毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

生命が実践してきた、確実に進化する方法~『不均衡進化論』古澤 満氏(2010)

不均衡進化論 (筑摩選書)

 古澤氏は発生生物学の研究家、生物は、遺伝子に偶然生じた突然変異によって進化する。だが、突然変異の多くは有害だ。偶然にまかせていては、進化どころか絶滅してしまうのではないか?この矛盾を解く鍵は、DNAが自己複製の際に見せる奇妙な不均衡にあった―。カンブリア爆発の謎から進化加速の可能性まで、生物進化の見方を劇的に覆す画期的な新理論。(2010)

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Dでは当初の”0”が保存されている

 

カンブリア爆発

カナダ、ブリティッシュコロンビア州のバージェス山のカンブリア紀(5億4200万―4億8800万年前)の地層に、今日地球上に見られる動物のほとんどすべてのボディプランを網羅した多数の化石が発見されたことに端を発します。現存する動物は30の門に分かれますが、そのほとんど全部がこの時期に現れました。(40ページ)

どうしてカンブリア爆発が起こったのか?

爆発が起こった理由としては、まず、先カンブリア紀には生物の絶対数が少なく、しかも餌となる微生物は豊富にいたので、動物の大集団を受け入れる前提条件は整っていたと考えられます。次に、眼をもった動物の出現が爆発の引き金を引いたとする説があります。眼がある生物は、眼で敵を的確に捉え捕食しますから進化的に有利です。またこれに対抗して身を守るため、三葉虫をはじめ、体表を堅い物質で覆ってしまう生物が適応進化したというわけです。…また別の意見もあります。進化の駆動力として「遺伝子重複説」を提唱したことで有名な大野乾は、カンブリア紀に酸素圧が急上昇したために、酸素を利用してより効率的にエネルギーを生産する科学反応系が発達し、その結果エネルギー消費が激しい大型動物の多様化が可能になったという考えでした。(42ページ)

生物は進化の速度を調整している

元本が保証された遺伝子型はすべての世代でその存在が担保されています。環境が長時間変わらなければ、いつも存在が担保されている遺伝子型で対応し、環境が急変したら、今までため込んでいた変異体が対応すればいいということになります。新しい環境が不安定ならば、変異率を上げて、適応する変異体の出現する確率を上げていけばいいということになります。(89ページ)

不均衡進化論

 

不均衡進化論とは、DNAの二重らせんはそれぞれのらせんで複製方法が違い、結果として変異の発生スピードの差が生じそれがオリジナルを保持したまま進化の多様性が生じると考える。古澤氏はこれを「元本保証された多様性の創出」という。

カンブリア紀爆発によって、現在の生命のボディプランが一気に発生したことが知られている。古澤氏の説明から、生物の絶対数が少なく栄養豊富という前提条件の上に、①眼の誕生、②酸素圧の上昇、など環境の激変が生じた。

もし自分が進化したかったらカンブリア紀と同じ環境に身をおき、「元本保証された多様性の創出」をすればよいことになる。

生物進化を社会やビジネスに准えるのは危険ではあるが、不均衡進化論はこれを教えてくれた。

蛇足

 変化のない所に進化はない

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