毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球上に土壌はいつ現れたか?~『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』藤井一至氏(2015)

 ヤマケイ新書 大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち

 

藤井氏は土壌学の研究家、生き物たちの営みを「土」から理解するための一冊。(2015)

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土壌とは何か?

一般には、土壌とは岩石が風化し植物遺体が混ざったものと定義される。生き物を育み、同時に生き物を育んだもの、私たちはそれを「土壌」と呼んでいる。・・・土壌の生成には、数百年から数百万年かかる。数百歳は若い土、数千年から数万年で一人前、数十万~数百万歳の土でようやく高齢の域に達する。…土壌が誕生したのは5億年前である。…相対的な関係でいけば、46歳の地球おばさんが5年前に家庭菜園をはじめて、1年前から働いていた恐竜兄さんが半年前失踪し、10日前生まれたばかりの小人たちが大規模な温室栽培をはじめた。これが人類である。(15ページ)

5億年におきたこと

コケや地衣類は、どうやって栄養分を得ているのであろうか?地衣類やコケを剝いでみると、岩石が変色しているのが観察できる。……コケも地衣類も、岩との接触面でじわりと有機酸を放出する。すべては、生存に必須な栄養分であるリンやカルシウム、カリウムなどを獲得するためだ。(大気中の二酸化炭素を含んだ雨水は)同じ酸性の水でも、有機酸が共存すれば岩を溶かす能力が数倍に高かまる。光合成によってつくられた貴重な糖分を有機酸に加工し、岩を溶かすというひたむきな努力がコケと岩の間には繰り広げられているのだ。酸性物質によって溶かされた栄養分の一部は地衣類やコケに級数されるが、大部分は残存し、砂や粘土を形成する。地衣類うやコケの遺骸(有機物)と砂や粘土が混ざり合ったもの、これが地球に現れた最初の土である。(40ページ)

3億年前におきたこと

3億年前に裸子植物が発達させた、(乾燥に強い種子に加え)もう一つの仕組みは、「リグニン」と呼ばれる木質成分である。リグニンは、芳香族化合物が複雑に結合した物質であり、植物の主成分であるセルロースとは大きく異なる。…リグリンの存在によって、樹木は幹の強度を高めた。…強度を高め、背が高くなれば、光をめぐる競争に勝つことができる。裸子植物は、樹木や葉にリグリンを多く含むことで、風雨に対して物理的に強くなるとともに、害虫への防御力を高めた。(52ページ)

樹木のリグリン構造の発達い面食らったのは土に微生物である。…微生物はどのように処理していいのか分からず、食べ残しが増え、結果として倒木や落ち葉などの有機物がどんどん土に残された。…分解がおいつかないかた泥炭となってどんどん蓄積していった。3億年前、微生物の対応の遅れが地球最大の石炭蓄積時代(石炭紀)を引き起こした。(53ページ)

土壌とは生物遺骸である

土とは風化した岩に生物遺骸が混じったものである。火山灰と、細菌などによって分解された生物遺骸の蓄積である。主に植物の遺骸である。土壌は5億年かけて堆積してきた。石炭層もその一つである。石炭層は裸子植物が繁栄を始めた4億年前に始まり、キノコなどがリグリンの分解能力を獲得した3億年前に終わる。

生物が地球規模で土壌を形成し大気を変化させる。そして我々は5億年かけて堆積された生物遺骸の上に住んでいることになる、

蛇足

日本列島では100年で1㎝土壌が堆積している。

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