毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球の皮膚の厚さはどれぐらいか?~『土の文明史』モントゴメリー(2010)

土の文明史

モントゴメリーは地形学の研究家。文明が衰退する原因は気候変動か、戦争か、疫病か?古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす。(2010年)

土壌はわずか30㎝から1mの深さ

 

 

地表に見られる一分分解された有機物をO層位という。・・・このO層位の下にはA層位がある。分解された有機物が無機質土壌と混ざった養分に富む層である。地表かその近くにあって黒く、有機物を豊富に含んだA層位は、普通私たちが泥と考えているものだ。もろいO層(植物層)とA層位でできた表土は、前、表面流去、強風にさらされると容易に浸食する。(29ページ)

 

地球の皮膚

 

 

土壌とはまさに地球の皮膚-地質学と生物学が出合う場所だ。・・・人間の皮膚は厚さ2ミリメートルほど、平均的な身長の人間の1000分の1弱であある。割合から言えば、地球の皮膚は人間の皮膚よりもはるかに薄く、壊れやすい層なのだ。身体を保護すうr役割を持つ人間の皮膚とは違い、土壌は岩石を砕く破壊力を持った覆いとして機能する。地球の誕生以来、土壌生成と浸食のバランスのおかげで、生命は風化した岩石の薄い殻を頼りに生きてこられたのだ。(30ページ)

 

ダーウィンとミミズ

 

 

ダーウィンのミミズに関する本は、私たちの足元の大地がミミズの体を通じていかに循環しているか、ミミズがイギリスの田園をいかに形成しているかを探るものだった。・・・様々な場所でミミズの糞を集め、重さを量るうちに、1年に1エーカーあたり10~20トンの土をミミズが持ち上げていることにダーウィンは気づいた。土地の上に平らにならして広げれば、この泥は1年に3ミリから6ミリ堆積する。・・・どうやらミミズは、少しずつ新しい岩を掘り起こし、粉々にし、再処理してできた細かい泥をリサイクルした有機物と混ぜ合せて、土壌を作るのを助けているようなのだ。・・・ミミズは数百万年かけて土地を造り変えることができる大きな地質学的な力だとダーウィンは考えた。(14ページ)

 

文明と土壌

 

 

植物が切り払われ、継続的に耕作することでむき出しの土壌が雨と流水にさらされるようになると、続いて地質学的な意味では急速な斜面の土壌浸食が起きる。・・・土壌浸食が土壌形成を上回る速度で進むと、その繁栄の基礎―すなわち土壌―を保全できなかった文明は寿命を縮めるのだ。(8ページ)

 

土壌は薄く脆い

 

土壌の厚さは30㎝から1m、ミミズだけでなく、植物の落葉と根、地中の微生物など生物が地質層を作り替えて生まれるものである。イースター島が木材を切り尽くして文明が崩壊するのに5世紀程度の経過があったと言われる。5世紀の最初と最後の変化は住民にとっては時間軸が長すぎて認識出来なかった。

我々日本人はモンスーンを含む四季、山岳地形と河川という地理的環境から土壌が喪失している事を想像し難い。更に土壌は普通気にもしない生物、ミミズ、微生物などによって循環しているシステムなのである。土壌とは生物と地質の境界の存在であった。

蛇足

 

ミミズは地質学的重要性のある存在だった。

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