く食味に富む食物で、繁殖力に優れ…

我々は、受験勉強によってゼロ・サム競争を刷り込まれている~『立身出世主義―近代日本のロマンと欲望』竹内洋氏(2005)

立身出世主義―近代日本のロマンと欲望 竹内氏は教育社会学の研究家、立身出世主義は近代日本人の大きな物語だった。(2005) 立身出世主義 明治日本の幕開けによって、職業選択の自由や居住の自由が宣言され、社会的流動性の桎梏となっていた制度が解除され…

ポツダム宣言受諾後、日本ではどうして抵抗運動が発生しなかったか?~『悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき』鹿島 茂氏(2013)

悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書) 鹿島氏はフランス文学の研究家、マキアヴェリ、シェイクスピア、タレーラン、夏目漱石、吉本隆明ら69人、71の名句・名言を紹介。あわせて、近年の時事的な話題を切り口に、引…

ソメイヨシノは日本人が自己創出によって作り出していた~『桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 』佐藤俊樹氏(2005)

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書) 佐藤氏は社会学の研究家、一面を同じ色で彩っては、一斉に散っていくソメイヨシノ。近代の幕開けとともに日本の春を塗り替えていったこの人工的な桜は、どんな語りを生み出し、いかなる歴史を人々に…

傭兵と経済的徴兵制に本質的違いは存在するか?~『傭兵の二千年史』菊池 良生氏(2002)

(講談社現代新書) 菊池氏はオーストリア文学の研究家、ヨーロッパ興亡史の鍵は、傭兵にあった! 古代ギリシャからはじまり、ローマ帝国を経て中世の騎士の時代から王国割拠、近代国家成立まで、時代の大きな転換点では、常に傭兵が大きな役割を果たしてきた。…

民主主義の本質は多数決ではなかった~『社会という荒野を生きる』宮台真司氏(2015)

社会という荒野を生きる。 宮台氏は社会学の研究家、「いま僕たちはどんな時代を生きているのか」「この不透明な時代に何を捨て、何を守るべきなのか」(2015) 民主主義の本質は自治 アメリカなら、元々は信仰共同体である州が集まって連邦を作る。ヨーロッ…

我々は”機械仕掛けの神”を探しているのか?~『社会は情報化の夢を見る---[新世紀版]ノイマンの夢・近代の欲望 』佐藤俊樹氏(2010)

社会は情報化の夢を見る---[新世紀版]ノイマンの夢・近代の欲望 (河出文庫) 佐藤氏は社会学の研究家、新しい情報技術が社会を変える!―原著「ノイマンの夢、近代の欲望」(1996)から15年、何がどう変わったのか?(2010) 1990年代の原初のインターネット…

500年に渡って戦争を続けてきたヨーロッパが今考えていること~『ヨーロッパ史における戦争』マイケル・ハワード氏(1976、文庫は2010)

ヨーロッパ史における戦争 (中公文庫) ハワード氏は戦争史の研究家、中世から第二次世界大戦に至るまでのヨーロッパで起こった戦争を、テクニックだけではなく、社会・経済・技術等の発展との相関関係においても概観。(原書は1976年、改訂版文庫は2010) ヨ…

一流のエンジニアであり極地探検家のリーダー論~『技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術』西堀 榮三郎(1990)

技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術 (朝日文庫 に 9-1) 西堀/榮三郎(1903-1989) 1903年京都市生まれ。理学博士。京都大学理学部卒業。京都大学講師・助教授を経て、36年東京電気(現・東芝)入社。49年退社し、統計的品質管理の普及に努める。54年デミン…