毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界最古の百科事典は既に電子化されている~エピソードが語る知識と知性の差

驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!

  子供の頃は世界一頭が良いと思っていたのに、35歳のいま知的レベルは下がる一方。そこで『ブリタニカ百科事典』全巻読破に挑戦。

f:id:kocho-3:20140723203401p:plainブリタニカ百科事典 - Wikipedia

英語で書かれた百科事典である。110人のノーベル賞受賞者と5人のアメリカ合衆国大統領を含む4,000人以上の寄稿者と専任の編集者約100人によって書かれており、学術的に高い評価を受けている。ブリタニカは英語の百科事典としては最古のものであるが、2012年版を最後に書籍への販売からCD-ROMへの販売に意向した。

 

AJジェイコブズ氏は「ブリタニカ 2002年版」全32巻を1年で読破、そして・・・

そして 僕はこの世界のすべてが“ケビン・ベーコンまで六段階のゲームのようにつながっている事を知っている。歴史は血なまぐさい混乱であると同時に、他の人間とDNAを共有している事に誇りを感じるような素晴らしい偉業の積み重ねであることを知っている、努めて物事の明るい面を見るようにしなかれば生きていけないこと。(中略)冒険には常にイエスと言わなければ、退屈な人生を送ることになると知っている。知識と知性は同じものではないが、同じ界隈に住んでいるのを知っている。ぼくは学ぶ事の愉しさを再び知る事ができた。そして今は普通の生活に戻り、もうすぐ妻と愉しい食事に出かけようとしている。(690ページ)

 

見出しはそれぞれがエッセーになっており、ゴシップにも触れられている。本書では数多くの蘊蓄が披露されるが、その中からニュートンのエッセーを紹介する。

アイザック・ニュートンはオカルト文書にインスパイアされた

ニュートンは完璧にいかれた男で、歴史上最も怒りっぽく性格のねじ曲がった科学者だったのだ。「ブリタニカ」ははっきりと「精神病的な傾向が顕著」と表現している。(中略)ニュートンは何年か世間との交渉を断った。それまでの彼は17世紀に支配的であった気合論的世界観を持つ科学者で、世界を衝突しあうビリヤードの球の集まりと見て、離れた物同士に力は作用しあうなどとは考えなかった。ところが隠居生活のあいだに、ニュートン錬金術や魔術など、ヘルメス文書と呼ばれるものを多く含むオカルト文書に取り憑かれ、自分で筆写するほどのめりこんだ。これらのオカルト文書では、物質同士が神秘的な力で惹かれ合った反発しあったりし、触れ合うことなく互いに影響を及ぼすことが語られていた。ニュートンに知的飛躍をもたらしたのは、当時の常識とはかけ離れたこの考え方だった。これこそが彼のリンゴだったのだ。オカルト思想がインスピレーションとなって、離れた物同士に働く斥力という発想が生まれ、万有引力につながった。(425ページ)

 ジェイコブズ氏は「怪しげなオカルト本なしでは出来なかった」、「変ちくりんな考え方も、深い理論にインスピレーションを与えることがある」(425ページ)とまとめる。

 

ニュートンを「精神病的な傾向が顕著」と表現するには勇気が必要。「ブリタニカ百科事典の執筆者は明記されている。執筆者の責任が明確であるからこそ、悪意ではなくかつ勇気ある記述が可能になる。ブリタニカ百科事典は知識を掲載、それと同時に世界観=知性を表現しているという構図が見えてくる。ここがWikipediaとの違いと言えよう。

蛇足

ブリタニカ百科事典で「book」を「国連は本とは最低49ページあるもの」と定義している。それでは本凹