毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

日米は疑似植民地主義的な安全保障関係である、という視点~『日本‐呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来』R・T・マーフィー氏(2015)

日本‐呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来 上

マーフィー氏は国際関係・経済学の研究家、在日40年、この国を愛してやまないアメリカ人大学教授が描く「Japan」の肖像とは?(2015)

  

第二次世界大戦

日本とその植民地の台湾と朝鮮(少なくともその南半分)だけは、アメリカの防衛圏内に無期限に組み込まれ、自国の安全保障をアメリカに依存し、外交政策でもアメリカのお墨付きが無くては何もできなくなっていた。(上164ページ)

アメリカは日本を軍事資産として見ている

アメリカのエリート層は日本を「軍事資産」としか見ていない。・・・第二次世界大戦でアメリカを勝利に導き、その後冷戦を戦うために構築された国家安全保障機構が政治的に制御不能になった背景には、1930年代に帝国陸軍が日本を「乗っ取った」時と似たような要因が働いていた。・・・強大な官僚機構、あるいは官僚組織のネットワークの規模が一定の臨界量に達すると、それが国家や社会に対して持つ政治的影響力はあまりに巨大になりすぎて、時に政治的に制御不能になってしまうのである。(下289ページ)

アメリカの国家安全保障体制の肥大化

海兵隊が(日本の戦前の)関東軍のように純然たる暴力行為に走ることはないだろうが、長期的な戦略的利益よりも近視眼的な組織の目的を優先して政府機能を乗っ取ろうとすることにかけては、両者には著しい類似点がある。

アメリカ帝国は構造的・制度的に外部世界について無知であるため、いずれ間違いなく崩壊する運命にある。無知な状態を修正するためには、国家安全保障を最優先する国家体制を解体させるしかない。(下290ページ)

日本の指導者層がそんな国に日本の安全保障を依存するのが、結局はどれほど危険で無責任な行為であるかは考えるまでもない。階級憎悪や党派性によって分裂したアメリカは、外交努力を見下し、基地と爆弾とドローン攻撃以外に対外的な脅威への対処法を思いつけない軍事官僚によって次第に掌握されつつあるのだ。(下325ページ)

中国から見ると

中国は日本を真の意味での主権国家ではなく、アメリカ政府の「代理人」としか見なしていないのである。そしてアメリカの狙いは中国を「封じ込める」ことにあり、欧米列強に破壊されるまでアジアに存在した平和的秩序を中国が復元することを阻もうとしていると考えている。(下327ページ)

日本、呪縛の構図

米国から見て日本は軍事的資産であり、沖縄の基地問題もその文脈で理解しうる。普天間移設の本質は米国の四軍(陸・海・空・海兵隊)の縄張り争いであり、軍事的資産の既得権益をめぐり米国内で合理的解決ができないことがその本質ということになる。

マーフィー氏は日米関係を「日米双方にとって居心地の良い疑似植民地主義的な安全保障関係」(下234ページ)であるという。そして今の日本に必要なのは「アメリカ政府の対して丁寧かつ断固とした口調で、もはや戦後が終わった今、日本は自国の安全保障を自らの手で管理したいと伝えること」(下311ページ)と提言する。

日本のみならず、韓国、台湾がアメリカの防衛圏内に組み込まれている点、そして様々な軍事的出来事を顧みるとき、本書の指摘は説得力を持つ。

蛇足

そうか、日本は軍事的資産だったのか、、

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