生命は遺伝情報の連続性と自己変革という矛盾を抱えている~重要なのはTry& Error
中屋敷氏は「植物や糸状菌を材料にした染色体外印紙(ウィルスやトランスボゾン)の研究家。
本書帯のイラストは白と黒の2種類の蛇
P88ページ遺伝情報に忠実なDNAと突然変異の覆いDNA
本書あとがきより
一つは、生命であれ文明であれ「発展する事象」の本質は、有用情報の斬新的な蓄積であるということ。そしてもうひとつは、その斬新的な蓄積は、相反するベクトルを持つ二つの力の相克によって起こるということだ。(194ページ)
2つのベクトル、自己保存=情報の保存、自己改革=情報の変革
生命は、根源的な「葛藤」を持っている。それは、生命には相矛盾する二つの性質、「自分と同じ物を作る」ことと「自分と違う物を作る」ことが必須であることに起因している。(まえがき2ページより)
不均衡進化論~「元本保証された多様性の創出」
不均衡進化論の提唱者である古澤は、この非対称こそが、進化の原動力であるとした。そのキーとなるアイデアは、連続鎖と不連続鎖における合成形式の差が、遺伝子の突然変異率に差を生むということだ。連続してスムーズに合成が進む連続鎖と比べて、合成の過程が複雑な不連続鎖はステップが多く、ミスが生じる確率、つまり突然変異率が高いことが想定される。(中略)新たに合成される2本の子孫DNA鎖は、変異の多いものと変異の少ないものの2種類が出てくることになる。(中略)すなわち子孫DNAのうち変異の多いものが「情報の変革」を担当し、変異の少ないものが「情報の保存を担当すればよい。
一言で言えば、DNAが「二重らせん」である事により自己保存と自己改革を効率的に行う事が可能となる。
有用情報の斬新的な蓄積
情報の保存と変革ベクトルが繰り返し作用することにより、有用情報が蓄積されていくサイクル、ということになる。「前提となる記録情報」→「変異による情報バリエーションの創出」→「保存作用によるバリエーションの評価」→「新たな情報記録の誕生」といいう図式になっている。(中略)「情報の保存」の戦略に「淘汰の根源はあり、その状違法の複製過程に「ゆらぎ」すなわち「情報の変革」が作用することでコピー間の差異が生じて「淘汰が」顕在化し機能するものとなっている。(112ページ)
生物は遺伝子レベルの複製過程でトライアンドエラーを繰り返し、成功体験を蓄積するメカニズムが組み込まれている。そしてこのメカニズムは情報という概念で見た場合、生物と同様科学の進歩もトライアンドエラーと成功体験を蓄積するメカニズムが重要であると指摘する。これが冒頭に引用した「生命であれ文明であれ発展する事象の本質は有用情報の斬新的な蓄積」の意味である。
我々はトライアンドエラーを繰り返し、有用情報を蓄積する必要がある。それは「私」という個体レベルでも生命、そして文明同様、トライアンドエラーと情報の蓄積が必要という相似形にある。
蛇足
「遊び」によって致命傷にならないトライアンドエラーを繰り返してみる。